なれるはずもなく
※滝(兄)視点

最初の印象は『綺麗』だった。さらさらとよく動く髪が活発な印象を与えた。
背も高く、とくにまあ……男ならばその胸の膨らみに目が行くのはしょうがないだろう。うん。

――――まあ、第一印象は、これだったのだが。


「あ、おはよう!目が覚めて良かったよー!」
「…………うわあああ!?え、あ、え」

にいっ、と思いっきり白い歯を見せつけて笑う苗字と名乗った女は膝の上に乗せていた貴志部の顔を覗き込んでいる。
当然貴志部は相当混乱しているらしい。……まあ、あんな発言されて気を失ったんだからしょうがないだろう。元凶が自分を膝枕してるんだし。
(最初だけ)多少羨ましいと思わない事もなかったのだが今は自分が貴志部じゃなくて本気で良かったと思う。あの女は変態だ。


「ああああああの!?かんと、監督はっ!」
「ちょっ、暴れっ、うわふぐぇいっつう!?」
「へ!?あ、あああ!?だ、大丈夫か……ですか!?」
「先輩!貴志部さんちょっと失礼します」


ごん!と痛そうな大きな音が響いて苗字が顎を抑える。勢いよく起き上がった貴志部の頭が顎に衝突したらしい。むちゃくちゃ痛そうである。
あわあわと慌てる貴志部を頼りにならないと判断したらしい剣城が二人に駆け寄った。手馴れた仕草で二人を抱き起こす。


「兄さん、行かないの?」
「お前こそ」


ちらりと目線を下に向けると快彦と目が合った。すぐに目線を正面に戻して返事を返す。いくら可愛かろうが変態はごめんだ。もう一度言おう。変態はノーセンキュー。傍観で結構だ。
しかしあの膨らみを押し付けられた弟が若干羨ましくないことはない。男って悲しい生き物だよな………


「ふーん?総介はちょっぴり名前が気になるようだね?」
「うわっ監督!?いつからそこに!」
「まあ見た目は僕の中学の頃にも引けを取らないぐらいだけれど」
「話聞いてください、俺は別に」
「ほら、もたもたしてると貴志部と名前にフラグが!」
「フラグって言わないでくれ!」


何でこの人超楽しそうなんだよ!すっげえイイ笑顔じゃねえか!何でだ!
大体俺は変態女になんか興味無いし。――――無いし!
なんとなく監督と目を合わせられなくなって貴志部の様子を伺う。……え?


「そ、その……悪かった。いきなり」
「いや誤解されるような発言をした私が悪かったんだよ」
「気にしないでください、先輩はこういうキャラなんで」
「キャラって言わないでくださる剣城君」


…………。


「ねえ兄さん、キャプテンの顔赤くない?気のせい?」
「気のせいじゃないか」
「……貴志部はああいうストレートな言葉に弱いんだろうね?やっぱり男の子だねえ」


にやにやと笑う監督の笑顔が何だか憎い。いや別に貴志部が羨ましくとかねえし
別に女子に興味とかねえし?か、顔が良くても俺は別に……別に……ああ何なんだ俺は!
頭を抱えて思わず唸る。何故か顔が熱い。何だこれ。なんだこれ。ナンダコレ


「どしたの総介君」
「うわあああああ!?」
「……へ?わ、私の顔になにか変な生き物でも……?」
「ついてないですから安心してください」



傍観者にはなれるはずもなく

(あれ?じゃあ総介君じゃなかったっけ?)
(いや合ってる!合ってるから寄るな触るな近づくな!)
(あ、総介君じゃだめだった?……というかこれは嫌われてる……!?)

(顔が赤いから照れ隠しなんだろうな、兄さん)
(……物好きが増えた!?)


(2013/03/28)

まさかのフラグ建設でした。滝兄弟が好きなんです。貴志部君も好きです。木戸川ウオオ
あ、前回のあとがきの補足ですが美少女じゃないとあんな事言われて赤面しないという意味です。
多分普通レベルなら化身が飛び出てるんじゃないかと思いますまじで。ボッコボコですよ
美少女なら許される!それがやりたかっただけのために私は夢主を美少女に…!←