寵愛α | ナノ

(01)


「おはよ」


目を開けた瞬間、赤い目と視線がかち合う。


「……うさぎ、さん・・・」

「…………仁菜チャン?」


白い髪と赤い目。
その取り合わせを見ていたら、急に言葉が口をついた。


そんなわたしの謎の言葉を聞いた瞬間、目の前の男はその赤い瞳を大きくして、わたしの名前を呼んだ。


「……あはっ。変わらないね、本当に」

「……うっ、」

「覚えて、ないよね? いいんだ、それで」

「…………?」

「あのね、仁菜チャン、意識飛ばしちゃったんだーよ。俺、誰かわかる?」


目を細めて優しげに笑って、彼は首を傾げた。
この人は……、


「……瀬下、さん」

「ピンポーン。でも、これからは禅でいいよ」

「ここ・・・どこですか?」

「俺の家」

「家・・・?」


冷たい手のひらが、わたしの額に当てられる。
……あれ? わたし、なんでここにいるんだろう。学校へ行くはずだったのに……。


痴漢にあっていたのを助けてもらって、調書が終わるのを待っていてくれて……。
それから、……それから、


「目覚めて早々悪いけど、我慢できないんだよね」


意識を失う前の状況に思考を張り巡らせていると、急に瀬下さんが声をあげた。
相変わらずうっすらと微笑みながら、瀬下さんはすっと立ち上がって、それからベッドの上に足をかける。
ギシッという音がして、ベッドが軋んだ。


「……な、に?」

「どっちにするか、決めた?」


わたしの上に馬乗りになった瀬下さんは、見下ろすようにしながらそう言った。
どっち……? どっち、って。
……そう、だ。


「選ぶ……」

「いい子だねー、ちゃんと覚えてたんだ」


目覚めたばかりだからか、思考が思うように働かない。
ぼーっとした頭で、わたしは瀬下さんに提示された2つの言葉を思い出した。


「……あの、付き合うか、監禁・・・? って……」

「言葉のままだーよ」

「え、っと……」

「まあ、選択はあとでね。どちらを選んでも、このあとの俺の行動は変わらないから」

「あの……顔、近いです」


問答を繰り返しているうちに、瀬下さんの顔がすぐそばまで近づいてきているのが分かった。
瀬下さんの行動はあまりに不可解で、わたしが理解できる範疇を越えている。
ただ、これ以上近づいてこられると……その、キスみたいなことをしちゃうんじゃないかと思って、わたしは抗議の言葉を発した。


……でも、


「近づけるよ? キスするんだから」

「え、な・・・っ、んぅ!?」


否定も、なにもかもを覆うように、柔らかいものが、わたしの唇を塞いだ。




prev next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -