期待なんてどこかに捨ててこい(3主/ゆすら様へ)
(3主名:アベル)


合成釜があるのならそりゃもちろん合成をするだろう。適当な材料を放り込んでも何かを精製してくれる、この釜は本当に万能だと思う。――喋るけど。「お嬢様、何か?」「んーん、何でもないよー」カマエルの中にぽいぽいと、先程魔物から頂戴してきたアイテムを放り込んでみるとどうやら何か出来上がるらしい。あら楽しみだこと。

もしゃもしゃもしゃ、と煙を吹き出しカマエルは何かを完成させた。「……へえ!」うん、普段は中々にチャレンジしない類の装飾品。可愛いし、うん、あんまり抵抗無いかも。「ありがとカマエル!」「いえいえ、これしき」得意気(に見える)カマエルを撫でて、早速とばかりに出来上がったそれを着るべくいそいそとカウンターの裏に回った。


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※アベル視点


「―――っていうモノローグで期待させといてそれ!?」
「やだアベル、人の思考覗き込んだの?変態なの?」


似合う?と振り返った名前に呆然とする。いや、違う。えっお約束でしょ?合成レシピで適当に放り込んだらエロいのとか、萌え系とか、セクシー系とか、露出……とりあえず可愛いのを着るのがヒロインの鉄則じゃないの!?「え、可愛いじゃん」「か、かわいい!?」いや確かに可愛いのかもしれない。でもこれは似合うと言っていいのか悪いのか。


「名前、何でねこみみバンドじゃなくてスライムの服作っちゃったの…?」
「ねこみみバンドってあれ、固くて長時間付けてらんない」
「リアルな話なんていらない!ねこみみこそロマンでしょ!?なんでスライム!?」
「スライム可愛いじゃん」
「……かっ、かわいい、の…?」
「可愛いったら可愛いの」


ねえカマエル、と錬金釜に呼びかける名前の今の状態は、さながら巨大なスライムタワー。ちなみにフルフェイスだから目しか見えない。巨大なスライムタワーから名前の美脚が生えているのは違和感としか言い様がないですはい。装備が女王様のムチなのも頂けない。ええ、想像しましたとも。わくわくしながら扉を開きましたとも。猫耳かなそれとも踊り子の服かな、なんて想像しながら部屋に入りましたとも。


「信じらんないんだけど!」
「え、何が?」
「こういう時ぐらい露出高い服着てくれる!?ただでさえ普段から装甲でがっちがちなのに!」
「鎧は防御の要でしょ!アベル達が軽装過ぎるの」
「そうだけど!そうだけど!でも名前男のロマンを壊すのはどうかと思うんだ!」
「…え、何で泣きそうなのアベル……伝説のロトの勇者が情けない」
「情けなくない!ねえネコミミ付けようネコミミ」
「アベルってこないだウサギ耳は正義!とか言ってなかったっけ。ロトの剣振りかざしながら」
「名前にはねこみみ!」


情けなくても多いに結構。いや、だって、お約束ならここでねこみみバンドの名前に欲情した僕が名前を押し倒してコスプレしちゃってる名前は抵抗出来なくてそのままゴートゥーベッドじゃん!スライムタワー押し倒したって興奮しないよ!「伝説のロトの勇者だってお約束に憧れるんです」「えー、猫耳とか防御低いのに」「それがいいんだろ!普段フルフェイスな名前が軽装だから興奮するんだって!」「うわ変態」真顔で言い切らないでくれる!?

普段から競争率が高い名前だからこそ名前のねこみみ姿は貴重で、それにこじつけ名前のハジメテを頂いてしまうことも計画のうちだったのに…!如何せん名前の感覚がズレてることが悪かったのかそうなのか。スライムタワー姿の名前はこの服結構防御力ありそう、なんて呟いているからもう頭を抱えてしまった。


「僕のねこみみ名前……」
「私のねこみみとか需要無いってば」
「スライム服のがもっと需要無いと思うよ」
「えっスライムの服は需要あるでしょうが!」
「………もういいや……」


なんか、色々求めた僕が悪かったみたいです。




期待なんてどこかに捨ててこい


(2013/10/29)

十万打よりゆすら様に捧げさせて頂きます。お待たせして大変申し訳ありませんでした…!

ギャグとのことだったんですが、正直、自分で書いててなんか、3主単体書くの初めてだ!って思い返して、というわけで初めてなので色々酷いです。多分ギャグじゃない。正直な話私がスライムとねこみみバンドの話を書きたかったがためにこうなった部分があります。本当に申し訳ありませんでした…!
3主名はもうお好きに変更してくださればと思います。以下ねこみみバンドのおまけです。
(※本人様以外のお持ち帰りはご遠慮くださいませ)



・もし付けてたのがねこみみバンドだったら


「っな、ななな、なっ…!?」
「おーアベル!見てこれ、似合う?」


若干痛いんだけどね、と言いつつ頭に生えた耳、真っ黒でふわふわな可愛らしい耳を指差しはにかむ名前の破壊力は物凄かった。普段フルフェイスの兜で体中を強固な鎧で塗り固めているもんだから、兜を脱いだだけでもどきりと高鳴る心臓はとうてい普段通りを保てなかった。鮮血が飛び散り、意識が遠のいていく。あ、これ、鼻血かあ…