発熱でダウンする5秒前(ガルシャアとヴァンフェニー/むむ様へ)



「………ふぁっ!?」


あ…ありのまま今、起こった事を話すぜ!『私が目を覚ましたら両腕をがっちりホールドした状態のガルシャアとヴァンフェニーが私の両隣で寝息を立てていた』な…何を言っているのか分からねーと思うが……えっこれ以上は流石にやばい?有名コピペそのまま過ぎる?

――ともかく、現状は説明した通りである。素っ頓狂な声を上げてしまった私を許して頂きたい。いや、これ、身動き取れないんですけれども。どうしたらいいんでしょうこれ。そもそも何でこの二人はここに居るの!?何かのドッキリなの!?「…ん、う」うわああああヴァンフェニーが色っぽい声出してる!やだもう冗談だと誰か言っ、


「おっ、目ェ覚めたか名前」
「ガルっ!?なん、離、」
「寝起きの顔も美味そーだなァ!ガルル……」


ガルシャア、なんでここに居るの、とりあえず腕離して。そう言いたかったのだがガルシャアが目覚めていたという衝撃が予想以上に大きくて意味の無い言葉を並べてしまう私。「かーわいいねェ…」「いやいやいやいや!?」何がお気に召したんですか何が!ぺろり、なんて舌舐めずりをしてただでさえ近い顔の距離を近づけてくるガルシャアから必死で逃れようと身をよじる。と、


「……積極的だねえ、名前?」
「ひいっ顔近い!?」
「君から体を寄せてくれるなんて、こんなにも嬉しい事は無い」


色気をたっぷりと含んだ声で「ディスティニー…」なんて呟いて、こちらも顔を寄せてくるヴァンフェニー。どうしよう、これ明らかに詰んでる!絶対詰んでる!第一に私から体を寄せるもなにも最初から二人が私の腕に抱きついてたんじゃないか!そもそもの話、二人はどうやってここに来てどうやってこの部屋に入ってどうして私にキスを迫る!?


「些細な事気にしてんじゃねェよ」
「些細!?何を持って些細だと判断したの!?」
「僕とガルシャア、どちらか選んでくれれば良いだけの簡単でとても些細なことだ」
「それ絶対些細って言わないよね?ね?」
「さあ、お前は俺とヴァンフェニー、どちらと番(つが)いになりたいんだ?」
「つがっ!?」


ことごとく私の言葉を無視した挙句のガルシャアの言葉に思わずぴしりと体中が固まった。「ふうん、これぐらいで赤くなるなんて」「やっぱイイな、お前」それぞれ自分勝手に何やら喋っているが、目の前のオオカミ男と吸血鬼は恥じらいが無いの!?いや、つが、つが……い?番いだよ!?ということはつまりそういうことで何故私はそんな事をこの場で決めなければならなくなったのか、誰か分かりやすく噛み砕いて教えてくれると本当に有難い。

――さて。

兎にも角にも、この二人をどうにかしなければなるまい。いや…懐かれているのは知っていたけど流石に不法侵入な上に朝からこうして迫られるなんて心臓に悪いことこの上ないし。予想もしていなかった二人の行動力にぼんやりと感心してしまう。相変わらず二人に両腕をがっちりとホールドされ、体をぴったりとくっつけられているのに、私の頭には冷静に物事を考える余裕が生まれていた。さて、どう二人を引き剥がしてベッドから出そう?いや、そもそもの前にどうしてここに居るのか問わねばなるまい!


「……何だ、随分と余裕だなァ?」
「冷静になったの。……どうして二人はここにいるの?」
「「夜這いに来たらそいつ(こいつ)が居た」」
「よばっ……」


再び絶句。私のどこに夜這いをする魅力があるのかなんて知りたくもない。いや待って、夜這いって事は私襲われたの!?三人でにゃんにゃんなの!?何それ嬉しくない!ああ、さらば私の純潔…遠い目になっているとヴァンフェニーが何かを察してくれたのか、「別に何もしていないよ、僕は名前と二人きりを望んでいたからね」目を細めたヴァンフェニーの視線を受けたガルシャアがふてぶてしく笑う。「俺だってヴァンフェニーと、なんざ」御免被る、と二人揃ってそんな事言うものだからやはりこの二人は仲が良いなあとしみじみ思った。しかし二人が同じ時間、同じ日に夜這いを決行してくれて本当に良かった!私の純潔は守られたわけだ!ありがとう二人共、そして夜這い駄目、絶対。部屋にきちんと鍵をかけて就寝すると心に固く誓った後、再び腕を振り払おうと試みる。…が、腕が動く気配はまったく無し。これ、私の腕だよね?本人の意思で動かせない体ってどうなの?


「さあ選べよ、俺を選べばこっちの腕は解放してやる」
「ふふ、野蛮なガルシャアで良いのかい?僕を選べばこちらの腕を解放しよう」
「二択しかないの!?どっち選んでもどっちかはくっついて来るんじゃない!」


ぎゅうう、と再び腕が抱きしめられた。体に手を伸ばして来ないだけマシに思えるようなものだが、選ぶまで離れないと言っているあたりにたちの悪さを感じる。これがセカンドステージチルドレンか…なんてSARUが聞いたら絶対に否定されるような事を考え、ガルシャアとヴァンフェニーを交互に見渡した。うん、どっちかなんて選べないわ。どっち選んでも後が怖いしどっちも選べる気がしない。「……どっちの腕もひとまず離して貰いたいな」結局、私が出した結論は三択目だった。ぴったり同じタイミングで顔をしかめるガルシャアとヴァンフェニーから目を逸らす。「そうしたら私は素直に選べるかもしれないよ?」


効果はてきめんだった。まず、即座に腕が解放されて体に軽さが戻ったと思ったらベッドの両サイドにガルシャアとヴァンフェニーが一瞬で移動したのである。「「さあ、名前!」」同時にベッドの中央(私)に向かって差し出される手。なるほど、つまり選んだ方がいる側へ迎えということか。なら、私が取る選択肢は一つだ!


「ごめんね二人共!」


きっと良い人見つかるよ!と叫んで思いっきり跳躍する。視界の隅に驚いた顔の二人を一瞬だけ捉え、跳躍そのまま開いていた窓(多分、ヴァンフェニーかガルシャアがここから入ってきたんだと思う)から外へと飛び出す。大丈夫、私だって端くれとはいえセカンドステージ・チルドレンの一員なのである。飛び出した先には丁度屋根があって、そこに私は着地を決めようと足を伸ばし―――――た……?


――ふわり、という浮遊感。


屋根に足が付く前に誰かの足が視界の隅で私より早く屋根に下ろされるのが見えて、同時に腰に手が回された事に気がついた。筋肉質で肌の色が濃いそれは、ヴァンフェニーの美しく磨きぬかれた陶器のような腕とは違う。あまり良いとは言えない予感を抱いて腕の主を見上げると、獲物を捕食したかのような顔で私を見下ろすガルシャアがいた。「逃げたな?」「……ハイ」否定した後が怖いので素直に頷くと、満足気にぺろりと舌舐めずりをするガルシャア。同時にとすん、と誰かが再び屋根の上に。振り返らずとも誰だかは分かるが、一応振り向いておくとやはりそこにはヴァンフェニーがいた。


「待てガルシャア!抜けがけはしないと、」
「やっぱ、待つなんざ俺の性分じゃねェ。悪ィなヴァンフェニー!名前はもう俺のモンだ!」
「っ、行かせるか!」


珍しく焦った様子のヴァンフェニーがミキシマックスを目の前で展開する。私の腰を抱いたままのガルシャアは余裕そうな表情でにまにまと笑うだけだ。このいざこざに乗じて再び逃げようと試みてみたが、「…名前?」「すいませんでした」即座に諦めた。あ、これそういえば詰んでたんだったな。


「さあヴァンフェニー、……勝負と行こうか?」
「うわあああ!?」
「名前!」


浮遊感に襲われて思わず声を上げると、ヴァンフェニーの手がこちらに伸ばされた。その手に気がついたときにはヴァンフェニーと大きく距離が開いていて、見上げると至極楽しそうなガルシャアの顔。振り返るとヴァンフェニーが追ってきている。「名前!」「なに、ガルシャア…」降ろしてくれと言っても絶対に聞かないであろう事は目に見えているので、渋々ながらも返事を返す。――次の瞬間、私の思考はフリーズした。


「好きだぜ、お前のことが、一番!」



発熱でダウンする5秒前

(その告白は絶対に反則だ)

(2013/08/20)
...Rosy note様

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十万打企画より、むむ様に捧げさせて頂きます。ご参加ありがとうございました!

実は初めてなガルシャアとヴァンフェニーで、まとまりが無くなったせいで無駄に長いです。目を覚ましたら二人が両サイドにいるというシチュエーションを前々から書いてみたいと思っていたので、とても楽しかったです!しかしきちんとキャラを自分なりに掴んでいるわけではないので、これじゃないなあと思ったら遠慮無く言ってください;;

いつもご参加ありがとうございます!これからもよろしくお願い致します。 星乃

(※本人様以外のお持ち帰りはご遠慮くださいませ)