十万打番外/幼児化する
※緑視点
「ぐりーんさん、だっこ!」
今俺の目の前で何が起きた何が!?ぺたぺたぺた、と裸足で駆け寄ってきて俺の足にぎゅう、と抱きついたこいつは誰だ。そ、そうだ!落ち着いて状況を整理しよう!そう俺とナマエはキョウヘイとメイが作ったんで良かったら〜、なんてメッセージと共に送られてきたをお菓子を食べて自家製だと書いてあるジュースを飲んで、それで、……えっ何が起きた?
呆然と目の前の幼子を見やる。年は4,5といったところ。見た目は(考えたくないが)明らかにナマエに似ていて、咄嗟にダイヤルしたのはこれを送りつけてきた張本人の男の方で、
『グリーンさーん、俺キョウヘイですー!』
『グリーンさーん、あたしメイですっ!』
『『今トキワジムの前に居るんですけど、』』
―――そいつらはまあ、心臓に悪い事にメリーさんの真似事をしていた。
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「グリーンナマエが幼児化したってほんと!?」
「……もうお前には何も言わねえよ」
ヒビキかリーフから連絡が行ったんだろう。ジムに飛び込んできた幼馴染にほら見ての通りだ、と指差すとレッドは目をきらっきらさせて騒ぎの中に飛び込んでいった。ああ、お疲れさんピカチュウにリザードン。そこのきのみ食ってていいぞ。
「グリーンさん、行かなくていいんですか?」
「あの中に飛び込む勇気は流石に無いな」
騒いでいる中から抜け出してきたのだろうミツルにそう答えると、ですよねえと返ってきた。口調にしみじみしたものを感じる。こいつもやっぱりあんな騒ぎは苦手なんだろうか。「飲むか?」「えええっ!?僕は流石に小さくなりたくないです!」「や、こっち」流石にミツルにまでこの得体の知れないジュースを飲ませる発想は浮かばんぞ俺は…冷えたミネラルウォーターを渡してやるとありがとうございます、と笑顔が返ってきた。
――あの後。
キョウヘイとメイだけかと思ってジムの扉を開けると、何故だか最初に顔を出したのはベルで。次いでトウコ、トウヤ、キョウヘイにメイ、ヒュウとNが顔を出し、最後にチェレンがやけに疲れきった表情で俺にすみませんうちの子が、と謝ってきた。何やら今回のはキョウヘイとメイが仕組んだらしい。知り合いのコイル大好きな科学者に頼んで作った特製ドリンクだとかなんとか。人体に影響は無いらしいから、先に飲んだのがナマエで良かったとしみじみした。…流石に俺もああなるのはお断りだ。と、ミツルと並んでぼんやり騒いでいる奴らを見守っていると、騒ぎの中から飛び出してくる小さな影が一つ。…おいまさか、
「ぐりーんさーん!」
「おいやめろ飛ぶなよ!?って、うわああ抱きつくんじゃねええええ!」
「だーいすきー!」
「……っ!だから、やめろ馬鹿!」
背後に狼共を引っさげ俺に飛びついてきた小さくなったナマエを抱きとめながら叫ばずにはいられない。幼児退行したナマエは思考回路やらなんやらも幼くなってしまったようで、……要するに純粋さの塊?で、何故か俺の事が大好きで、もしかしたらナマエは俺の事を好きなんじゃないかと思うと動揺を隠しきれなくなって、更に小さくなったナマエがやたらと可愛いというか、好きだからこそ特別だというか…「うわ、グリーンがロリコンに目覚めそうになってる」「違ぇ!」誤解招く言い方するんじゃねえレッドのくせに!お前だって小さくなったナマエに抱きつこうとして避けられてただろ!俺の方が好かれてるからって嫉妬しt、
「ん、れっどさんもすき!」
「……も、もっかい言ってナマエ」
「れっどさん、すき!」
「〜〜〜〜〜〜っ!無理、もう無理!ピカチュウっ…!」
あ、レッドが壊れた。ピカチュウに抱きつき悶える乙女のようにごろごろと床を転がるレッドを見て、幼いナマエがきゃっきゃとはしゃぐ。…えっ?レッドも好き?「ねえナマエ、俺は?」「ユウキくん?すき!」「僕は僕は?」「トウヤくんもすき!」次々とナマエに問いかける図鑑所有者メンバーに好き、と返していくナマエ。ああこれ、全員大好き的な…ああ、恋愛とかそういう意味じゃなく…途端にがっくりと緊張が抜けた。うん、なんというか、もうお前はそれでいいよナマエ。
「……あれ?」
そういえば、俺の目の前で全員に好き好き、と連呼している(何故かジュンだけ「ばっきん?」と問いかけを返されて落ち込んでいるけれど)ナマエの口から俺に対してだけ、『大好き』と……聞き間違いではない。気がついた瞬間、明らかな高揚感。なんだ俺、もしかして結構報われてんじゃね?俺"だけ"特別、なのかもしれない。そうか、そうだよな!第一にナマエを拾ったのは俺だし、ナマエの家主でもあるし、一緒に住んでる…というかジムに住まわせてやってるわけだし。うんうん、これをネタに元に戻ったナマエをからかってやろう。さて、ナマエは?どうやら質問をするのはリーフの番らし、
「ねえナマエちゃん、私は?」
「リーフちゃん?だいだい、だいすき!」
―――あ、俺リーフに負けた。
友情に勝るものはなし
(……でもね、ぐりーんさんはね、とくべつ)
(え、)
(2013/10/01)
十万打よりaya様のリクエストで、ワールド番外夢主幼児化でした!
私の中ではイッシュ組が一番悪ふざけというか、トラブルメーカーなイメージなので今回も出張して貰いました。正直動かしやすすぎてなりません。そんなイッシュ組(N含む)の世話を焼くチェレン母さんは完全に趣味です。すいませんでした。
応援、ご参加本当にありがとうございました!