一緒に寝ましょ
※ゲンさん視点


「眠れません」
「………私は今、とても心地よく眠っていたのですが」


深夜2時。予告無しに部屋に侵入者があれば、そりゃもう波動使いならばすぐに目が覚めてしまうわけで。
流石にこれはいくら性別の違う弟子と言えど、いくら出来良い弟子だろうと怒っていい。
部屋の扉を開けるなり、そんな事を告げたナマエに一応は笑顔を向ける。こめかみは少しヒクついているが。
明日の朝だって早いのだ。疲れた体を丁度布団で癒していたというのに……
とりあえず自分の部屋へ戻るように告げるために口を開こうとして――柔らかいものが自分の体に触れている事に気がついた


「だから一緒に寝かせてください師匠……ふあぁ」
「……ナマエ?何してるんですか」
「何って師匠と一緒に寝かせてもらおうかと」
「ダメに決まっているでしょう」


そう言って再び大きな欠伸をするナマエ。人の話聞いてますか?
―――これは夢だ。そうだ私は随分おかしな夢を見ているんだなー……夢じゃあないですね!
弟子と言えど女の子。ナマエは多分恐らく私の事なんて何も考えず一緒に寝ようとしているのでしょう。この阿呆娘…
とりあえずナマエを布団から押し出す。何するんですか師匠、じゃない!


「ナマエ、君は自分のしている事の意味が分かってます?」
「師匠の温もりで私も健やかに寝ようとしてるだけですけど」
「あのですね………」
「何ですか師匠。まさかこんな、眠れないから一緒に眠らせてくれと頼んだ弟子を非情にも追い返すつもりですか!?」
「そのつもりに決まっているでしょう?」
「ひどいっ!師匠の鬼!」
「鬼で結構ですよ。さあ自分の部屋に戻って」
「やです!眠れないんです!」


どうやらナマエも譲る気がないらしい。いや意識し過ぎている自分が悪いのだろうか。
いや確かに彼女は大事な弟子だけれど私にとってはそれ以上に――


「兎に角駄目です。第一に一人が嫌ならばリオルと寝ればいいでしょう」
「リオルはもう寝ちゃったんですもん。何ですか師匠、そんなに私が嫌いですか?」
「好き嫌いの問題じゃなくてですね」
「可愛い弟子がこんなに悩んでるのに……っ!」
「普通自分で可愛いって言います?」
「それともまさか師匠が、私に欲情なんてするはずないでしょう?」
「……………あ、当たり前じゃあないですか」


あ、何だろう。敗北の兆しが見える気がします。


「私は師匠を信頼してるんです、だから一緒に寝かせてください…!」
「………………………」
「お願いします!」
「…………………………静かに寝てくださいね」
「いやったっ!」


ガッツポーズを決めた後、もぞもぞと横に潜り込んで私の腕を抱きしめるナマエ。もう咎める気にもならない。
きっと今夜は眠れないのだろう。明日も修行だというのに私は徹夜ですね……はあ。




一緒に寝ましょ

(すー……すー……)
(私の気も知らないで……ナマエは本当にしょうがない子だ)

(ま、今は何もしませんけれども)



(2013/03/01)