元:神
※剣城視点
「おや、君たちも資料提出かい?」
「木戸川清修の……こんにちは」
「―――――!」
万能坂の三人と別れ、ロビーに入ると見覚えのある整った顔立ちが目に入る。木戸川清修の亜風炉監督だ。
なんというか、先輩が硬直した。美人だからだろう。荷物全部床に落としましたよ先輩。
それに気づかず優美に微笑んでソファーから立ち上がり、こちらに歩いてくる亜風炉監督。何でスルーなんですか。
荷物を持っていないという事は木戸川メンバーの付き添いだろうか。あ、先輩の硬直が溶けた
「剣城誰この女神みたいな超絶美人さん」
「木戸川清しゅ「アフロディだ。君は?」
「苗字名前と言います!……名前まで女神……!それに美人……!」
「フフ、君はなかなかに見所があるみたいだね」
「そんな事……えへへ」
俺の言葉を遮り先輩の手を取る亜風炉監督。照れつつも握り返す先輩。展開されたのはピンクワールド。
―――……なんだこれ
何やら意思の疎通を開始した二人についていけなくなり呆然とする。何あの雰囲気。
「僕の美しさに気がつくなんて、良い目をしているね」
「そんな事…!こんなに綺麗な人、初めて見ました私……」
「ふふ、君も可愛らしいよ?名前……」
「や、やだそんな!本当にアフロディーテみたいに美しいです、アフロディさん……」
「………………」
俺じゃなくても無言になると思う。何だこの空気。何だこの空気!大事な事だから二回言いました!
先輩が褒め、褒められた事に対して亜風炉監督が褒め……のエンドレス。この空気どっかで見た事あるぞ、未来とか(主にラグナロクの二回戦)
先輩も顔は整っているから正直違和感が無い。そのまま手を取り合って情熱のラヴァーズでも出せそうな雰囲気だ。
―――急に自分の身に強烈な場違い感が襲いかかる。えーと、俺は一体何しに来たんだっけ?
「監督―っ!資料提出終わりましたよ―!」
「こら快彦、走っちゃいけないだろ!」
「放っとけ……って何だあの女」
現実逃避へと直行しそうになった意識が現実に引き戻される。声のした方を振り向くと木戸川清修の貴志部と滝兄弟が視界に入る。
笑顔の滝弟がこちらに走ってくるのが見えた。滝弟に重なるのは西園のシルエット。―――これは、先輩を現実に引き戻せる!
ぱたぱたと音を立てて亜風炉監督に走り寄ろうとする滝弟の前に立ちふさがる。滝弟が剣城くん?と呟いたのが聞こえた。記憶にあるのなら有難い。
「悪い、少し協力してくれ」
「へ?……うわわわわ!?」
ひょい、と滝弟を抱き上げる。状況を掴めていないのだろう、戸惑いの声は全力で無視。
とりあえず俺はさっさと先輩を連れて雷門に帰らなければいけないのだ。くそ、なんで俺はあの時パーを出したんだろうか
握り拳を突き出しておけば霧野先輩に負けなかったのに、と今更後悔しても遅いのだが。
「先輩、こっち向いてください!」
「……へ?つる「うわあああああ!?」わああああ!?」
俺の声に反応した先輩の腕の中に向かって滝弟を投げる。とっさの判断で受け止める先輩。当然亜風炉監督と繋いでいた手も離れる。よし。
豊かなクッションもあってか綺麗に先輩の胸元に着地した滝弟は無傷らしい。何より。
変態と元:神
(ちょ、剣城何この子可愛いいいいいい!)
(うわああああ!?え、兄さあああああん!助けて!?)
(……ごめん俺ついていけねえ)
(お、俺もだ……)
(先輩が誰かと手を繋いでるのが、嫌なのは何故ですか)
(2013/03/17)
是非とも大人アフロディとこんな風に絡ませたかったばっかりにこんな事になった 反省はしている
最後の( )の剣城が苦しい……うっ、これはラブコメで……す……ガクッ