相応しくあるために
※これの続きみたいな
俺には好きなやつがいて、その好きなやつには想い人がいた。
なんの因果かそれは俺のライバルで、レッドだった。レッドのことを好きなナマエはいつだって俺にレッドの好物は何だとか、レッドは今どこにいるのだとか、レッドの好みのタイプはなんなのかだとか、しつこく迫った。当然それはうっとうしくもあり、同時に寂しくもあり、嬉しくもあった。(理由はなんにせよ、レッドの馴染み兼ライバルというだけでナマエは俺に寄ってくる。頼られているのは嬉しいものだ)
結局、レッドに相応しい女になろうと単身で飛び込んだシンオウ地方のコンテスト界から、トップの称号を勝ち取って帰ってきたナマエはレッドに想いを伝えることが出来なかった。書類上の行方不明の文字に諦めに似たものを抱いたのだ。現在は次期ジムリーダー候補として俺の隣で働いている。それを好機ととらえた俺は、諦めることなくナマエに迫っていた。…実質は言葉にまったくなっていない、些細なアピールだ。けれども誰より長くナマエと時間を共有していたのは事実。そして、ナマエが未だ(俺と同じく)レッドを諦めていないということを確認したのも事実。
「…レッド、どこにいるんだろうね、本当」
「さあな」
はぐらかすのも慣れたものだ。そっと笑うと、またバカにして!とナマエが怒る。
レッドの居場所を俺は知っている。シロガネ山だ。が、しかしナマエに教える気はさらさら無い。ナマエに協力するぐらいなら、次期リーダーとしての修行を進めるなんてそもそもしない。後付けの理由なんて簡単なものだった。コンテストを制覇した実力派がジムリーダーへ…バトルにも強いのだから、いっそ両方を極めてレッドに会う日のために鍛えたらどうだと言えば二つ返事でナマエは受諾した。行き場が無いナマエの立場も利用し、それも全てレッドにナマエを渡したくないからだ。どうしても欲しいから、無理矢理つなぎ止めて傍に置いている。周囲から見れば俺達は付き合っているも同義だというのに、ここにレッドを介入させたらどうなる?――ナマエは一目散にレッドのところに飛んでいくだろう。
「そういえばグリーン、レッドってテレビの映像が映る場所にいると思う?」
「なんだそれ。…いや分かんねえけど、なんかあんのか」
「来月からホウエン地方でコンテストがあるんだけど、それに出ようと思ってるの。…シンオウのはレッドの目に入ってなかったかもしれないし…」
「ジムリーダーの仕事補佐は」
「出来無くなるけど、でも私が今一番輝けるのはコンテストなの。それに色々な人と技を競い合ってみたいのよ」
目をきらきらと輝かせながらナマエは言う。それは初めてポケモンバトルをした時のレッドの目を彷彿とさせた。「…帰ってくんのか」「もちろん!」何言ってるの、とけらけら笑うナマエにはいつだって不安を煽られる。
上を、高見を、極めようとして俺とレッドは競い合った。結果、全ての頂点に立ったレッドは人の前から姿をくらました。……ナマエも、一つのもので全ての頂点に立ってしまったら、俺達の目の前から姿を消してしまうのではないだろうか。
相応しくあるために
(2014/02/05)
続いたら泥沼状態になった。
このあとは多分緑さんに主の居場所聞こうとした赤さんと、ホウエンに出向いた主が見事にすれ違うと思われる。
で、緑さんは二人を会わせたくないから妨害する、と。