えーと、まず自己紹介だよね。
僕は砂山卯依(すなやま うい)っていいます。
高校生二年生です。
今は体育の時間。
山奥の男子校では体を動かす機会が少ないため男子生徒はわりと体育には真面目に取り組む。
そして僕もその一人。
今日の体育は100m走だ。みんな友達とタイムを競い合ったり、再度チャレンジする者もいて大変盛り上がっている。
「次ー」
体育の先生が次に走る人を呼んでいる。次はなんと僕の番。
「えーっと、砂山は抜かして「僕走りますっ!」おーそうか、……って!!え!?」
「走りますっ!」
元気よく手を上げて立つと、何故かクラスの人達が集まってなにやら話し会いを始めた。。その輪に何故か体育の先生も加わっている。
そうして約1分間の間その状態が続いた。
「な、なぁ。どうしたんだ?いつもは見学してるだろ…?」
そうして僕の元にやって来たのはクラスの人気者の草野くん。
彼の言う通り、僕はいつも体育は見学している。
「うん!でも今日はね、僕すっごい元気なんだ!だから大丈夫だよ!大丈夫〜」
出来るだけ元気に見せようと力こぶを作る。(無いけどね。)
「…っ、うん、確かに元気そうだけど…でも」
彼が心配している事は分かっている。
僕は貧血持ちで走ったりすると直ぐに気持ち悪くなって倒れてしまうからだろう。
でも今日はきっと平気だ!昨日の夜ご飯はレバニラだったし、朝ご飯はひじきの煮物だった!野菜ジュースも飲んだ!
具合が悪い日は朝から頭痛と眩暈がしてろくに立っていられないけど。
僕の必死の剣幕に押されたのだろう、草野くんはわかったと言ってまた話し合いの輪に入っていった。
そして待つこと2分。草野くんがまたこちらにやってきた。
「砂山、俺と走ろう。でも無理は「いいの!?やったぁ!草野くんって足が凄く速いよね!僕負けないから〜!」し、ないように…」
体育に参加するのなんていつぶりだろう!
張り切っちゃうぞー!
**クラスメイトの皆さんand体育教師**
俺たちのクラスには天使がいる。
嘘ではない。本当に天使がいる。
小さな体、大きくてうるうるの目、病弱で肌は白く、陶器のように滑らか。そしてなにより、癒されるのである。
でも持病の貧血のせいでいつも体育は一人見学している。寂しそうな顔をしながら。
そんな彼がなんと100m走に参加したいと言い出した。天使の言うことはなるべく叶え隊では今討論が行われている。
「おいおい…めっちゃかわい、じゃなくてどうすんだよまた倒れるぞ」
「わかるめっちゃかわいい…じゃなくて、でもあんなに走りたそうにして…」
「とりあえず止めるぞ!草野!言ってこい!」
「お、俺?!」
「そうだ!なるべく丁寧な言い方でな!」
「もし、泣かせたりなんかしたら…」
「「「「わかってるよな?」」」」
「イエスボス」
〜草野出陣中〜
「だめだ…可愛すぎて直視できなかった。しかも超大丈夫連呼してたし…」
「見てたけどなんだあれ天使過ぎてあかん」
「力こぶ(笑)可愛すぎなんですけど!」
「でもどうするよ。諦めなさそうだぞ」
「いや、でもぜってぇ途中で倒れちまうぞ。天使に傷なんか付けらんねぇよ。」
「なんか良い案ある人ー?」
「あ!じゃあ天使と平行して走って倒れそうになったら助けるってのは?」
「「「「それだ!!!」」」」
「草野いいアイディアだな。体育の成績上げてやる。」
「ってことで、草野、お前天使にそう言ってこい。」
「イエスボス」
そうして我らの代表草野が天使と走ることになった。
****
「よ、よし、じゃあ砂山と草野位置につけ〜」
「はーい!」
「うす」
100m走だからこのレーンをまっすぐ行けばゴールだ。よーし負けないぞ〜
位置につく二人を心配そうな眼差しで見つめるクラスメイト達。そして体育教師。
そんな中2人は笛の合図でスタートした。
**クラスメイトの皆さん**
「あかーん。めっちゃ遅い!可愛い!オソカワ!!」
「ああああああ天使走ってるるるるる」
「なに言ってんだありゃ羽で飛んでるだろ」
「あっ!」
「「「「あっ!!」」」」
走り出し50mで天使の体がゆらりと横に傾いた。それを平行して走っていた草野がしっかりと支えた。
「草野ーーーー!!ぜってぇ離すんじゃねぇぞーーー!!」
「おい!早く行くぞ!日陰で休ませろ!」
「イエスボス!!!!」
草野と天使の元へ走るとそこにはばたんきゅーした天使がひとり。
草野にそのまま抱き上げてもらいみんなで日陰に退散。
綺麗なベンチに寝かせた。
「ズボンの紐緩めろ!あと誰かジャージ!」
「イエスボス!」
俺達天使の言うことはなるべく叶え隊は貧血に対する知識、対応は全員把握済みだ。
だからこそこんな時でも冷静に紐を緩めることが…
「だめだ…天使にそんなことできない…」
「めくると絶対お腹見えるぞ」
「鼻血やめろ」
「ったくお前らそんなんじゃだめだろ。」
そこで名乗り出た体育教師。頼りになる!!!!
「こういうのはパパっとやりゃいいんだ。」
そう言いながら天使のズボンのの紐を素早く緩める。
「先生!!俺感動したッス!」
「一生ついて行きます!!」
「おい、鼻血出てんじゃねぇかよ!」
「これは違う。昼飯用に用意してるケチャップだアホ」
天使のいる教室も大変なんです。
ーーーーーーーーーーー
続くかも?
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