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最初に目が覚めた時、やけに静かな場所だなと思った。ゆっくりと目を開くと体中が痛む。――ああ、"実験"は失敗だったのか。じゃあここはどこだ?センターの治療室かどこかかと思って目を開くと、飛び込んできたのはやけにボロくさい狭い狭い部屋だった。僕の部屋より狭いそこに、やたらと生活が詰め込んである印象を抱く部屋。
「どこだ、ここ…」
小さく唸った自分の声が部屋に響く。僕が寝ているのはどうやら敷くタイプの布団らしい。布団から潜り出すといつもの自分がいつも通りの服装で居るのが、ちゃぶ台の上の小さな鏡に映るのが分かった。「あ、」帽子が無い!どこに落としたんだっけ僕!頭…それからいつも不安な時に触れる大事な相方達が入ったボールのある腰に手を触れ、そこにいつも通りの感触が無い事にひやりと悪寒が走った。
しかし、すぐに冷静さは戻ってきた。「危ないから、あいつらみんなセンターに預けてきたんだっけ…」簡単な荷物と、いつもの道具だけを持ってポーチに詰めていたはずだ。腰には確かに自分が愛用しているポーチがある。即座に開いてしまいこんでいたポケギアを取り出した。リーフの番号を即座にダイヤル。
『……おかけになった電話番号は、』
電子のアナウンス顔をしかめた。ポケモン図鑑を取り出す。……開かない。ポケギアも電波を示すマークがバツ印を表示していて、機能がほぼ全て制限されていた。オモチャ程度の役割しか果たさない状態になっている事に苛立ちを隠せない。
―――もしかして。
「……成功、したのか?」
それじゃあここはもう僕が住んでいた世界じゃない、別の世界ということになる。僕らの世界で言う二次元世界にあたる、"ポケモンの住んでいない"世界。リーフの理論によるとそういった世界、パラレルワールドはいくつも存在しているという。ならここはどういった世界なんだろうか。
「じゃー、どうやってリーフに連絡取るかなあ……」
"実験"が成功したからには僕は元の世界に戻らねばならない。来ることが出来たのだから戻る事だって出来るはずだ。ああ、リーフに戻る方法をきちんと聞いとけば良かったかな。…なんとかなる、と信じてみよう。とりあえずこの家の主はどこへ行ったんだ?
やってきた一人
(その時、君の世界では)
(2013/10/10)