酒は飲むとも飲まるるな(DQオール/アズハ様へ)
※アレフ視点
俺は知っていた。だからこそこの現状に頭を抱える事が出来るのだが、知らない奴らはただ呆然とするばかり。ぽかんと阿呆みたいに口を開いて、ぼうっと見つめるだけ。
せめて一杯の水を名前の顔にぶちまけるか、ラリホーで眠らせる事さえ出来ればあいつを収める事は出来るのだ。しかし名前の周囲にはマホカンタが張り巡らされているので効力が切れるまで待つしかない。再び頭を抱えた。良心である女子達の一部は完全に潰れてしまっている。
―――そう、ここは既に名前一人の独壇場。
「ひらぁ〜っくあ、ゆーひゃれふょー…?きゃかってきなひゃあ!」
「いや、何言ってンのか全然分かんねえからな!?」
落ち着けよソロ、その名前な、『しゃらくせえ、勇者だろ?かかってきなさい!』って言ってるんだよ……俺が保証する。現にほら、杖抜いて構えただろ?室内だっての分かってないのが酔っ払いの悪いところだ。酒を飲める年齢のくせに飲んだ後が始末に負えない。名前というのはそういうやつで、ずっと一緒に旅をしてきて、その面倒臭さを一番身にしみて理解しているのは俺だ。
ちなみに俺一人では止められない。酔っ払ったときの名前はやたらと好戦的になる。普段は『えっ戦闘?……私の方に敵がそんなに来ないようにしてよね』面倒だからと杖を抜く事すら少ない上に魔法力だって普段は抑えまくって抑えまくって力を出すべきときにすら出し惜しむぐらいの面倒くさがりなのだ。そんな名前が酔っ払うとやたらと好戦的になって、普段は見せない実力を惜しむ事無く見せるのだから本当に性分が悪いと思う。
「ね、ねえアレフ!名前が暴れだしそうなんだけどなんとかしてよ!」
俺の近くに駆け寄ってきて、くいくいと鎧を引っ張ってきたのはアルスだ。背の低いアルスだからこいつは自然と俺を見上げるのだけど、その顔は焦りに満ちている。そうだもんな、普段あんな好戦的じゃねえし、そういえばアルスはかなり名前に懐いていたんだっけ。まあ…どちらかというと、あれが名前の素なのかもしれない。心底嫌だが。
「無理だ。俺じゃあいつの魔法力に敵わねえ」
「えええええ!?」
「ッ、おいそこ!ふざけんなよアレフ!」
取り敢えずはとアルスに事実を告げると、驚くことでもないだろうに驚くアルスとそれを耳ざとく聞きつけていたソロの声が響いた。ぎいん、と刃と刃が交じり合うような独特の音が響く。多分、名前がバイキルトで自らの杖を強化してソロと渡り合っているのだろう。流石だなーとどこか人ごとのように、客観的に状況を見てしまう俺。あいつの魔法力は実質、本当に類希なものだ。ローラ姫すら賞賛するほどに。
――止められる方法が無い訳ではない。
「アルス、お前ならマジャスティス使えるんだろ?名前のマホカンタ解除して、ラリホーかけて眠らしちまえ。それであいつは収まるから」
「すごく荒っぽいけどそれでいいの?」
「むしろそれしか方法が無ェ」
ちらりと部屋の隅を見やると、酒に酔いつぶれたミネアとミレーユ、それからクリフトとアイラが見えた。寄り添って眠っているのはトロデ王とミーティア姫。これらの面子は騒ぎを率先して沈めてくれようとするメンバーで、同時に酷く酒に弱い。ビアンカは最初の宴会の時だけ参加していて、お酒が入り始めると教育上悪いからとレックスとタバサを連れて部屋に戻ってしまったため居ない。
残りの女子(例えばマーニャやムーン、マリベル)は、酒が入ると悪ノリが悪化したり性格が更に強化されたり、魔法を見境なく放出し始めたりするもんだから頼れはしない。じいさん達は隅でちまちまと酒を飲んでいるし、正直に頼れるのは名前の攻撃をなるべく被害を出さないように食い止めているソロぐらいだ。「ッおい!誰か名前をなんとかしろっての!」…本人は凄く面倒臭そうだが。それもそうだろう、酔っ払って脱ぎ始めるなんてそんなことはない。酔っ払った名前は力も強くなっているのである。
「ほらアルス、お前の力が必要なんだ」
「……で、でも名前に魔法を……」
「負担とか心配しなくていいぞ。あいつは普段こそか弱いように振舞っているが、実質体力だけなら俺に負けねえ」
ぽんぽん、と肩を叩いてやるとアルスは拳を握り締めた。「よ、よし!分かったよアレフ!」「ん、その意気だ」大丈夫、お前は多分、実質能力的には俺より強…いや、認めたくないからやめておこう。アルスは俺の傍を離れ、リュカとエイト、それからレックへと声をかけはじめた。ラリホーマを要請しているのだと推測。
「アレフ!」アルス達を見ていると、後ろから少し服のはだけたアレンが現れた。「おい、何こんなとこで楽しもうとか思ってんだお前は」「違うっての!」あいつらなんとかしてくれ!とアレンが指差した方向を振り返ると、完全に出来上がっているムーンとアリーナ、それにゼシカのコンビ。背後には屍と化しているククールとテリー、それにピサロ。えっ、何が起きた?下半身が氷漬け状態のテリーと、服を焦がしているククール。二人は服を脱がされパンツ一丁にさせられている。ピサロは服こそ剥がれていないがぼろぼろである。そして楽しそうに赤い顔で指を鳴らすアリーナがアレンに迫っていた。ふむ、なるほど。
「お前らも酔っ払うとタチが悪くなる性分か!」
「にゅふふー、くりふとー、きせるのよ!」
ああなるほど、アリーナはクリフトにアレンの服を着せ……いやいやいや、だからって物理的に身包みを剥ごうとすんな!素手ならば最強であろうアリーナに拳(という名の凶器)を突きつけられては丸腰のアレンも逃げるしかあるまい。さあどう対処しようかと周囲を見渡した瞬間、名前にマジャスティスを放つアルスの姿が見えた。あ、これ、は、
「「「"ラリホーマ"!」」」
三方向から同時に放たれたラリホーマ。リュカとレックとエイトの力が結晶して威力を普通の数倍にも跳ね上げたそれは、正確に名前を射抜いて深い眠りの世界へと引き込んだ。そこまでは良かった。まず、名前の次にアルスが倒れた。その次にレック、リュカ、ちまちまと酒を飲んでいたトルネコやメルビン達、酒にて荒れていたアリーナ達、酔って酒という酒を混ぜ合わせるという無謀な行為に手を出していたマリベルとマーニャがばたばたと倒れた。呆然としているエイトはそういえば、状態異常を受け付けないんだったっけか。そんな事を考えていた薄れゆく視界の隅で、俺を盾にしていたアレンがぱたりと床に倒れ伏すのが見えた。その寝顔はとても心地よさそうで―――……
あ、俺ももう無理、だわ。
酒は飲むとも飲まるるな
(ただいま、つまみの追加買ってき……エイト、この状況何?)
(あー…アベル、おかえり……ちょっと色々あった)
(2013/08/03)
八万打企画よりアズハ様リクエスト、オールキャラで夢主酔っ払いでした!
全員出せなかったのが気がかり…ピサロ様は個人的にいつでもこんな扱いです。
夢主はアレフの相棒で魔法使い兼僧侶の立ち位置という設定でお送りしました。買い出しに出かけてたアベル(3主)と耐性持ちのエイト(8主)以外はラリホーマ放った本人たちも全員潰れてしまった模様。南無三!
消化遅くなってしまって大変申し訳ありませんでした;;リクエストありがとうございました!
(※ご本人様以外のお持ち帰りはご遠慮ください)