金色の卵から 2
バステト。
人型に猫の耳と尻尾、猫の敏捷性を兼ね備えた神の化身。可愛らしい見た目とは裏腹に、強力な力を持つモンスター。
「……ふみゅあ」
「よ、よしよし……寝てていいよ、ゆっくりお休み」
ソファーの上で横になり、名前に(なんと羨ましいことか!)膝枕をして貰ったまますやすやと寝息を立て始めたバステト…さんにその場の全員がほう、と溜め息を吐いた。「……驚きましたねえ」「まったくだっての…」エンジェルさんの言葉に、何やら疲れきった顔のエキドナさんが頭を掻く。名前は優しい手つきでバステトさんの髪を梳いていた。なんと言えばいいのか。――姉と妹?いや、母と娘の方がしっくり来る。
「まるで親子だ…」
「あっ、私もそう思いました」
エキドナさんとは違い、とても嬉しそうな表情できらきらと目を輝かせたアルラウネさんに同意されてしまう。「なんだか、…心が暖かくなるな」名前とバステトさんを見ながらルシファーまでそんなことを言い出した。「それは…分かりますけれども」「けれど?」セイレーンさんがこちらを振り向いて、不思議そうな顔をする。
確かにそれには同意出来る。同意出来るのだ。傍にいたからこそ分かる。ここに居る仲間たちは(既に神の化身としての自覚を得て名前と出会った私とルシファーは除きますけれど)名前にまだ弱い、幼い頃から育てられているのだ。名前のあの優しい目は、仲間と認めたまだ幼い神の化身を慈しんでいるからこそ。
―――けれど、同意出来ないことがひとつだけ。
「……ガチャドラから出てきたのであれば良いんです。問題は、イツキさんから貰ったタマゴだってことですよ」
「イツキってあのイツキ?」
「イツキさんがタマゴを持っていた。要するにバステトさんの親はブラキオスさんと同じくイツキさんということになる」
「それの何が問題なんだ」
「ルシファーあなたは鈍すぎる!つまり、バステトさんが名前の娘ならイツキさんが名前の!」
「……っな、なるほど……そういう事か」
アンタらばっかじゃないの、というリリスさんの冷たい声は耳に入らない。「そもそも、どうしていきなり名前に金のタマゴを渡したのかも気になります」「…確かに」「とにかく、イツキさんは食えない人間です。私達で彼の真意を探りに行きましょう」「…ロキ、そこまでするべきなのか?」流石に不審に思ったのか、ルシファーが眉をひそめた。ああ、……これはあまり言いたくなかったんですけれどねえ。
「イツキさんは少々、…変わった趣向なんですよ」
「?」
「虐めたがるんですよ、名前を。――意図的にね」
首を微かに傾けて、よく分からない、と言うルシファーはやはり紳士である。「…まあ、会えば分かりますよ」あの人、名前の前でだけ猫を被っていますしねえ。
金色の卵から湧き出す疑惑
(2014/01/24)