八万打企画/未来組来襲
※剣城視点
「こーんにーちはっ」
「…………へ?」
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手にしていたドリンクのボトルを落とし、自分にしては珍しいぐらいに素っ頓狂な声が口から零れた。「あらやだ、間抜けな声出しちゃって」「……は?」いや、普通にびびるだろ!「剣城ー、練習中なんだからそろそろ休憩止めて走り込みに戻……ベータ!?」俺を呼びにこちらに来た天馬の顔が驚きに染まるのをみて、"そいつ"はにこりと笑ってみせる。「あらあ、お久しぶりですねえ」目の前に立っているのは紛れも無く、エルドラドのプロトコルオメガのベータだ。どうしてここに、と口に出そうとした瞬間。
ベータが目の前から消えた。
「っきゃあああああああ可愛いいいいいいいいい何この子!天使!?天使なの!?ねえねえ剣城も天馬君もこの子知り合いなの!?ねえねえお名前は!?ふああああ柔らかいふあああ!いい匂いするー!女の子の香りするー!美少女!美少女だー!」
「や、ちょ、なんですか!?貴方、離しなさ、」
なんだ、先輩が興奮してベータを押し倒しただけか。「ちょっと、見てないで助けなさい!」「あー…ごめんねベータ、苗字先輩って少し…変わってるっていうか」「少し!?」天馬、名前さんが変わってるのは少しじゃないと思うんだが。初対面の同性を押し倒して匂いを嗅ぐか?ただの変態だぞあれ。あれが変態でないと思う人間は間違い無く変態だと思うんだがどうだろうか。
「っ、テメ、いい加減にし、ろっ!?」
「ふあー……お人形さんみたい……きれー……」
「恍惚とした表情で触るんじゃねェ!くそ、なんでこんな力…ッ!」
目の前ではうっとりとした表情の名前さんがベータの髪をいじっていた。片手は綺麗にお互いの指を絡ませて、空いている手で素晴らしく楽しそうに。ベータは完全にキレて第二の人格が見えているうえにすぐさまアテナを呼び出しそうなのだが、どうやら押さえ込まれているらしい。お互い顔は整っているのでそこにはめくるめくお花の世界が広がっていた。見てはいけないように感じるのが常だが、こう何度もあると流石に慣れてくる。
順応してしまった俺と天馬はその光景から目を逸らし、平和だねー、ああ平和だなー、と棒読みの会話を繰り広げた。隣からはベータの喚く声と名前さんの興奮気味な声。きゃん、と一際高い声が上がったが興味を示して振り向いてしまったら色々な意味でアウトだと思う。天馬は遠い目をしていた。遠い目をして、ちらりと俺を振り向いた。
「……剣城ってさ、」「言うなよ?絶対言うなよ?」気まずくなって天馬から目を逸らす。目の前ではようやく名前さんの興奮が収まったようで、服を抑えて息を整えるベータの姿があった。変わって名前さんはつやつやと頬を光らせている。何があったのかは聞きたくない。
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「最悪な目にあったっての!お前ら知ってたんだろ!?何でオレを一人で先に行かせた!?」
「………」
「面白そうな事になりそうだと思ってね、ついつい」
「ついつい、じゃねェよ!」
完全にキレてしまい一人称が"オレ"になったベータは先程、アルファとガンマが現れるまで名前さんと化身で戦っていた。半目を開けてぼんやりとそれを身守る俺たちギャラリーの目の前で、名前さんは心底楽しそうだったが、それが更にベータを煽ったらしい。繰り出される化身シュートと化身シュートと、それを受け止めるブロック技と……その光景は見ているにとても不安だったが器物破損は何も無かったので一安心だ。しかしアルファとガンマが現れなかったら大変な事になっていたに違いない。
「で、何されたのさベータ。君としたことがこんなに取り乱、」
「何されただとォ!?呑気な事抜かしてんじゃねえ!オレはっ、オレはっ!」
「………苗字名前、ベータに対する謝罪を要求する」
「ごめんねベータちゃん、ついつい興奮しちゃって」
「謝って済むなら警察は要らねえんだよ!」
まったくその通りである。出会い頭にセクハラまがいの事をされればそりゃ誰だって怒る。しかし…「ご、ごめんね…?」「………ッ」先輩には顔という最終兵器が残っていたようだ。気まずそうに、しかし笑顔で微笑みつつ謝罪の言葉にはきちんと反省を感じさせる声色も含んでいる。ちゃっかり目も潤ませて。これが無自覚だとしたらそうとうタチが悪い。自覚があるのなら、なおタチが悪い。この人は一体何を目指しているんだろうと考えると、自然と目が細まるのが分かった。ぽん、と肩に手が置かれるのが分かる。「何も言うな、剣城」「倉間先輩…」倉間先輩の目は既に何かを悟っている目だった。
ちっ、と誰かが舌打ちをした音が聞こえて振り返る。「……今回だけですよ」ベータだった。何故だろう、やるせない気持ちになるのは。「ほ、ほんと!?」「今回きりですからね!」ベータの頬が少し赤いのはアレか、先輩の謝罪に庇護欲をかきたてられたのか…!そんな様子を何度も頷き微笑みながら身守るガンマ、呆れているアルファと神童先輩、苦笑いをする天馬の姿。「やったよ剣城!ベータちゃん許してくれた!」「よ、良かったですね?」「何で疑問形なの」「………や、まあ、ハイ」確信犯ではないことを祈るばかりだが、とりあえずベータの怒りは収まったらしい。そこでようやく天馬が口を開いた。
「ねえ、三人は何しに来たの?」
今更!?
(凄いプレイヤーがいると聞いて遊びに来ましたの)
(……この女でしょう?)
(この女!?お願い名前って呼んで!)
(嫌です!)
(そこをなんとか!……ね?)
(…………………名前)
(ベータちゃん結婚しよう!)
(アナタの後ろの人が凄い顔してますから遠慮しますわ)
(2013/07/25)
遅くなってしまって本当にごめんなさい…!
八万打企画より優様のリクエストで、ベータちゃんメインで番外書かせて頂きました。
久しぶりに夢主が変態らしかったです。すごく楽しかったです。
凄い顔してたのは勿論…ということで、最後はベータちゃんのデレでした。
企画へのご参加、ありがとうございました!