頼りたい頼られたい
「どうしたんですか、名前さん」
「………」
「あの、名前さん?」
「………」
「名前さん!」
「……え?」
「名前!」
「ッはい!なんでしょう京介くん!」
屍状態から復活する魔法の呪文、名前呼び捨て。それを見事反射させられて思わず自分の頭を抱えた。自分から爆弾を投げ込んだわけだが、呼び捨てはやはり恥ずかしいし周りのやつらの目も痛い。「…いや、勝ったのに元気無さそうだなって」次からは場所を考えようと心に決め、座り込む名前さんを見下げると彼女は死んだ目をしていた。口からは音にもなっていない空気が笑い声として出ている、らしい。
「いやあ、ね……」
「な、なにがあったんですか」
「……昔からの知り合いに、弱み握られるって、心にクるよね?」
もうどうにでもなれよ、と小声で呟いているのが聞こえた。「よく分からないんですけど」「要するに、小さい頃に書いたラブレターをネタにいじられる、みたいな」「う、」なんだその妙に想像し易い例え。
「あの、名前さん」
「…んー?」
「いつでも頼ってくれて、いいですから」
――彼女の目に光が灯った。小さくそっか、と呟いたあとに彼女は顔を上げた。「ありがとう、剣城」…優しい笑顔。多分、俺だけにしか向けられない笑顔。でも本当に油断ならない。ほっとすると同時に覗き込まれて、やっぱり剣城のことが好きだよ、とナチュラルに続けた名前さんは小悪魔だ。間違いない。
(2014/02/04)