隣の堕ルシさん1
※設定はロキマス夢主
※ロキ目線
普段のように名前とダンジョンから返ってきて、ルシファーさんと火花を散らしながら名前の隣というポジションを笑顔で奪い合っていると、コンコン、とノックが響く音がしたので思わず二人してその方向に目を向けた。――ボックスの扉から、ノックが響いている。それは新しい仲間の加入を意味することがほとんどだったのだが、当のマスターである名前はきょとんとした顔でカーバンクルさんを抱きしめながらそちらを振り向いているのだ。
「名前、あれほど大事に取っておけと言ったのに魔法石でガチャを回したんですか?」
「う、ううん…回してないよ?そもそも今日はずっとロキも一緒だったじゃない」
ほら魔法石だってきちんとここに、と巾着袋を取り出しじゃらりと揺らしてみせる名前。じゃあ誰がやってきたというのだろう。迂闊にその扉を開けようとする名前をとりあえずは手で制し、私"達"が出ましょうと言うとルシファーさんが頷いた。ブラキオスさんも万が一に備え、名前の傍へ。これでいざという場合に私たちが突破されても、ブラキオスさんならば名前を守り抜くだろう。――ゆっくりと、扉に手をかける。
「―――どうも」
開いた瞬間、視界に入った陶器のような肌と美しく整った顔に、思わず「……へ?」と、普段の私ならば考えられない素っ頓狂な声が漏れた。
「……ルシファーさん?」
**
当然、訪ねてきたルシファーさんは私たちの仲間であるルシファーさんではない。お隣の堕天使な方のルシファーさんだ。彼は進化しているため、彼は神魔王の名を抱いておりその名に恥じぬ禍々しいオーラを纏っている。更にレベルも高い方に分類されるとても強いモンスターなのだ。私も時折お隣のダンジョン遠征に応援に行きますが、隣のボックスさんは闇属性の精鋭さんがたくさんいらっしゃるため力がとても出し易いんですよね。――当然、私は名前の前が一番力を出せるんですけど。……まあ、それは今は置いておきましょう。
「ど、どうしてここに?」
「………しばらくここに置いてくれ」
「うあっふおあっきくううう!?」
……名前、なんですかその奇声。惚れた少女とはいえ流石にその奇声には引きます私……奇声を上げる理由は分からなくもないですけど、上げるんならせめてもっと可愛らしい驚いた声にしましょう?と、論点のズレたことを考えねばならないぐらいに(堕天使の)ルシファーさんの発言は爆弾だった。いや、どういう事なのか意味が分かりません!「な、な、それは、どういう!?」「言葉通りだ。しばらくここに置いてくれ」混乱する名前を黙ったまま見つめて、(堕天使の)ルシファーさんは同じ言葉を繰り返した。……どうでもいいのですけど、いちいちルシファーさんの前に()を付けるのも面倒ですね。「ルシファーさん」「なんだ?」小さな声で我が家のルシファーさんの耳元で囁く。「紛らわしいので、今度から私、ルシファーさんの事ルシファーって呼びます」
「…確定事項なのか、それは」「確定事項です」面倒臭いですよ?「なんなら天ルシさんと堕ルシさんとお呼び分けしましょうか」半分嫌味でにこりと笑うと、ルシファーさんが珍しく口元を歪める。
「……なら、私にもロキと呼ばせろ」
「えー…」
「当然の事だろう」
や、確かに対等を申し出る権利がルシファーさんにはありますけども……不本意です。地味に嫌だ。「……ええ、良いですよ」渋々肯定すると、愉快だとでも言いたげにルシファーさん……いえ、ルシファーでしたね。彼が笑う。気に食わないのは私だけですか。
「で、どうして家出なんです?」
半ば苛立ちをぶつけるようにルシファーさん(堕天使)の方を笑顔で振り向くと呆れ顔を向けられた。何故だろう、ルシファーさんは無言なのにうるさいと言いたくなりますねこれ!
(2013/08/17)
短いですけど続きますー