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宇宙人が私の隣の部屋に住むことになった。
……何を言っているのか分からないと思うが私だって分からない。本当に本当に分からない。ただ久しぶりの祝日で、バイトもなくて、予定もなかったから今日一日はのんびり過ごそうと思って満足行くまで寝坊をして、そこまでは良かった。至って普通の休日だ。
少し遅めの朝ごはんを取ろうとキッチンに入ったところも、まあいつも通りだと言っていい。けれど今日は随分賑やかで、ここに住んでいる人間のほぼ全員が集合していたのだ。まだジャージ姿の小暮さんが振り返って、楽しそうな笑顔で私に手招きをしたのに付いていくのはまあ当たり前の流れだろう。
木枯らし荘の面々の中央に居たのは天馬君と、その友人であろう中学生達だった。今日は普段のサッカー部のメンバーではなく、世界大会に行った(…んだっけ?)そのメンバーだったと思う。和気あいあいとしていて、ああ中学生はほのぼのしてるな、なんて寝起きのぼんやり頭で考えていたら、秋さんがそのうちの一人にはいどうぞ、と鍵を手渡したのが見えた。青と白のジャージは天馬君と同じ。
へえ、今日から住む子が増えるんだと思えば顔を見たくなるのが人ってものだと思う。振り返った秋さんに「おはよう名前ちゃん。あなたの隣の空き部屋に今日からしばらく彼が住むことになったの」なんて言われたらそりゃあ、見るだろう。ぱちぱちと瞬きをして、まだ薄らぼんやりとしている視界をはっきりさせて、目を凝らす。……うん。くるくるとした髪。ふわふわしてそうだなあ、天然かな?……肌の色、白すぎない?目付きちょっと悪くない?中学生…?耳もなんだか尖ってて、日本人には見えないけど。
「…天馬、部屋を変えるように要求してくれないか」
「え、でもオズロックは静かなのがいいんだろ?名前ちゃんは多分、俺たちの中で一番静かだと思うんだけど」
「…………ふん」
「あ、もしかして声に出してた?」
「気が付けよ、ドジだなあ」
小暮さんの呆れ顔と、異様なぐらい肌の白さが目立つ少年…少年?天馬君と親しげだけど、何歳ぐらいなんだろう。とにかくオズロックと呼ばれた彼はじろりと私を睨んで秋さんに目線を戻した。「確かにオズロックは色が白いわよね」天馬君の横から(桃色の髪が特徴的な、確か名前は…)野上さくらが顔を覗かせて彼をからかう。場がほんのりと和んで気まずい空気は消えていった。一人、当人である彼だけは不服そうに鍵を指先で弄っている。
「あ、名前ちゃん!オズロックのことよろしくね。地球にホームステイするのは初めてらしいし。オズロック!何かあったら俺でもいいけど、俺がいなかったら名前ちゃんを頼っていいから!」
天馬君の笑顔は非常に眩しい。…ん?今、気になる単語があったような?地球にホームステイとかどうだとか…?「名前、オズロックは宇宙人らしいぞ!俺たちの時は偽物だったけど、こっちは本物だってさ!」小暮さんはどうしてそんなに楽しそうに目を輝かせているんだろう。……って、えっ?うちゅう、じん……?
さいしょのひ
(2014/12/01)