リュゲルEND3
(夢主死亡ルートの分岐。同じような違うような)


ガンダレスが好きだ。
でも、ガンダレスは私を嫌っている。

―――詳しく言うのなら、私を兄を苦しめる害悪として認識している。


**


「ありがとう、リュゲル」


頭の中がクリアになっていく。真剣な目で頼れと言ったリュゲルに頼ってしまえば、もう苦しむ事なんて無くなるんだろう。思わず縋りそうになってしまうが、それを押さえるために手をぎゅっと握った。抑えなければ。リュゲルを既に傷つけているのに、これ以上傷つけてどうしたい?最低のラインは越えたくない。


「俺は礼を言われるような事なんて」
「…ううん、そんなことないよ。リュゲルは本当に優しいね」


心からそう思ったのだけれど、リュゲルはそんな事はないと首を振った。「ナマエだけだ」……優しい目で、優しい顔で、そんな事を言わないで欲しい。縋ってしまいたくなる欲求が膨らんでいくだけ膨らむだけだ。黙り込んだ私に臭かったか、と問いかけるリュゲルは本当にいつものリュゲルと変わらない。「…ガンダレスは?」「ガンダレスもだ!」仄かに赤い顔で、でも弟の名前を出すとすぐに肯定の言葉が帰ってくる。リュゲルは本当に良いお兄ちゃんだ。

だからこそ私はガンダレスからリュゲルを取ってしまうのを躊躇っている。リュゲルが私に恋愛感情を抱いて、私がリュゲルのそれを受け入れたら、ガンダレスは一人ぼっちになるのだ。きっとそれをガンダレスは認めないだろうし、…そうしたらきっと全部悪い方向に向かっていく。それを防ぐためには邪魔者である私が退けばいいということを随分前から自覚していた。なのにそれが出来なかったのは、やっぱり私が二人のことをとても大切な人だと思っていたからだ。

―――言わねばならないだろう。


「あのねリュゲル、一つだけ聞いて」
「なんだ?なんでも言ってくれ、ナマエ」
「うん。……私はね、リュゲルの事が大好きだよ」


そっと開いた窓に歩み寄って、リュゲルの方を見ずにそれだけ言って黙り込んでしまう私は酷くずるいと思う。数十秒ほどそのままにして、おそるおそる振り返るとリュゲルが目を見開いた赤い顔で私を見つめて惚けていた。「な、な、っ」ああ、びっくりしてる。多分リュゲルに好きだと言われた時の私もこんな顔だったんだろうなあ。


「…本当、か?」
「うん、本当だよ。でもごめんね、もう会えない」
「へ……会えない!?どうしてだ!」
「私の好きと、リュゲルの好きが違うって意味」
「え?」
「私もね、ずっと好きだった。だからその人のためになんでもしてあげたい」


私の好きな人が望むのは、私がいなくなることだ。そうすれば自分の大切な人間を傷つける者はいなくなるのだから。ごめんねリュゲル、と繰り返すと分からないとリュゲルは言った。「ナマエ、何が言いたいんだ?」ガンダレスの前ではいつも得意気なのに、こんなリュゲルを見たらガンダレスはどんな反応をするんだろう。リュゲルを困らせている私をますます嫌いになるんだろうか。

それは…嫌だなあ。とても嫌だ。あの憎しみの篭った目を向けられるのは嫌だ。それだけガンダレスにとってリュゲルは大きい存在なんだと実感させられるのも嫌だ。もうこれ以上ガンダレスに嫌われたくないよ。だから、だからさようならなんだよリュゲル。私もガンダレスへの気持ちに別れを告げるから、リュゲルも私へ別れを告げて。




(2014/02/28)