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¶ 恋のライバルは誰だ


「ミョウジ、悪いが大事な相談があるのだ。聞いてくれるか?」
「あー…うん」

昼休み、今まさに学食へ向かおうとしていた時だ。深刻そうな顔をした尽八が私のクラスまでやって来たのは。お昼一緒に食べよーね!なんて友達と約束をしていたのに、これじゃ今日も彼女とは一緒出来そうもない。

「今回はさすがの俺でも立ち直れそうになくてな…」
「…何?どうしたっていうの?」

自慢の顔をこれでもかと歪めて俯いた尽八を見て今回も、しょうがない話くらい聞いてやるかと上げかけていた腰を再び下ろす。とりあえず彼女には断りのメッセージを送っておいて、私は自分の鞄から弁当箱を取り出した。ああ、お腹空いた。

すると彼はそんな私の目の前に座る。まるでそこが定位置かのように。そこはついこの間の席替えで変わったばかりの清水くんの席だ。ちなみに彼は野球部所属。ハァ、と深い溜め息を吐きながら悩める乙女みたいな表情で私を見つめる尽八に、茶でも飲むかい?と水筒のコップをちらり勧めてみる。するとそれを普通に受け取った奴が、頼むとコップを差し出してきた。あ、ああうんマジで?まあいいあげるよ粗茶ですが。

「…それでだな、昨日のことだ。巻ちゃんがな、電話に出てくれなかったんだよ」
「…ああそうなの、もぐもぐ」
「何回も掛けたんだ。でも、ずっと繋がらなくてな。もしかしたら俺の事が嫌いになってしまったのだろうかと考えたりもしたんだが、如何せん理由が分からない。果たして俺の何が悪かったのだろうか…なぁミョウジ、お前も気になるだろう?巻ちゃんから何か聞いていないか?」
「もぐもぐ多分主にそのうざいとこが嫌だったんだと思うけどもぐもぐ」
「おい!真面目に聞いているのかミョウジ!それから、さっきからもぐもぐもぐもぐうるさいぞ!女子ならもっと品良く食えといつも言っているだろう!本当にしょうのない奴だな!む?こんなところにご飯粒まで付けて…恥ずかしくないのか仮にもお前は王者箱学のマネージャーだろう!選手のマネジメントも大切だがその前に自分の身の回りの事を完璧に…ってオイッ!聞いているのか!?それから俺はうざくはないからな!」

だからそういうとこだって。

…最近、以前にも増して尽八がうざい件について。東堂被害者の会会員番号001号巻島くんよ、君はどう思う?そんな議題をつい昨日、電話の向こうの彼に持ちかけたが故に始まったであろう尽八の、巻ちゃんが電話に出てくれない…!病。

今週だけで既に三回もこうして同じ相談を受けている私。いい加減相手にするのも面倒になってきつつあるけれど、その原因が全て自分に当て嵌まるものだから正直何も言えない。しかしその相談も気が付けばすぐに脱線して私への説教へと変わるので、出来ればそれは勘弁してほしい。せっかくMy motherが早起きして作ってくれたご飯がまずくなるじゃないか。

「どうしてだ?どうして俺の電話に出てくれないんだ巻ちゃん!?このスリーピングビューティー東堂尽八よりも大事な相手がいるというのか!俺との電話は8割一方的に切るくせに、一体2時間も誰と話をしていたんだ巻ちゃァァァん!!」
「おい、教室で何を騒いでるんだ。うるさいぞミョウジ」
「えええ私!?」

ちょっ寿一!?それ誤解だから!冤罪だから!違うよ!?騒いでるのは尽八だからね!?

いつの間に学食から戻って来たのか、満足そうな顔をした寿一と隼人が教室に入ってくる。ちなみに私は彼らと同じクラスです。ああ、いいなぁ…私も学食行きたかったなぁ。食欲旺盛な奴らの事だ、きっと食後のデザートもちゃっかり食べてきたに違いない。隼人はいつものチョコバナナパフェだろう。そして寿一はアップルパイ…うわぁぁん!私も食べたかったよアップルパァァイ!

「なんだ、また来ているのか東堂」
「おお、フク。まぁな!」
「お前も飽きないなぁ、尽八。昼休みぐらい解放してやれよナマエが困ってるだろ」
「おお!その調子だもっと言っておくれ隼人くん!」
「む、何を言うんだ隼人にミョウジ!これは真面目な相談なのだよ!お前たちも聞いてくれ実は巻ちゃんがな…」

そうして隼人や寿一にまで及ぶ尽八の相談はこれから昼休み終了の鐘がなるまで続くのであった。いや、隼人全然聞いてないからね耳にイヤホン入れ出したからね…って、あ、いいの?片方私もらっても?あざーす!隼人マジ大好き!そんなわけでオーケー後は任せたぜ寿一!おいおいそりゃ俺の真似か?にしてもおめさん、オーケーの使い所間違ってるぜ。マジか。

「コラそこ!公衆の面前でいちゃつくんじゃない!それから人の話は最後まで聞かんか!今は俺が話しているだろう!あとミョウジ!マジ大好きなのは隼人ではなく登れる上にトークも切れるこの東堂尽八だろう!?間違えてもらっては困るな!」
「間違ってねーしうざいし声でかいし!」
「おま、口悪っ!それと俺はうざくはないぞ!?」

確かに声はデカイが…エッ!?うざくはないよな!?と何故か2回も言う尽八にげんなりとするのもこれで今週3度目になるので慣れました。それよりも今は彼にとって非常に大事なことが一つあるので優しい優しいナマエちゃんが笑顔で教えてあげようと思います。

「あと1分で予鈴なるけど大丈夫?」

意地悪く告げられたその言葉にハッ!?と慌てて自分のクラスへと帰っていく尽八。その背中を見えなくまるでじっと眺めていたら隣の隼人に、相変わらず素直じゃねーなあと鼻で笑われた。うるさい、そんなの分かっとるわい。だけど私たちの関係はこんぐらいがちょうどいいと思うのだ。

(なあ、俺はどうすればいいんだ?)

…アッごめん寿一のこと忘れてた。

end

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