サッカー協会の前で大騒ぎ
「やー、流石にちょっと重かったけどなんとかなったね?」
「………やっぱオカシイ」
「同じ二年なのにだらしないなあ、光良は」
「馴れ馴れしく呼び捨てすんなよな!……まあ、感謝してないわけじゃないけどォ」
「えっ何、ツンデレなの?狙ってるの?光良萌えなの?私には蘭丸萌えが……ちょっとどうしよう磯崎君!」
「その持ち上げた荷物をどうする気だ!おろせ!頼むから!」
「別にもう投げたりしないよ?流石に痛そうだし」
言われた通りに荷物をおろす。流石に重かったけど、これぐらいまでなら大丈夫だ。
まさかあのタイヤ特訓が役に立つなんて思わなかったなあ……
トラックのタイヤを背中に括りつけて全力で走ったあの日。今思い返すと酷い特訓だったなあ……
空を見上げて嫌な思い出を振り返っていると、とんとん、と肩を叩く誰かの手。
振り返ると剣城が呆れ顔だった。すまん、私が悪かった。思いを馳せるのは後にしようじゃないか。
「先輩、早く終わらせてさっさと帰りましょう」
「私の調べ物を忘れないでおくれよ剣城」
「へー、苗字は何か調べに来たのォ?ぶっちゃけ似合わねえ!」
「光良が私の事を呼び捨てに!これはもうデレ――ってうるさいわ!これでも勉強は出来る方だよ!英語だけに限るけど!」
万能坂の三人に荷物を返却する。光良には投げつけておく。
まったく失礼な!持てないとかダダこねるから光良の分は結局全部持ってやったというのに。
いや、これは不可抗力だ。甘やかすなと磯崎君に咎められたけど男の娘だったからつい……!
「………あり、がとう」
「ごめん磯崎君のがどストライクだった!抱きしめていい?」
荷物を受け取りながらうっすら頬を赤く染め、目を逸らしながら礼を言う磯崎君に心が震える。やだこの子可愛すぎる
思わず鼻を抑える。というか若干出たわごめん。磯崎君ちょい引いてるな!でもそんな引きつった顔も可愛いな!
とりあえずこの可愛い生物を抱きしめたいので腕を広げて迫る。無駄な抵抗はやめろ!
追い詰められた獲物の如く、きょろきょろと周囲を見渡す磯崎君も可愛いな!あ、剣城をロックオンしたな?
「剣城!お前のとこの先輩だろ!なんとかしろ!」
「………先輩流石に自重してください、雷門の中でなら俺は何も言わないんで」
「言わねえのかよ!」
「『剣城 は あきらめた!▼』」
「諦めんなよ!」
どこぞで聞いた事のあるセリフを叫ぶ磯崎君。……ちょっと熱くなれそうだ。
「微妙に嫌だなそれ。ああ、助か……りました、ありがとう」
「敬語なんていらないぜ篠山君!いやまあ磯崎君みたいに可愛いこと言ってると食べちゃいたくなるんだけどね?」
「俺は磯崎を食べてもらっても構わないんで」
「篠山てめェェェ!裏切ったな!」
「あははははっ!苗字、手加減してやれよなァ?」
「抱きしめる時までこんな本気出すわけないでしょーが!ほら怖くないよ磯崎君」
「怖えっての!ほらこんな入口で騒いでたら迷惑だろーがっ!それに時間!時間ねえぞ!」
「………ちぇー」
まあ確かに迷惑そうにこっちを見るガードマンさんの生ぬるい視線は多少痛い。時間が無いのも確かなので一旦は諦める事にする。
変態はサッカー協会の前で大騒ぎ
(そういや調べ物って?)
(うん、フィフスセクターって組織の事知りたいなーって)
(あんま覚えてないし)
(……なあ剣城)
(俺達が元シードだって事は知らないぞ、あの人)
(いやそうじゃなくて、今更!?)
(ああいう人だ)
(おい目が死んでるぞ)
(2013/03/04)
万能坂との絡みはこの辺で一旦終了。帰りは剣城とデート(?)かな?