大切なただの幼なじみ


『ねえ、ナマエ』
『なあに、レッド?』
『……約束して』
『へ?』
『"俺に嘘はつかない"、"俺に隠し事しない"、――"俺とずっと一緒にいる"』
『いきなりどうしたの?』
『いいから、約束して』
『んー、よくわかんないけど』

『約束なんかしなくても、レッドとはずっと一緒にいるよ!だって、』


**


「久しぶり、レッド」
「……え、何しに来たの?」
「うわ酷い!ほらグリーンに食料頼んでたでしょ?」


グリーン忙しいみたいだから代わりに持ってきた、と手に下げた袋を掲げて見せる。
これだけ?と訝しんで来るレッドに自分の背後を指す。
相棒のサーナイトが他の袋を念力で浮かせて優雅に歩いてくるのが見えた。


「ところでむちゃくちゃ寒いんだけどずっとこんなとこに居るの!?」
「うん」
「うん、じゃない!確かに強い野生ポケモンが多いし修行には良いんだろうけど……!」


――――帰っておいでよ、と。
……言おうとして飲み込んだ。絶対に聞かないし困った顔で追い返されるだけだろう。
自分の口が何かを言う前に、はぁ、と溜め息を吐いて袋を地面に下ろした。これでも重いのだ。


「……あ」
「重かった?ごめん、ありがと。ほらこっち」
「え、ちょ、待ってよ!」


私が地面に下ろした袋をいともたやすく片手で持ち上げて、もう片方の手で私の腕を掴んで歩き出すレッド。
強引に腕を引かれたから、雪に足を取られて転びかけるも体勢が持ち直した。あれ?今絶対に雪に顔突っ込むと思ったのに。
腕を引かれながら不思議に思って周囲を見渡し、後ろを振り返るとサーナイトが片目をぱちりと瞬かせた。なんて出来る子


**


「わ、あったかい……!」
「寝たりするのは流石に外じゃ無理だからね」


はい、と差し出されたマグカップを素直に受け取り口をつける。ミルクも砂糖も入っていないコーヒーにレッドらしさを少し感じた。
案内されて通されたのは、それなりに綺麗な洞窟だった。
生活し慣れているのだろう。整理整頓された必要最低限の道具とポケモンたち用の道具が目に入る。

――でも、それはここにずっと居るという事で。


「ねぇ、レッド」
「何」
「……レッドのお母さんも、グリーンも、オーキド博士も」


心配してるよ、と小さく呟いたら頭にぽんっと手を置かれた。


「知ってる。……でも、まだ帰れない」
「うん、言うと思った」


やはりレッドはそうなのだ。今、シロガネ山の下では自分がどう呼ばれているかなんてきっと知りもしないのだろう。
レッドにはレッドの、目指すべきものが見えているみたいだった。
それぐらいはちゃんと理解出来る。無表情に見えるレッドの顔が少し動いた。
何年の付き合いになると思っているんだ、驚くのはやめてよまったく。


「時々は降りてきて、お母さんに元気な顔見せなさい」
「……分かってるって」
「後オーキド博士とかにもね?リーフちゃんも心配してて」
「ナマエ、グリーンと同じようなこと言ってる」

「心配するのは当たり前じゃない。だってレッドは」


私の大事な幼馴染でしょう?