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しらばっくれても無駄です


私には到底理解出来ないことだけど、ああ見えて東堂はかなりモテる。そして正直認めたくはないけれど確かに顔は良いと思う。だけど自分は美形だの山に愛されているだの巻ちゃんだの…ああ最後のは関係ないか。

まぁとにかく、普通の男子が言おうものなら君たち本気で引くでしょ?な言葉たちも何故か東堂が言うことによって色めき立つのだから、本当に人間顔だよね。ってウソウソ、本当は思ってないよそんなこと。人間顔より中身だって大事なのはビジュアルより性格だって。

「て、ことだからね分かった?」
「いや、どういうこと?」

ぐるんと思いの外首を傾げた友人に、やっぱ駄目かハァァ…と本日何度目になるか分からない溜め息を吐く。何回言ったら分かるかなこいつ本当しつこいな。

「だァから、付き合ってないんだってば只の友達なんだってば私たち」
「…ええ?でもいつも一緒にいるし」
「そりゃ友達だもんよ」
「二人の関係は友達なんて簡単なもんじゃないと俺は思うんだがってあの新開くんが妙に真面目な顔で言ってたしやっぱりなんか怪しい。とにかく親友の私よりも一緒にいるんだものやっぱり付き合ってるんだそうなんだ親友に隠し事なんて酷い親友なのに」
「おーい新開の奴はどこ?誰かアイツを今すぐここに連れて来て。あ、フクちゃんでもいい。このサボりなマネージャーを引き取ってくれるなら誰でもねぇ黒田くん」
「…すいません、俺練習したいんで」

自転車部の部室にて。さっきからこんな押し問答が繰り広げられているなんて噂の本人らは知らないだろう。今日はたまたま部活が早く終わって、たまたま部室に遊びに来たらこの面倒くさいマネージャー(友人)に捕まった。そしてずっとさっきのような、付き合うじゃなんじゃな質問責めに遭っていると、そういうわけなんだけども。

ええ、もうお分かりでしょう。

「…ハァ、よりにもよって東堂って」

誰が立てたのか。何故か、私と奴が付き合っているだなんだという噂がいつからか流れているらしいのだ。しかもそれを信じる輩がこんな身近に一人いた。いやお前一応私の友達だよね?なんで噂の方を信じてんのマジであり得なくない?なくなくない?

本当ないから違うから勘違いしないでよね…半ば本気の溜め息と言葉を溢したつもりなのに、奴らは全く信じる気がないらしい。ニヤニヤした顔でこちらを見やる友人と黒田くん。黒田てめえ練習したいんじゃなかったのかよフクちゃんに言い付けっぞ。

ギリリ、歯を食い縛り二人に睨みを利かせればパッと視線があちらを向いた。どうやら私の睨み顔が効いたらしい。そう思って何だか嬉しいんだか複雑なんだかな気分に浸っているとガラッと出入口のドアが開く。見れば練習が一段落したらしい彼らがぞろぞろと入って来て。

「おおっ!ナマエじゃないか!今日は来るのが早いな!」

その誰よりも早く、つまり一番に部外者である私を見つけたらしい東堂が汗だくのままツカツカとこちらに寄ってくるではないか。ちょ、おいとりあえず私に近付く前にその汗拭いてお願いだから。

「うん、とりあえずこのタオルをあげよう」
「む?まさかナマエがわざわざ用意してくれたのか?すまないなありがとう!!」

暗に、汗を拭けと言いたかっただけだった。その辺にあった、誰のかも分からないタオル(多分きれいだと思う)を東堂に向かって投げて寄越す。するとそれを疑いもせずに受け取ってごしっと顔を拭いて、何だか嬉しそうに笑うから。…うん、少しだけ罪悪感。

違う東堂それ私のじゃないよ…その辺にあった多分きれいなやつだよだから保証は出来ないよごめん。それからタオルの持ち主、勝手に借りてごめんなさい。その罪悪感に圧されたのか、引きつりまくった笑顔と共に、お、お疲れ様と東堂に声を掛ける。するとまた笑顔を向けられて。

おおこれはいい匂いだ!もしや洗剤は○ールドか?…なんて。やばいどうしよう本当のこと言った方がいいかな。それ私のじゃない…って言いづれぇぇぇえ。

真っ直ぐ東堂の顔が見れなくて、えーと…確かそうだったかな?と泳ぎ切った目でそう言った時、ある意味賑やかだった部室内に奴の溜め息が響き渡る。うお、なんだよ荒北ビックリさせんじゃないよ。

「やっぱお前ら付き合ってんだろォ?」

その途端シン、と静まり帰った室内。…ちょっと、今その話題は禁句だよ。恐る恐る近くに立っていた友人を見やればニヤァと面白いくらいニヤけたドヤ顔をしていた。三本ローラーに乗っている黒田くんまで同様の顔をしている。なんだよお前らなんなんだよ。

「ヒュウ!やっぱりおめさんらそういう関係だったんだな!」
「む?そうなのか小野田?」

知らなんだ、とかふざけてほざく新開の耳は取り敢えず力一杯引っ張っておいて。

「違うよフクちゃん、ただの勘違い」

ちゃんと否定しておかないとね。アアア!イダダダダッ耳!耳千切れるッ!ごめんってほんの冗談だろォ!?なぁナマエ!悪かったってェ!ギリギリ、隣から聞こえるそもそもの元凶の耳が崩壊する音なんて私知らない。

「なんだ、そうだったか」
「うんそう」
「そうか…」

良かった、何も知らないのは俺だけかと思った…とホッとしている彼に何だか無性に癒された。フクちゃんよありがとう。それからあそこでローラー乗ってる部員とマネージャーさっきサボってました。

まぁでも、いっか。誤解も解けたようだし。ふうと溜め息を吐いてフクちゃんにお説教をされている黒田くんと友人を今度は私がドヤ顔で見ていたら、そういえばさっきからずっと静かだった東堂が急に大きな声で叫びだして。

「っ俺と、ナマエがっ!つつつ付き合っているだと!?」

そんな、まさか…ええ!?そうだったの!?そういうことだったの!?と何故か意味不明な混乱を一人でおっ始めている。おいおい、その話は今終わったばっかでしょーが蒸し返さないでよ。驚いたように振り返ったフクちゃんの影でニヤニヤしだしたじゃんかアイツらが。

いやだから友達だからね?とその背中に声を掛けてみるも東堂の暴走は止められない。こうなったらもうとにかく落ち着くまでほっとくしかないのだ。ハァァ…なんで私の周りってこんな奴ばっかなの。

チラチラと私を見ながら顔を赤く染める東堂を見て、なんだか無性にイラッとした。お願いフクちゃん私に癒しを下さい。って荒北、この間私の誘いを断ったアンタはお呼びじゃないんですぅ。フクちゃんを庇うように立つのはやめなさいよ私の癒し供給の邪魔をするでない。

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