今日もまた君の心臓を持て余している


(・皆帆君)


いい加減腹立たしく感じてしまう。大体、彼が人間観察を得意として好んでいるのを知っているが(どうやら親譲りらしい)じっと見られて、私の分析をされてしまえば嫌に成ってきてしまう。大体デートしているときもじっと知らない女の人を分析して「あの人はきっと、これから彼氏とデートだね、服装が清楚だけど、髪の毛なんかは巻いていてちょっとしたところでおしゃれを取り入れている」なんていうのだからこちらも無言に成ってしまい「……」面白くないわけです。別に嫉妬とか言うわけではない。



何故ならば、彼の場合は人間観察さえ済んでしまえばどんなに可憐で愛らしい女性であってもこちらに視線が戻ってくるからだ。というか、奴の場合男でも果ては動物ですらも分析するので、そういうやましい物ではないとすぐにわかるから。「君は少し、今怒っているんじゃないかい?僕が他の女性に目を向けたから、高確率で不機嫌なはずだ。その証拠に今君は少しだけ眉間に皺が寄っている」ほらほら、皺に成っちゃうよと言ってせっせと伸ばすがまた元に戻る。あららと肩をすくめて私を見るので私がワントーン落として言う。「そっちの意味では怒っていない。だって、皆帆は浮ついた気持ちで見ているわけじゃないから」「可笑しいな、怒っているのは当たっているよね?君はすぐに顔に出る、それと、怒ると僕を名前ではなく名字、つまり“皆帆”と呼ぶ、違うかい?」



一々癪に障るような言い方をするな、とイラついているときには思ってしまう。「怒っているのはあたりかもね、でもさ、今は一緒にデートしているはずだよね、分析とかは何も今、しなくてもいいじゃない。私と居るのは楽しくないって言うの?」「そ、そんなことはないけど」口元に手をやってああ、失敗したと言わんばかりに猫とか狐を思わせるような瞳を細めてしまった。その顔に弱いと知っていてやっている確信犯だとしたら、私はとんでもない奴と付き合っているという事に成ってしまう。そもそも、無理があったのかもしれない、彼に他の子や人を見ないでほしいなんて言うことは、きっとそうだ。自然体の彼を封じてしまっているという事に成るのだから、我ながら悪女だと思う。



「でも、僕は最終的に君を見ていると思うよ」「何を急に」他人の分析は出来ても彼は自分の分析をやや怠る傾向にあるのに急に自分のことを語りだしてくるものだから、まともに食らってしまった。ああ、強烈な右ストレートだこと、勿論これはもののたとえである。彼は、格闘技とかを嗜んでいたわけではないし、スポーツですらこの間日本代表に何故か選ばれただけでそれ以前はやっていなかったのを私は知っている。そもそも、奴は元々あまりスポーツなどに興味を示していなかった。体力面や心配な面の方が多すぎるのだ。だから、無理はするなとは言っておいてある。頼んでいた、ジュースの氷の山が崩れて液体に成りだす。コップの外側は汗をかいて水滴が落ちている。



「……君の分析はたまに何故か外れるし、とっても興味深いんだ。さっきも怒っているのは当てたのに僕は嫉妬と読んだ」「まあ、当たらずと言えども遠からず」さっきは嫉妬ではないと言い切ったけど不機嫌だった理由の半分くらいは恐らく私の醜い嫉妬だろうし、呆れもあるだろうし、平易ではなくて、一口に言い表すことはとても困難を極めた。だから、必ずしも和人のいう事ははずれではない。「……、君はとても興味深いなぁ、興味が尽きないよ」「それってどうなの」「いいことさ、名前のことをもっともっと知りたくなるよ」いいことだよって言われたけどとてもじゃないけど、いいことの様には聞こえなかった。もう殆ど水に成っているジュースに備え付けられていたストローに口をつけて小さな泡を浮かべた。



だけども、自然と頬に色が灯るのがわかった。「今、名前、僕らしくないと思って照れたでしょう、そういうところはとってもわかりやすいよ、君はさ口元は引き締めてあるのに、目元に感情が籠ってしまっている、ほら、今も目が笑っているよ」僕はその表情が一番好きなんだ、僕が君に惚れた理由の一つでもあるからねって彼もにっこりと目を嬉しそうに細めた。ああ、くそ、今回は大当たりだ、今度からは口元だけではなくて、目元にも注意しないとなーなんて思う。







あとがき

星乃様、いつもサイトでお世話に成っています、有難うございます。皆帆君、指定が無かったので伸び伸びと書いてみました、イナギャラっこ出した事無かったので楽しかったです、が、偽物感否めませんね。口調が難しいですね、相手を納得させるような感じが出せませんでした。企画参加有難うございました。

title 箱庭

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とても素敵な皆帆君を頂いてしまって、本当に嬉しくてたまりません!こちらこそ、いつもお世話になってます。皆帆君…!皆帆君が素敵過ぎて空中に浮かべそうなぐらいに浮ついています。幸せです。尻尾があったらちぎれんばかりに振ってました。うわああ…!本当に何度読み返してもにやにやしてしまいます!ありがとうございました!