素敵なサプライズ
今日名前の誕生日だろ。
いつも登下校をしていて今日もわたしの家の前で待っていてくれていた京介の第一声はそれだった。
おはようでも、支度するのが遅いでもなく単刀直入に。
そう、京介が言ったとおり今日はわたしの誕生日なのだけど...。
京介の第一声が唐突過ぎて目を見開いてしまうわたし。
彼、今なんとおっしゃいました?
「京介もう一回」
「何度も言わせるな」
同じ言葉を聞くこともなくどこから取り出したのか、頬をふたつの箱にサンドイッチされる。
「さっさと選べ」
******
箱を開けると今時の女子中学生がスクールバッグにつけていそうな大きなくまのぬいぐるみと星形のヘアピンが包装されてあった。
くまのぬいぐるみは以前京介と大手デパートで部の買い出しに行ったときに偶然見つけて一目惚れした物で、星形のヘアピンは、もともとわたしは星が大好きで....。
何気なく言った言葉を京介はちゃんと覚えていてくれたんだ....!
めんどくさくてプライドが高くて大人ぶっている京介だけど優しいところもあるんだな。うんうん!
ぎゅうっとプレゼントを胸に抱きしめる。
「これ..わたしが墓場に行くまで肌身離さず持っています!」
「そんなもんパチンコ屋の景品にもならねえよ」
「いやいや十分嬉しいよ!」
「それを買ってやったのはなんて言うんだその、ちょっとそういう気分になっただけだからな」
京介って誰かのために真剣になる素振りをあまり見せないから新鮮に感じる。
素敵なサプライズが嬉しくて、プレゼント片手に抱きつこうとすると止めろと利き腕ではない方の手で制された。
空気読めよKY。
....なんて言ったら怒られるから言わない。
『誕生日おめでとう』
カードの中心に一言。
たったそれだけの言葉でもグッときた。
「これで悔いなく死ねる!」
「それはよかったな」
京介は失笑してわたしを抱きしめてきた。
「京介?」
「煩い」
目をぱちくりさせた。
京介がわたしを抱きしめるなんて明日は雪が降るのではないか。
関係ないけど、こうして抱きしめられると一番京介が近くにいることが感じられるから好きだったりする。
こんなに幸せな気分は久しぶり。このまま時間が止まってくれればいいのに。
そう思っていたとき、「あ」と間抜けな声が耳元でした。
「学校、今行っても遅刻だしサボるか」
「あ」
....忘れてた。
素敵なサプライズ
(わたしが総理大臣になったら)
(君の誕生日の日を祝日にしてあげよう)
(有難い話だが非現実的すぎる)
(2011/09/14)