潜んでいた彼女
「さくらさん!良かった、こんなところにいたんだ」
空野さんが駆け寄って来るのをみて、ふう、と息を吐き出した。「そろそろ宿舎に戻る時間だよ」うん、分かってる。分かってるけど。
…苗字さんに見つかりたくなかった結果、彼女が通り過ぎるまで息を潜めてしまった。会話の意味は全く分からなかった私だけれど、でも彼女は脅されているように見えた。――写真、かあ。
「さくらさん?」
「…なんでもない!ありがとう、バスに戻ろ?」
空野さんを促すと、彼女は私の手を引いた。応じて走り出しながら、苗字さんを初めて目にした時のことを思い出していた。いきなり空から降ってきたんだっけ。身体能力は高いのかもしれない。でも女の子だし、そんなに強いとは思えないんだけどなあ…
(2014/02/03)