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「へえ、ピアノ伴奏?吹奏楽にピアノ伴奏なんてほとんど無いと思ってた」
「それがな……教頭が是非、今度の演奏会でこれをやれと」
「"花のワルツ"?これ何の曲?」
「チャイコフスキーの"くるみ割り人形"だ」
「でも確か、吹奏楽にはピアノ出来るやつかなり居るだろ?つーか賢悟お前だって弾けるじゃん。確か菅井だって弾けるしフルートの奴らも全員…」
「それぞれのパートの練習があるんだ。合わせなきゃいけない。一人二役なんて流石に無理だ」
「……もしかして俺んとこに来た理由って?」
「ああ、お前にこのピアノ伴奏の部分を頼みたいんだ」
「無理!無理だっつの!俺何年前にピアノやめたと思ってんだよ!」
「7年前だろ?知ってるって」
「第一に俺吹奏楽部に入る気無えし」
「入らなくていい。一時期だけでいいから!頼む!」
「無理だって!第一もうピアノ弾けねえよ俺!」
「やればできる!」
「無茶言うな!」
「ただいまー」
「あ、賢悟君。久しぶり、樹と一緒に何騒いでるの?」
「やあ、久しぶりだな名前。騒がしくして悪い」
「それはもう気にしないけど…って樹、何その嬉しそうな顔」
「賢悟賢悟!俺超良いアイディア思いついた!」
「なんだ?」
「わっ!?ちょ、樹!何す、」
「良いから入れ名前!あのな、賢悟のとこの吹奏楽部が今ピアノ伴奏者探しててな」
「ピアノ…?吹奏楽なのに、ってまさか!」
「賢悟!放課後と週末限定で名前貸してやる!」
「はいィ!?」
「……な、なるほどその手があったか!」
「待って賢悟君、そっち!?」
「名前ならピアノ伴奏は俺より上手いだろうし…樹、お前に相談して良かった」
「だろ!?超良いアイディアじゃね?」
「いやいやいや!?響野って男子校よ!?」
「授業中に入れ替われとは言ってないだろ。放課後だけだ」
「放課後だけでも!」
「だってお前部活にも何も入ってねえし、人見知りで友達少ねえし」
「う゛っ」
「俺より帰ってくるの早いぐらいだし、響野はうちの目の前だ。放課後になったら俺と入れ替わる」
「入れ替わる?樹、バレないかそれは」
「俺と名前は双子だし、バレないだろ」
「いや樹、私は何で入れ替わる理由があるのか聞きたい」
「あー、お前は共学だから分かんねえだろうな……」
「え、え、何で?」
「名前、俺からも変装した方が良いと言っておこう」
「賢悟君まで!?って、そもそもやらないから!」
「駄目か…?」
「け、賢悟君?」
「俺は今、本当に、…名前にしか頼れない」
「………っ、賢悟君もピアノ…」
「うちにはお前のピアノの音色が必要なんだ!」
「……………」
「(おお、コミュ障が人から求められてすっげえ迷ってる。流石賢悟)」
「……演るのは?」
「チャイコフスキーの"くるみ割り人形"。…弾けるか」
「弾ける、けど……慣れないピアノじゃぶっつけは無理だし、」
「じゃあしばらくの間だけうちに来てくれ。安全は俺が保証する」
「賢悟君が?」
「ああ。男子校だしな、お前の事は俺が守ろう」
「っ、」
「賢悟良く言った!」
「……じゃあ、それなら……良いよ」
(2013/09/26)