十万打番外/アニポケトリップ(if)
(もしも、トリップ先がアニポケだったら)
―――ぱちり。
目を覚ましたら静かな森の中に私は寝転んでいた。本当に唐突な展開に驚く暇すら与えられなかった。スーパーからの買い物帰りで、聞こえたクラクション振り返ったら横断歩道に突っ込んできたトラックが目の前に迫っていて。巨大な衝撃を覚えているけど、気がついたら森の中だ。吹き飛ばされた、なんて事は有り得ないだろう。だって体中のどこも痛くない。
立ち上がってぐるりと周囲を見渡してみる。木の枝が風に揺れる音に混じって、どこか遠くから何かの鳴き声が響くのが聞こえた。……うん?「……ぴー、かぁ…?」聞こえた鳴き声は確かにそんな鳴き声だった。声もしっかり聞き覚えのあるあのボイス。まさかね?と首を捻って髪の毛を指に巻きつける。そんな、有り得ない。
――落ち着かなくて親指の爪を噛んだ瞬間、"それ"は落ちてきた。
「ぴーかぁぁぁぁぁぁ!っ、ぢゅう!」
「うわあああああああああああああ!?」
どしゃっ!ズササササササ、べしい!どさあ!ぼふん。
わけがわからないよ!と心の中で叫びながら今目の前で起こった全てを擬音にしてみました!「なに、なに、何が起きた!?」全力で叫んで周囲を見渡すと目の前に、黄色い"何か"が目を回して倒れていた。私の視界を一瞬奪った顔への一撃はこの生物の尻尾だったのかなあ……うん……とても……見覚えが、あります……!
「だ、だいじょう……ぶ?」
恐る恐る声を掛けてみると、ぴくん、とその特徴的な耳が揺れた。ぴ、と小さく鳴き声が聞こえる。恐る恐る近寄ってみると、それ――ピカチュウ(にしか見えない)――は泥だらけだった。「触って大丈夫、かな」ぴか?と薄目を開けて私を確認したピカチュウは一瞬目を見開いたけれど、一瞬指が触れてぎくりとした私とは違って触れられる事に慣れているみたいだった。
「ねえ君、どうして空飛んできたの?」
そらをとぶ、を覚えている限定ピカチュウなんだろうか。そんな事を考えながらもう一度手を伸ばしてピカチュウの体の泥を払う。ぴいい、とやけに疲れたような声が聞こえた気がした。このピカチュウ、苦労してるんだなあ……苦労してるピカチュウと言えば、ロケット団に毎度毎度狙われるアニメのピカチュウも苦労してるんだろうなとしみじみ思う。……あれ?このピカチュウって……いや流石にそんな偶然はないか。これもきっと、良くできたおもちゃなんだろう。そうに違いない!最先端科学なんだよねきっと!
「ええっと、ねえピカチュウ、聞きたいんだけど」
「ピカ?」
「あなたは野生…じゃなさそうだけど、あなたの主人は」
――どこ?と聞くつもりだった。言う前にピカチュウの耳がぴいんと立って、飛び上がるようにピカチュウは跳ね起きたのだ。同時にピカチュウー!という呼び声が(これまた聞き覚えのある声が)やけに近くで響いた。「ピーカー!」ありったけの鳴き声で主人に居場所を知らせようとするピカチュウ。「いるのか!?ピカチュウー!どこだー!」声は段々近づいていた。え、いやいやいや…声、が。混乱でどうにもならない私の目の前の、木の影から飛び出してくる影。それに向かって飛びつくピカチュウ。
「ピカチュウ!」
「ピカピー!」
感動の再会を果たした恋人のように抱き合う一人と一匹。
ピカチュウを抱きとめた、少年の帽子が地面に転がった。思わずそれに手を伸ばして拾い上げてしまう私。――呆然とした。お店で売っているものとは質感も何もかもが違う……!じゃあ、ここはもしかして、――ポケモンの世界?しかも軸はアニメと来た。
「なあ、君がピカチュウを助けてくれたのか?」
「っ、いや、その」
「ありがとう!俺はマサラタウンのサトシ。君は?」
後ろから投げられた声に振り向いた。――純粋無垢に輝くその瞳に吸い込まれそう。いつもと同じ挨拶をして、笑顔を向けて、私に手を差し出した少年は、紛れもない"主人公"の一人だった。
アリス in ポケモンワールド
(私は君と握手が出来る綺麗な人間じゃない)
(2013/10/08)
十万打よりアズハ様のリクエストで、"携帯獣でサトシ出演"でした!
散々普通のサトシ夢と、ワールド番外と、かなり迷ったんですが…出演、とあったのでワールド番外でifにしてみました。分岐も有りだと思います。正直アニポケもやってみたいです。歴代ライバル君とかとっても絡ませてみたい世界主。
ある意味第0話のリメイクだったんでしょうか…これを書くにあたって世界の方を自分で読み返したんですが、恥ずかしくて数秒でアウトでした。黒歴史確定です。
アズハ様、いつもありがとうございます!楽しんで頂けたら幸いです。