金色の卵から 1


「よォ、久しぶりだな。元気してたかー?」
「イツキさん!あれ、帰ってきたんですか?この間言ってた魔石龍探しは…」
「ああ、一旦羽休めってとこ。お前は最近どうだ?」
「ええっと……あ!天使の方のルシファーが仲間になったんですよ!」
「おー…?ロキと言い地味に闇が充実してんな?」
「はい!最近は闇パーティで戦ってます」
「木は」
「ブラキオスだけです」
「ブラキオスの肩身もアルラウネの肩身も」
「せ、狭くはないと思いますけれど……」
「名前、お前に足りないのは草だ」
「イツキさんが木属性が大好きってだけじゃあないですか!」
「ほう?ほーう?そんな事言い出すんだなー?」
「……え、えっと」
「こーの金色の卵をお前に授けてやろうかなーと?俺は帰ってきたんだけどなー?」
「へ!?」
「さあ名前、お前に足りないものはなーんだーっけー?」


**


「……って言われたらそれはもう、ね?」


金の卵を抱えて帰ってきた名前にその卵はどうしたんですかまさかガチャを、とお説教をする気だった私とルシファーの目の前で、名前が言い訳のように述べたのがイツキさんとの会話のことだった。というかあの人帰ってきてたんですか…気が抜けない。


「イツキ?名前、イツキとは誰だ」
「イツキさんはね、私にブラッキィの卵をくれた人だよ」


戦い方のいろはを教えてくれたの、と笑顔になる名前。ルシファーがほう、と少し驚いたような声を上げた。そうしてちらりと私を振り仰ぐ。「…で、名前に付いている悪い虫か?」察しが早すぎて感動ですルシファー心の友よ…!頷いて厄介なやつです、と付け足すと私達は無言で握手を交わす。協定成立の瞬間今ここに。

そういえば名前が私と出会ったきっかけのガチャを引くための石はイツキさんが負担してくれたと聞いている。つまりあの人の存在が無ければ私は名前と出会うことは無かったかもしれないということで、ああ腹立たしいですね本当に!あの人は本当に、本気で名前を狙っている上に強いですからね!?シュンさんなんてクシャポイですよ?


「……で、名前。その卵の中身は誰なんです」
「私も分かんないよ?ただイツキさんの事だから、木属性なのは確定だと思う」


誰であれ、金色の卵から生まれるのであれば貴重な戦力の一旦を担うことになるだろう。そっと名前が卵を抱いていた腕を緩め、ゆっくりと卵を前に差し出す。「……へえ、そういえばアタシ、金色の卵から生まれる瞬間って見るの初めてかも」エキドナさんは興味津々なのを隠そうともしないで身を乗り出した。ちょ、私が見えないじゃないですか、って「う、うわ!?割れそうじゃねーか!」「こんなにいきなりですかっ!?」…エキドナさん、アルラウネさん落ち着きましょう?そんなに慌てなくても良いのでは…


「ろろろろろろろろロキどうしよううううううううううう!?」
「貴方が一番うろたえてどうするんです?私達が出てくるところだって見t」
「何回見てもどきどきして怖いの!金色は特に!」
「わ、わけがわかりません!」


だって自分が生まれる瞬間は見ていないし、ルシファーが生まれたところを見届けたのは名前だけだし、回復姫の皆さんは順当進化ですし。でもそういえば私も金色の卵から"誰か"が生まれるのを見るのは初めてです。やはり神なんでしょうか。慌てる名前にああ可愛らしいな、とそんな事を思いながらそんな事を考えていると、眩い光が卵から発されていた。ぴしり、と入っている亀裂。あ、これ生まれ、













「にゃー?」


まず、一声鳴いた。
ぴんと尖った耳、露出の多い軽装、浅黒い肌。そして長くたゆたう尻尾。
柔らかな亜麻色の髪を揺らした、あどけない笑顔の猫少女。


―――バステト?え、嘘ですよね?冗談抜きですよ?は、はあ!?




金色の卵からいらっしゃいバステトさん



(2013/11/29)

チャーッチャラチャッチャッチャ、チャッチャチャー♪
超激レア!!の表示ください私に…バスにゃん欲しい…ウアアアアアアアア