01
家の中に人の気配は無かった。腹をくくって様々な箇所を調べてみたけれど、狭い部屋の中では調べる場所なんて特に多くはなくて。とりあえず分かったことはタンスの中の服が女性物しかなかったことからこの部屋の主は女性であること、そして裕福ではないこと。ちなみにタンスの引き出しから貴重品入れが出てきた。判子と通帳。流石に開くのはまずいだろうと思ったし、何よりこの部屋の古さからして(清潔感を保って生活はしているみたいだけれど)貧乏なのは間違いない。
手がかりはこれ。戸棚にたった一つ、飾られていた一枚の写真。
そして貴重品と共に仕舞われていた、何冊ものノート。
「……"にっきちょう"、ね」
いくつものノートのタイトルに共通するのはそれ。流石に開くのを躊躇った。そして目を逸らしたら、視界に映ったのが写真だった。
金髪碧眼の美しい幼子が、同じ髪色と同じ目の色の美男美女に連れられている写真。多分、大量に同じものがあるのだろうと思われる。理由は写真が収まっている額縁に付いているバーコードシール。この部屋の主はインテリアで飾っていたのだろうか。……それとも?憧れでも抱いていたのか、はたまた気に入っていただけなのか。…流石にバーコードシールが貼ってある写真立ての写真の人物が、(写真立てと写真は多分おそらく最初から固定されている)この部屋の主という可能性は低い。
「…じゃ、やっぱこれ?」
―――でも読んでいるあいだに、誰かがここに来たらどうしよう。
「…………」
浮かんだ疑問に答えたのは、自分の中になんとなく生まれた確信だった。「この部屋には多分、誰も訪れない」そう、誰も来ない。多分、この部屋の主はひとりぼっちだ。訪れる人間なんていない部屋だ。そんな気がする。だから、秘密が詰まっている。
まるで廃墟が朽ちて土に還っていくように、誰にも気がつかれることなくこの部屋の主は死んでしまう。そんな風に感じている。不思議な気分なのは異世界に来たからだろうか。
………。
元の世界に戻るための手がかりを探すためには、身近なところから、だ。まずはこの日記帳を調べよう。ここに来たということは、必ず何かあるはずなのだから。
さあ、調べてみよう
(探索は帰還の第一歩)
(2013/11/30)
ファイア君っぽくない…!