愛を育む石を君に
※学パロ
※ホウエン組の口調がいまいち掴みきれてないのでご注意
※キャラ崩壊
「……げっ、また会長仕事サボって遊びに行ってる……!」
このサボり癖は毎回の事だけれど、何故あの人は仕事を全部私に押し付けて消え去るのだろうか!
多分本人はまた店やらを巡って珍しい石を探しているのだろう。
何故。何故あんな人が生徒会長なんだろうか。そして何故私はそんな彼の補佐をしているのだろうか。
ここ最近は本当に酷い。生徒会の仕事の大半を最近は一人で片付けている気がする。
というかツワブキ会長は本当に重要な時しか仕事をまともにしない気がする!実際は恐ろしく出来る人なのに…!頭を抱えずにはいられない。
「……なんとかしなきゃ」
とりあえず目の前に積まれている資料の山の一番上からプリントを一枚手に取った。これは…会長のサインを求める書類。
これは私にはどうにも出来ないから小分けにしておく事にする。時間は限られているのだ。早く片付けないと帰れなくなる。
次は生徒会の承諾を求めるもの。判子はどこに置いたっけ、と机上を探しながら内容に目を通す。これは承諾してもいいだろ……う?
―――くら、っ
「……やばいなあ、本格的に疲れが来てる」
突然襲ってきた目眩に思わず眼鏡を外してこめかみを抑える。あの御曹司め!私がどうなっても……いいんだろうなあ
会長が居なければ当然責任は副会長である私に回ってくる。覚えてろ会長、いつか呪っ…………
「………え?」
スローモーションの視界が捉えたのは、傾く視界。あー、とうとう倒れるのか私
体力も精神力もよく頑張ったよ。ここ数ヶ月ずっとこの調子だったんだ、休んでも許されるよなあ……
体が床に倒れ込んで、プリントが手元から離れていく感覚。せめて家に帰ってからが良かった。床は結構痛い。
薄れていく意識の中、遅れてごめんなさいと謝罪しながら生徒会室に入ってくる後輩の声が聞こえた気がした。
**
「………あ――……かい、ちょう?」
「目、覚めました?あと俺ユウキです」
うっすらぼやける視界には、生徒会の後輩の姿が写っていた。あれ、どうして私は会長とユウキ君を間違えたのだろう。
ひょこ、と緑色の影も視界に割り込んでくる。ミツル君かな?とりあえず眼鏡はどこだろう。
「副会長、大丈夫ですか?倒れててびっくりしました……よかった、目が覚めて」
「ここは……?あと眼鏡……」
「保健室ですよ。先生は職員会議でこっちが眼鏡。あ、水飲めます?」
「え?保健室?あ、ありがとう」
眼鏡を受け取って目元に戻すとクリアな視界が戻ってくる。水も受け取ってごくりと一口。ぬるくないそれはミネラルウォーターだろうか。
体を起こして伸びをした。きっとここまで運んで来てくれたのも二人だろう。
「……そっか、私倒れたのかー……って、どっちが運んでくれたの!?まさかミツル君!?」
「や、一応俺です」
「良かった!……あー、ミツル君に運ばせてたなんてとんでもないや」
「僕だってそこまで非力じゃあないですよ?」
「前病気だったんだから無理しない。それにしてもユウキ君ごめんね、重かったでしょ?迷惑かけちゃって申し訳ない」
「気にしないでください!副会長に頼りきってた俺たちも悪いですし」
頭を下げるとぶんぶんと手を振る二人。軽かったです、とユウキ君が呟いてくれたので少し心が軽くなる。
そういえばいつも一緒のハルカちゃんの姿が見当たらないな。
「ハルカちゃんは?」
「さっきまで居たんですけど、会長探してくるって飛び出して行きました」
「ま、また無謀な事を…!どうせ見つからないよ?」
「そう言ったんですけど聞かなくて……あ、ハルカからだ」
「へ?」
ブーブー、と鳴るバイブ音に気がついてユウキ君が携帯を取る。きっと会長は見つからなかったのだろう。
本来ならば保健室で携帯電話なんて使っちゃいけないけれども今は注意する気力なんて――
『会長が!りむ、リムジンじゃなくてヘリコプター!』
「「……へ?」」
「ハルカ、簡潔過ぎるからもっと丁寧に説明して」
会長がリムジンじゃなくてヘリコプター?揃って素っ頓狂な声を上げた私とミツル君を他所にユウキ君は苦笑である。
ハルカちゃんは恐らく息を切らしながら走っているのだろう。何故。という疑問は次の瞬間に吹き飛んだ。
『副会長が倒れたって言ったら!会長が!ヘリコプターで!学校にっ――』
「「「はあ!?」」」
三人揃って絶句。いやリムジンなら分かる。まだ車だもの。ヘリってやりすぎだ会長!
もしかして、と嫌な予感が背中を伝う。ババババババ、と外から響く音はやたらと近い。
ゆっくりと揃って校庭を振り向いた。グラウンドの中央に降り立とうとするヘリコプターに運動部が散り散りになっていくのが見えた。
そしてまだ着地もしていないヘリから飛び降りてきたのは紛れも無く会長だ。
遠目からでも分かる。会長は完全にお怒りのようだった。
「ねえ、これって嫌な夢…?」
「ごめんなさい、俺達逃げます!」
「え、ちょ!?待って私まだ―――」
「それじゃごめんなさい!」
「ミツル君!?ユウキくーんっ!?」
どうしよう、これ詰んでる。明らかに私だけ怒られるんじゃないですか
倒れたのは自業自得だよねとか真っ黒な笑顔でまた仕事増やされる!
最悪副会長はクビだろう。いやむしろその方が解放されるって意味では幸せで、
「ナマエ!」
「げっ!?会長いやこれはその、あの」
「どうしてこんな無茶を!?」
「………はい?」
「どうして倒れるまで仕事なんて!」
「かっ、会長のせいでしょうが!自分が仕事放棄しててあなた何言っ」
「別にそんなに急いで片付ける程の量じゃなかっただろう?」
「ぶっ飛ばしますよ!?」
思わず拳を握りしめて会長に突き出……そうとしたけれど、再び襲ってきた目眩にぐらりと体は傾いてしまう。
それを優しく会長の腕に抱きとめられて心臓がどくんと波打った。普段なら振り払うその腕を今日は振り払えない。
「ナマエ、これ」
「……………なんですか」
「ナマエにあげたくて」
耳元で囁かれて、手に握りらされたそれを見る前にぎゅう、ときついぐらいに抱きしめられた。
どういうつもりですか、と問いかけた私の声は多分震えてる。
緊張で心臓が爆発してしまいそうだった。想い人に抱きしめられて緊張しない人間なんていないはずだもの。
「ごめん、ボクのせいで」
「じゃあ……っ、ちゃんと仕事してくださいよ」
「そういうわけにもいかなかったんだ」
「……何でですか」
「初めて『アルバイト』っていうの、やったから」
「え!?」
会長がアルバイト!?衝撃の言葉に思わず口をぱくぱくと動かすけれども声が出ない。
あの?デボンコーポレーションの、ツワブキ財閥の御曹司が、バイト!?
「なっ、何のためにバイトなんて!?」
「決まってるだろう?自分で稼いだお金で君にこれをあげたかったんだもの」
ゆっくりと手を開く。可愛らしくローズクォーツがあしらわれた、ハート型のペンダント。
ローズクォーツの意味は確か"愛を育む"…だったような……え、つまり?
「やっと伝えられる。――ナマエ、君が好きだ」
―――だからもう、会長じゃなくて名前で呼んでよと彼は笑った。
愛を育む石を君に
(かいちょ……ダイゴ、さん)
(!何、ナマエ?)
(その、告白は凄く嬉しいですし私もダイゴさんが好き、ですけど)
(本当!?じゃあ付き合―――)
(それとこれとは話が別です!仕事は放置しないでください!)
(ダイゴさんの勝手な行動のせいですっごく迷惑したんですからね!?)
(そんな!?ナマエのために頑張ったのに!)
(まあその……お付き合いはお受けしますので)
(分かった今すぐ仕事してくる)
(2013/02/28)
ヘリコプターとかリムジンとか言ってるのはダイゴさんが御曹司だから妄想しました
それにしてもオチがひどい…