強引にいくしかない4主
「……え、」
よく見慣れた色の瞳が、照明に反射して揺らいだ次の瞬間に。ナマエは自分の体がぐらいついたのを知ったのだろう。瞳が大きく見開かれた。ソファーに体を預けているから、痛いというわけではなさそうで多少安堵したあと、どうしてこんなことを気にしているのか自分に問いかけたくなった。強引に迫ろうというのに、そんなことを気にする資格があるのか。抑えられた手首と俺の口元を、視線が行き交う。
「ソロ、酔ってる?」
「全然」
「……だよね。二日酔いって顔じゃない」
なにこれ、と明らかに動揺したナマエがぴくりとも動かせない手首に視線をやりながら問うてきた。なにこれ、ってなんだその可愛げのなさ。意識してないって言いたいのかよ、そんなに俺はあんたにとってガキかよ、と言ってやりたい気持ちをなんとか抑え込んでナマエを見つめる。ナマエの『冗談だよね』という雰囲気が微かに揺らぐ。
「…どうするつもり?」
「特に何も。ただ、俺が"こういうこと"をする意味をナマエに理解してほしい」
「シンシアは。ミネアは。マーニャは。アリーナは」
「あんた、自分の名前忘れたのか」
「……ソロはさあ、もっと自分の身のことを考えた方がいいよ」
「なんで」
「勇者だよ。世界を救った、唯一無二の存在」
「だから?」
「お姫様とか。お嬢様とか。選び放題なのに、どうして私なの」
呆れたような溜息と共に吐き出された言葉を受け止め、飲み込んだ勇者は目の前の女に溜息を還した。「好きだから。他に理由はいらない」予定には無かったはずだが躊躇いなく、掴んでいた腕を離しナマエの後頭部に回す。気が付いたナマエが身をよじる前には既に、勇者は女の唇を奪っていた。