ラジオ塔脱衣事件
※回覧注意
※ラジオ塔脱衣事件話
※つまり主人公脱衣


「よーし、変装は完璧!ねぇねぇ、ロケット団に見える?」


相棒のベイリーフにロケット団の衣装を纏った自分の姿を見せると、「ベイ!」と元気な声が聞こえてきたので多分大丈夫だろうと信じる。
この衣装は正直あまり着たくはなかったけど、


「これもロケット団成敗のため!……よし、行くよ」


ベイリーフをボールに戻し、ラジオ塔の入口に足を運ぶ。
扉の前ですれ違ったロケット団の団員はチラリと私を見たものの、何も言わず通り過ぎて行った。

―――行ける!さぁ潜入よ!

自分の中で自信が芽生えたのか、足取りが堂々としたものになる。
そのままラジオ塔のロビーを通り過ぎる。大丈夫よ、ベイリーフ。
あ、ロケット団の団員が見張ってる。ここは新入りを装って…あ、通っていいって!やった!


「やい!ロケット団!」


走ってくる音と共に後ろから聞き覚えのある声が聞こえるけど振り向けない。
……え?
な、なんでここに?いやロケット団と何かあるんだろうなーっていうのは薄々気がついてたんだけど何故にこのタイミング?
まずい、どう考えてもこれはまずい。
知り合いにこんな姿見られたら一発で水の苦労が泡になる!


「弱虫共が寄り集まって、人に迷惑かけるような真似してるんじゃねえ!……あ」


ロケット団の団員に怒鳴り、……そのまま私の方を振り向くシルバー。
反射的に顔を合わせないように壁と向き合う。そしてそのままゆっくりと階段を……


「……あれ?お前ナマエ?こんなところで何してんだ?」


バレテーラ


ああ!下っ端の人の目線がなんだか厳しい!
よしここはスルーだ、私にはやるべきことがある。
なるべく自然な動作で階段に足をかけて登ろうと――――

がしり。腕をしっかりと掴まれる。


「まさか、お前までそんな格好して強くなったつもりか?」
「なッ、違」


腕を引かれ、シルバーと正面から向き合うと普段の三割増の目つきの悪さ。…うわぁ、これ本気で怒ってる
小声でなんとか事情を察してもらおうと思って、違うとアピールするけれどまったく反応無し。
人の話聞いて!?その思い込み激しい部分は少し改善した方が、


「――バカバカしい!そんな格好やめちまえ!」
「ええええええええ!?」


びりりりりりり………


必死の抵抗虚しく団服の胸ぐらを掴まれて、真横に思いっきり引っ張られる。
ちょっと待って、着た時にも思ったけどこの団服以外に生地脆いんですよ
でも着ちゃうとやっぱりあったかいし黒だから透けないし、

――――つまり団服の下には下着しか着けてないわけで。


「きゃ、きゃああああああッ!?」
「………は?お前、服は?」
「これ着てたじゃない!何するのシルバーの馬鹿!」
「―――――ッ」


なんでこんな公共の場で下着を晒さなきゃなんないの!?
ああもう最悪だ……なんて思ってたら涙が溢れてくる。
それに寒い、ああもう計画も全部台無しだ………


「………………その、悪かった、それ着てろ」


ふわりと体に被せられたのはシルバーのジャケット。
シルバーの顔は真っ赤に染まっていて、……珍しく小さい声だったけど、ごめんと呟いた。
あ、どうしよう許しちゃいそうな私が居る。




ラジオ塔脱衣事件

(「……もしもし、警察ですか」)
(「ラジオ塔ロビーで男の子が女の子の服を無理矢理剥ぎ取ってまして」)
(あああああてめえ!通報してんじゃねえ!これは事故だ!)
(き、君は新入りじゃなかったんだな!?お、俺と勝負だ!)
(させるか!つーか何気に見てんじゃねえ!)
(変装して忍び込むつもりだって知ってたらやんなかったっての!)

(初めてシルバーに名前呼ばれた…)



(2012/12/17)