ホワイトデー2017
「あ、来た」
「ん?どうしたの、リソル」
「別に、待ってたわけじゃないけど。…はい」
差し出されたのは、可愛らしい水色と白のストライプのリボンが飾られた、薄茶色の紙袋で、ナマエはその紙袋からふわりと香る優しい香りに、思わずおお、と声を上げ、動きを止めた。乙女心をくすぐるこの香りは、もしやバニラの香りだろうか。…うん?バニラ?
「………………カップケーキ、たくさん食べて、その、体重が」
「勝てなかったけどね」
「うう、ごめん…頑張って応援したんだけど」
「……まあ、嬉しかったよ。アンタがあんなに顔広いなんて思わなかったけど、それでもオレに花束くれたわけだし」
だからちょっとしたお礼、と目を逸らしたリソルが再び、紙袋を差し出してくる。「…リソル、珍しい。素直だね」「はあ?いらないの?」鋭い言葉が即座に返ってくるものの、ナマエはリソルのあまりに可愛らしい"お返し"に、感嘆の溜息を漏らすばかりだ。ちょっとしたどころか、とんでもない。嬉しすぎるお礼である。
「何、体重増えてるからいらないって?ああそう、」
「あーあーあーあー増えてない!大丈夫!減るから!」
「……そういえばさあ、ちょっと丸くなったよね。ホワイトデー前に比べて」
「健康的になったんだよ!」
「へえ、元々健康的だったのに?それってただの、」
「リソルからのお返しだからいいんだってば!」
「…………最初から素直にそう言ってりゃいいの」
はあ、と溜息をひとつ。どこか軽いその吐息と共に、ナマエの胸元に袋を押し付け、そのまま歩いてナマエの前を横切ったリソルは、対策室のソファーに深々と腰掛けた。ようやく、ナマエの手に渡った紙袋にナマエは思わず顔を綻ばせる。「へへ、ありがとう。すごく嬉しいよ」「…そりゃどーも」肩を竦め、もう一度、負けたけど、と繰り返したリソルはやはり、悔しいのだろうかとナマエは思う。
「そんなに気にしなくても、リソルは私の一番なのに。……あ、」
「…何恥ずかしいこと言ってんの?」
「あー、これは、心の中でだけ言うつもりだったんだけど」
「………しょうがないから、それで妥協してあげる」
「盟友の一番じゃ満足できないなんて、欲張りだ」
「だってアンタは盟友以外にも、色んな顔持ってるんでしょ」
――ソファーから飛んできた視線が、あまりにも真っ直ぐで。
その言葉の意味を、上手く理解できないナマエではない。
「…うわあ、リソル。それ、ずるい」
「へえ、ずるいんだ。隠してるアンタも結構、ずるいと思うけど」
「隠してるっていうか、言う必要ないし、……無かったし」
ぼそぼそと言い訳を連ねながら、頬の熱を自覚するナマエは、誤魔化すようにリソルから手渡された紙袋の封をしている、可愛らしいウサギのシールを丁寧に剥がしていく。…全ての、私から、一番に望まれたいなどと言うリソルを、傲慢だと思えないのはやはり、惚れた弱みに違いないのだ。それどころか嬉しくて、どうにかなりそうだなんて。…ずるいなあ。ずるい。リソルは、私の扱いに、長け過ぎてる。ずるい。…あ、やっぱり、ずるい。
「ああ、そうだ。ワンピースとか結構新鮮で、良かったよ。似合ってたんじゃない」
「………ほ、褒め殺しだ」
「たまには優しくして欲しいでしょ?ってわけで、今度それ着て、オレと一緒に出掛けて。グランゼドーラに美味しいアイス屋が開いたって話だし」
したり顔でテーブルの上からゴシップ新聞を拾い上げ、読み始めたリソルのその行動が、照れ隠しかどうかすら、熱で滲む視界に戸惑うナマエにはよくわからない。ナマエが分かるのはたった二つ。一つは、プレゼントされたのが、薄水色と白の可愛らしいワンピースだったということ。もう一つは、どうやら自分が、リソルに随分と一途に想われているらしいということ。特別な日に相応しい特別な言葉とプレゼントで、逆にどうしたらいいのか分からない、情けない先輩はワンピースを可愛く、可愛く着こなすために、ダイエットを決意するのであった。
20170315
やまなしおちなしいみなしな ホワイトデーリソルくんです
五位おめでとうリソルくん〜!セリフバレみました やはり君は天使
個人的に一番きゅんきゅんしたのはダストン様でした ありがとう公式…
ホワイトデーのリソルくんはすごくデレ成分多めでよかったですね!可愛かった〜!負けるはずないから安心しなよとか、あとでまとめてお相手してあげるとか、狙い撃ちにもほどがありますね…一部の人しか狙い撃ちされないのにその一部の人が書いてないから私はリソルくんが読めないのか!?リソルくん読みたいです