首輪も枷も必要ない(漆原/咲夜様)



「ちょっともー……勘弁してよ……」
「たまには良いだろたまには。お前の分の割引券を貰ってきただけ感謝しろ俺に」
「僕は家でネットしてればそれで…ううう、暑い」
「お前はそんなんだからダメなんだよ」


はあ、と大きな溜め息を吐いた真奥に、溜め息を吐きたいのはこっちだと返すとばしりと頭をはたかれた。「外に出ねェ方が体に悪い」「あのねえ、」「少なくとも今のお前、人間だからな?」猫アレルギーの件しかり熱中症の件しかり、と真奥に言われて思わず黙り込む。


「そもそも、本気で嫌ならここまで来ないだろお前は」
「……まあ」
「名前ちゃんの水着だからってやらしい目で見んじゃねえぞ」
「やらしい目的以外になんでこんなとこ来なきゃいけな、痛っ!?」
「堂々とするな!」


今度は別方向から頭に衝撃。真奥とは違い容赦の無いその一撃に振り返るとベルが立っていた。真奥さーん!と明るい声を上げて走ってきているのは佐々木千穂。ちょっと千穂ちゃん!と焦っているのはエミリア。あれ、名前は?――目を凝らすとエミリアの後ろにお目当ての人物の姿があった。「…うわ、やばいかも」「お前はなあ…」呆れたような芦屋の声も耳に届かない。だって、ちょっと、予想以上なんだけどあれ。


「あ、漆原くん!…これ、どうかな」


ぱたぱたぱた、と裸足で駆け寄ってきて微かに赤く染めた頬を、名前は僕だけに向けている。正直、佐々木千穂もエミリアもベルも目に入らない。視界の全てを奪うのは名前だった。本当にもう、……今すぐ襲ってやりたくなるけど真奥の目が現在進行形で怖いから少し自重しよう。

名前のスタイルはシンプルなビキニだった。流石に胸のサイズは佐々木千穂には劣るけれども、それでもエミリアやベルとは格が違っ……寒気がしたからこれ以上言うのはやめよう。とにかく、名前は滅茶苦茶可愛いのである。羽織ったパーカーから覗く胸の谷間も周囲を視線を引きつけてやまない。ああもう、見ないでよ僕の名前なんだから!「う、漆原くん…?」何を言わない僕に不安気な顔をする名前。見入ってたとは流石に恥ずかしいから言ってやらないけど、これぐらいはしても良いかな。


「名前、こっち」
「へ、何――」


立ち上がって名前の腕を掴む。驚いたような顔の彼女の耳元に口を寄せて、吐息混じりに囁いてやる。「流石にちょっと可愛過ぎ、かな」瞬間、ぼん!と音が出るかのように顔を真っ赤にさせる名前は本当に愛らしい。「こ、ここんな、とこで!?」「へえ、何を期待したの?」「ななな何も期待なんか…!」ああもう、往生際が悪いなあ。そうやって抵抗するのが更に煽るっていうのに本当、わざとやっているんだか。


「真奥ー、佐々木千穂ー、名前借りるねー」
「………ほどほどにしとけよー」
「え、ま、真奥さんっ!?良いんですか!?」
「ちょっと真奥!名前ちゃんとルシフェルは一体!?ねえ!?」
「おま、ちーちゃんまで!うわ、やめ!?」
「察せ!察するんだエミリア!大丈夫ですか魔王様!」


混乱に陥った佐々木千穂とエミリアが真奥に襲いかかって胸ぐらを掴みあげているけど、多分芦屋とベルがなんとかするだろうから名前ににこりと笑顔を向けてみる。「っ、う、漆原、くん…」「脱がしやすいから楽だね?」さ、どこで美味しく頂いてあげようか。とりあえず、僕のものって証拠を付けとかないと安心して放り出せないんだもの。



首輪も枷も必要ない

(たったひとつ、印があれば)

(2013/11/01)

十万打より咲夜様に捧げさせて頂きます。遅くなりまして大変申し訳ありませんでした;
もうベッタベタなネタの上に、リクエストを頂いた時期だからこそのプールというネタだったのにもう冬突入目の前…本当に申し訳ない気持ちでいっぱいですが、水着ネタは好物中の好物です。ベタと言われそうですが、書いてみたかった!
少しだけ補足を。夢主は人間で、ちーちゃんの同級生。マッグでバイトしてて真奥さんとも交流のある女子高生という設定です。真奥さんには多分、ちーちゃんみたいな感じで可愛がられてると思います。

企画参加本当にありがとうございました!
(※本人様以外のお持ち帰りはご遠慮くださいませ)