8主と幼女
朝起きると、枕元に小さな花籠が置いてあった。
ゼシカが起きた時にそれは無かったらしく、知らないと言われた。「そもそも私とナマエのベッドは分かりやすいように区別してあるもの」きっとナマエへのプレゼントね、と楽しそうに笑ったゼシカが促すままに部屋の外に出る。「お礼を言わなきゃね。可愛らしい花籠、ナマエのために選んだのよ」「…そう、かな」唐突な贈り物に戸惑いを隠せない私の背中を、ゼシカが力一杯に押す。
トロデ王とミーティアと、ヤンガスは花籠のことなんて知らないと言った。「いいや?俺じゃないぞ」ククールも不思議そうな顔をして私の手にある花籠を見つめた。「そもそもお前達の部屋に行こうとしたらナマエ、俺はゼシカにムチで打たれるだろ」なるほど、ククールの言うことには一理ある。ゼシカはククールが私の成長に悪影響を及ぼす、と言ってあまりククールと(特に夜は)関わらせたがらない。ククールは私の目から見れば大分きちんとしていると思うけれど、ゼシカからすればだらしないみたいだった。
花籠はまだゼシカの半分の歳にも行かない私でも分かるぐらい、とても可愛らしい花で溢れている。黄色、オレンジ、赤、ピンク…明るい色で飾られたそれの、送り主は誰なんだろう。可愛らしい花は慎ましく、そして和やかな気分になる。「へえ、ナマエは花が好きなのか」「うん、好きみたい。…いい匂いがするし、なんだろ。……嬉しいな」クリスマスでもないのにプレゼントが貰えてしまうなんて、思ってもいなかったからかもしれない。興味深そうに花籠を見つめるククールにありがとうを言ってから、ゼシカのところに戻ろうと踵を返した。
「あ!」
――振り向くと、見慣れたオレンジ色のバンダナが揺れた。「エイト!」「わ、ナマエ!」走ったら危ないよ、と駆け寄った私と目線を合わせるために膝を付いてくれたエイトを見つめる。肩のトーポは今日もエイトと仲良しみたいで、チーズの欠片を手に持っていた。「おはよう、エイト!」「おはよう、ナマエ」大好きなエイトが優しく笑う。「おはよう、トーポ。朝ごはんには少し早いんじゃないかなあ」「大丈夫、チーズは別腹だよ」優しくトーポに笑いかけるエイトは、ちらりと私の持っている花籠を伺う。
気になるんだろうか。エイトも花が好きなのかな?「見て見て、エイト!」花籠を差し出すとエイトが少し目を見開いた。「朝起きたらね、誰かが私にプレゼントしてくれてたんだよ!」誇らしいものを掲げる気分で、エイトに花籠を差し出すとエイトがとても嬉しそうに笑った。「気に入った?」「もちろん!」頷くと、頭に手が伸びてくる。
そういえばエイトにはまだ、聞いてなかったっけ……あ!「もしかして!」「ん?」ふるふる、と思わず首を振っていた。「誰かが私に、じゃなかった」「ナマエ?」覗き込むようにして屈んだエイトの首に、思いっきり抱きつくとうわあ!とエイトが驚いたような声を出した。「ありがとう、エイト!大事にするね!」「ひ、ひどいな?引っ掛けただろナマエっ!」「ひっかけ?」首をかしげるとまあいいか、とエイトの声が耳元で小さく響いた。私はエイトが気に入った、って聞いてくれたから気がついたんだけどなあ。
(2014/05/05)
ほのぼのしてるのが書きたかっただけのオチなしヤマなし8主
夢主は幼女の物理アタッカー。多分武闘家とかそのあたりのタマゴ。