自分の部屋のベッドの中


何がガンダレスの機嫌を損ねたのか、私にはまったく分からなかった。

それでも意味無くガンダレスは態度を豹変させるような…そんな事は有り得ないと思っていた。だから何度か謝ろうと必死で後を追いかけたりもした。でもガンダレスがリュゲルと離れてしまう時なんて一日のうちの何度かしかない。それもたった数分で終わってしまったりするのだ。その間になんとか声を掛けようとするけれどもガンダレスは私を視界に入れてさえくれない。触れようとすると睨まれて、やっと触れたと思ったら振り払われて触るな!と絶叫された。その時のガンダレスの目に心底から震え上がってしまったのだ。


「……なんで、」


好きな人が怖い。ガンダレスとはいつもリュゲル越しに接してきたから分からなかっただけなのだろうか。でもガンダレスは(少なくともこの間までは)私に笑顔を向けていた。リュゲルがいない時でも私に、リュゲルの事を笑顔で語ってくれていたりした。

そんな風に兄を慕うガンダレスに気が付けば惚れていたのはいつのことか、もうそんなこと覚えていない。接する機会が多かったのはリュゲルだけれど、目はいつだってリュゲルの後をくっついて回っていたガンダレスを追いかけていた。ガンダレスの笑顔が好きだったのだ。向けられるたびに幸せに満たされていた。


―――なのに。


「どこを、どう間違えたんだろ…」


振り払われて、そのせいで痛みを抱えた手の甲をさする。赤くヒリヒリと唸るそこを、先程リュゲルとすれ違った時に咄嗟に隠したのはきっと本能的なものだ。ああ、…ああ!頭を抱えて毛布で体をくるむ。ガンダレスを好きだと、…言えなくなってしまいそうだ。




(2014/01/05)