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ちむにぃさま

01


※未来IF 跳×歩
歩が女性だということはバレており、総愛され状態となっています。
任務も終了し、歩は風紀委員に入ったとかそんな設定




コンコン。
ノック音がして、キィッとドアが開く。


「失礼します・・・」


半開きになったドアから顔を出したのは、生徒会からのしつこい勧誘を断り、現在風紀委員に所属した歩だった。
歩が顔を出した瞬間、そこにいた会長である嵐は書類から顔を上げ、副会長の昴は立ち上がり、書記の真澄はキッチンに向かった。ソファでぐでーっと横になっていた会計の雫もバッと体を起こし、庶務の瀬奈は机の上に投げ出した足をたたもうとして、筆記用具類を床にぶちまけてしまう。


「うわっ! あ、歩! よく来たな!!」

「せ、瀬奈・・・大丈夫?」

「大丈夫だ! えーっと、ソファに座れよ!!」

「あゆちゃーん、ここ! 僕の隣においでー」

「君が生徒会室に来るなんて珍しいね? 真澄、紅茶早く」

「わかっている。……歩、ミルクと砂糖は?」

「あ、柏くん、ごめんね? すぐお暇するから、大丈夫だよ」


書類を机に置きつつ両手を振った歩の言葉に軽く笑みを浮かべながら、真澄は「まあゆっくりしていってくれ」と、紅茶の支度にかかった。
歩は恐縮しながら、雫の隣に腰掛ける。


「あゆちゃん久しぶりーだねー。うわぁー、やっぱりお肌つやつやー。もちもちー」

「し、雫くん!?」

「雫、やめなよ。歩が嫌がっているだろう?」

「てめえも、ちゃっかり歩の足を触るんじゃねえ」


歩の頬をつんつんとつつく雫と、隣に腰掛けてちゃっかり太ももを撫で回す昴。
そんな昴を呆れ半分、怒り半分の表情で睨んだ嵐は、歩が座るソファの向かい側にどかっと腰掛けた。


「で、今日はどうした? 俺に会いに来たのか?」

「あ、はい。そうです」

「はぁっ!?」


嵐の言葉に歩がうなずいた瞬間、床に散らばった文具を拾っていた瀬奈が大声を出して立ち上がった。
紅茶を持ってソファに近寄っていた真澄も、切れ長の目を見開く。


「……なんだ。言ってみるもんだな」

「嵐、顔きもーい。あゆちゃんー、僕にも会いに来てくれたんだよねぇ?」

「えーっとですね、嵐さんのサインをいただきたくて……」

「サイン・・・?」


雫の言葉に苦笑いをした歩は、嵐に向き直り、おずおずと封筒を差し出した。
それを見て、嵐は眉をひそめた。
これは……書類?


「……ぷっ。会いに来たってそういうことねー」

「なーんだ。書類のサインか・・・」


書類を見た昴は吹き出して、瀬奈がほっとしたように息をついた。
嵐は、舌打ちをしながら封筒に手を伸ばし、中からA4の紙を取り出す。……そして、首を横に振った。


「……アイツの差し金かよ。サインはしない」

「アイツ? ……なんの書類なの? 風紀関係じゃな、く・・・て」


書類を一瞥した嵐は、それをバサッと机に放った。
なんの書類? と机を覗き込んだ昴も、書類を見て眉をひそめる。


「……あ、んの・・・赤髪め」

「……? あの、なんの書類なんですか? 跳に渡されたものを持ってきただけなので……」


実は書類の中身を知らなかったらしい歩も、机に放られた書類を覗き込む。
書類の文字を見た瞬間……「あ、」と声をあげた。


「えー、なんの書類なのー?」

「赤髪とは犬飼のことだろう? 何だ?」

「アイツのことだから、ろくでもねー書類なんだろー?」


雫、真澄、瀬奈の3人も、机によって書類を覗き込む。


「え、何これー?」

「犬飼・・・」

「な、なんだよこれ!?」

「生徒会の皆々様は、世間ずれしすぎて字も読めないんですかー? 大きく書いてあるでしょーう? 『転入届』ってさぁー」


にっこり。
いつの間に部屋に入っていたのか、ドアに寄りかかったまま慌てふためく5人の生徒会役員に向かって嫌味をぶつけたのは、噂の赤髪、歩の幼馴染の犬飼 跳でした。


「任務も終わったしぃー、もうあゆがここにいる意味はないわけー。オレとあゆは末永く幸せに暮らすので、早く転入を認めろっつってんだよ腐れ生徒会」

「ちょ、ちょっと跳!?」


口元に笑顔を貼り付けたまま、氷のまなざしで言い放つ跳に、歩は慌てて駆け寄った。
跳の怒りも若干無理のない話しで、任務が終了したのにもかかわらず、生徒会役員の私情により、歩の転入届に判が押されないのだ。


「『会長に判押してもらってー』って、転入届だったの?」

「そうだよー? だって、あゆがここにいる意味はもうないでしょうー?」

「まぁ、そうなんだけど・・・」

「しかもさー、オレやっとあゆと両思いになって、ラブラブ生活を送れることになったんだよ? こいつら脈なしなのにいちいち邪魔してくるしさぁー」

「じゃま? えっと・・・でも、学園には大切な友達もいるし、別に今すぐ退学じゃなくても・・・」

「えー? だって、あゆこの間言ってたじゃん。『跳ともっと一緒にいたい』って。……ベッドの中で、」

「あ、わわっ!? ちょ、ちょっと跳!?」


情事を思い起こす発言に、歩は慌てて跳の口を手で塞いだ。
ソファ周辺からのイライラとした眼差しに若干の心地よさを感じつつ、跳はにやりと笑う。
そして、歩の手のひらを、べろりと舐め取った。


「ひゃ、ぁっ!?」

「んもーう。あゆってばかわいいー。……んじゃ、転入届はあきらめてもいいかなぁ? その代わり、今日は寝かさないからねー」

「え、えぇっ!?」

「首輪、また付けてねん。この間より恥ずかしいこと、いーっぱい言わせるからぁー」

「な、何言ってんの!?」

「どろっどろに溶けるくらい気持ち良いことしてあげるから、楽しみにしててね♪」

「……っ、!!」


いろいろと思い起こすことがあるのか、跳の発言に歩の顔はどんどん真っ赤に染まる。
そして、俯いて押し黙ってしまった。


「じゃ、早速部屋に戻ろーねん。……ではでは、字の読めない生徒会の皆様、今日はオレのあゆがお世話になりましたー」

「……、てめ」


「オレの」に力を込める跳を、嵐は睨みつける。


「転入届はまたお届けにあがりまーす。今日は急用が出来たのでっ!」


ではではー、と手を振った跳は、先ほどの跳の発言に固まったままの歩の手を引いて、生徒会室を後にする。
残された5人は、苛立ったような目でドアを睨んだ。


「チッ。あの野郎」

「……もともと転入届云々じゃなくて、自分と歩の中を見せたくて来たんだろうね、アイツ」

「性格最悪だな……」

「ムカつくーっ。あんな赤猿より、僕のほうが絶対テクニックあるのにっ!」

「だから嫌いなんだ、アイツ!」


上から、嵐、昴、真澄、雫に、瀬奈。
思い思いの愚痴を述べる5人は、机の上に残った「転入届」を一瞥した。
そして、ダレも口に出しはしないものの、「いっそ歩の退学を認めれば、赤髪(跳)と歩がべたべたするのを見ないで済む?」という考えが頭をよぎる。





「あ、やだっ。こんな格好、やだぁっ」

「あゆ、泣いちゃってかーわいーっ」


早々と部屋に戻って歩と愛し合う跳。とうの跳といえば、当初は退学を認めない生徒会に苛立っていたものの、もともとの性格の悪さもあいまって、「あゆとのラブラブライフを見てギリギリするバカどもを見るのも楽しいかもー」という気分になってきていた。


――この後も、睨みあう生徒会役員と跳の姿はいたるところで目撃され、1か月も経つころには、その様子は学園の風物詩と化したとか。








***
ちむにぃさま、リクエストありがとうございました!
大変遅くなって申し訳ありません……。

序盤にも書いたのですが、『愛★猫』の番外編は基本的にIF、もしも話になります。
この通りになるとは限りません! ならないとも限りませんけども。

しかし、今回いただいた愛猫のリクエストは、すべて跳が絡んでいるという謎!
コイツ、絶対アブノーマルなセ○クスするんだろうなーと思いながら書いていたら、歩がかわいそうな自体になっちゃいました(;´∀`)




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