フィフスセクターが気になる
雷門に戻ってきて数週間。今まで日本は大変だったらしい。
何やら面倒でよく分からなかった『フィフスセクター』とやらが解散したのだとか。
個人的苦手としていた校長先生やら副校長先生はどこかに行ってしまい、雷門はとても活気に満ちていた。
こうなると、どんな組織だったのか逆に気になってくる。
雷門に居た頃は勝敗指示だのなんだの面倒な組織だったから余り考えないようにしていたけど、いざ居なくなると同時に湧き上がる好奇心。
とりあえず身近な人に聞くという選択肢はあまり無い。
そこまで深く突っ込んで知りたくはないし、どんな組織だったのかなーを調べる程度ならば資料を読めば分かるだろう。
「と言うわけで、その……全国サッカー協会?の本部ってどこにあるの?」
「『と言うわけ』ってどういう意味だ」
「えっとねー、フィフステクターの事調べようと思って」
「フィフスセクターな」
「サッカーを支配って具体的に何してたのかなーって思ってさ」
はあ、と呆れたように溜め息を吐いた倉間の髪の毛をくるくるといじる。猫っ毛な倉間の毛は触っていて心地良い。
本人は表面上は嫌がっているけれどもそんなに嫌じゃないはずだ。空いた片手で肩揉んでやってるんだからな!
マネージャーの仕事は選手が全力を出せるようにすること。ならばと習得したマッサージは割と好評だ。
多分出来るのが私じゃなければもっと好評だっただろう。……いや辞めよう、考えたら負けだ。
「フィフスセクターの事ぐらい、俺らに聞けばいいじゃん」
「んー、基本的な事は自分で調べて、それから聞きたいかな」
「お前雷門で見てただろ…」
「関わりたくなかったし、イタリアのサッカーが楽しくてあんま覚えてない」
「ああうんごめん、お前に記憶力を期待した俺がバカだっ――あつ゛ッ!?」
「ん?何か言ったかね倉間君?」
「何も!」
痛みのツボを押してやれば全力で顔を背ける倉間。バカとか言うな、しかし言い返せん
「サッカー協会なあ……何て説明すりゃいいかな」
「なんだ倉間も知らないのか」
「バッ、知ってるっての!でも割と説明しにくいんだよ、道順が面倒で」
「地図とか分かり易いのない?」
「……神童!おい助けろ!今日の苗字変だぞ!?白い!物腰柔らかい!おかしい!俺を罵倒しねえ!」
「え、役立たずとか罵って欲しかったの!?」
「お前が俺を馬鹿にしねえとか雨でも降りそうで心配になるんだよ!」
「今日は爽やか過ぎる晴天だよ馬鹿野郎!」
「―――っ!やめろギブギブ!分かったから!俺が悪かったって!」
倉間の降参の声を謝罪を聞き入れて、渋々締め上げていた腕を解放する。
……ったく、失礼な事この上ないよな倉間も!とりあえず場所は神童に聞くとして――
って何で神童まで目を逸らすの?え、何で倉間俯いてるの?私何かした?
「よく分からないが、倉間をいじめるのはやめてやってくれよ名前」
「いじめてないよ!」
サッカー協会の場所聞いてただけ、と神童に言うと神童の目がきらりと光った。え、何?
「名前、お前サッカー協会に行きたいんだな?」
「え、まあ……ちょっと調べ物したいんだけど」
「丁度良い!協会の方に資料を出しに行かなきゃいけないんだが、人手が足りなかったんだ」
「………嫌な予感がするな」
「今から全員でじゃんけんするつもりだったんだが、枠が減るな!」
「え、つまり肉体労働?めんどく――」
「名前なら力もあるし安心だ!じゃあこれで一人決定だ!頼むぞ!」
「…………い、いえっさー」
神童はこういう時だけ強引だとしみじみ思う。そして何の因果かじゃんけんに全敗北したのは剣城だった。一年生に任せていいのか
変態、フィフスセクターが気になる
(剣城とはあんまり話せてないからいい機会、かな?)
(2013/02/27)