心配性もなにもかも、(ロキ/翼様へ)
「闇パーティ完成ーッ!」
はは、と乾いた笑いを漏らす私と無言で"それ"を見るルシファーさん。そんな私たちの前でリリスさんとデスピナスさんとフォッグキマイラさんが名前が円陣を組んではしゃいでいた。何故闇パが完成した程度であんなに盛り上がれるというのだろうか。
数日前、魔王の城を制覇した私たちは名前の要望により新たなダンジョンへと出向いていた。そこではミストキメラさんとの出会いがあり、可愛いものに目がない名前は総力を上げてミストキメラさんを確保。ボックスを占拠していたメタルドラゴンさんたちを食べさせ進化させ、フォッグキマイラさんが我らの仲間に加わったのはつい先日。
新たな仲間が増えた事は純粋に喜ばしい。成長の証と言えるだろう。名前のマスターとしての能力も日々向上している。色んな組み合わせを試す事も覚え、今日やっとエンジェルさんも天空の使徒として生まれ変わった。彼女がまだキューピッドの姿だった頃を思い出すとエンジェルさんの翼も大きくなったものである。そういえばリリスさんだって梟を従えるようになったし、セイレーンさんやエキドナさん、アルラウネさんも姫や女帝、精霊の名を抱くまでに進化した。日々強くなっている一番の証は究極進化を遂げたブラキオスさん…いや、今はガイアブラキオスさんか。彼が一番の証人だろう。
まあ、変わらないものもあるんですけどね。
「ロキー、ルシファー、リーダー決めるからこっち来てー!」
「……はいはい、分かりましたよ。ルシファーさん行きましょう」
静かに頷いたルシファーさんを先導するように名前の元へと歩き出す。「決めずとも私がリーダーでしょう」「……いや、私は全員の体力を二倍に出来る」「私はみなさんの回復力と攻撃力が二倍です」ばちり、と私とルシファーさんの間に火花が走った。相変わらず彼とはあまり相容れない。それもそうなのは、ルシファーさんがやたらと名前を過保護に扱ったり私に近寄ると教育に良く無いだのと、御託を並べて……まあはい、要するにルシファーさんも時間を積み重ねるごとに名前を信頼し、つまり今ルシファーさんと私は"同類"なわけです。ライバルです。ひたすらに私の邪魔するんですよこの天使。
「名前、どうするんです?決定権はマスターである貴方に存在しますが」
「そうだねー、女神降臨なら誰がリーダーなのがいいんだろ」
「あら名前、女神降臨に行くの?」
「うん」
…………女神降臨?
「「「女神降臨ッ!?」」」
「え、ちょ、どうしたの?何か変な事言った?」
変な事じゃない変な事じゃないとんでもない事言い出しましたね!?ってそこ!デスピナスさんもフォッグキマイラさんも不思議そうな顔…ってああ、あなたたち"あの"ダンジョンの恐ろしさを知らないんでしたね…!つい先週、興味本位で入った結果一瞬にして全滅した経験を持つ私とルシファーさんとリリスさんは血の気が引いていくのを感じた。
「いやいやいやマスター、冗談でしょう?女神降臨?相手はあのヴァルキリーよ?」
「今度は大丈夫だって!」
「明らかにレベル足りてないってば!」
「でもほら、魔法石だって少しはあるし…」
リリスさんの説得は耳に入っていそうにない。使うのを躊躇っていた魔法石を取り出し、にこにこと笑う名前の肩をがしりと掴んだ。
「名前、あなたは成長したと思ったら何故そんな無謀な事をしようと、」
「無謀じゃないよ!ほら、今度はみんな闇だし大丈夫!」
「何が大丈夫なんですか何が!私たちだって光に弱いんですよ!?」
「……や、じゃあ援護を堕天使のルシファーさんにお願いしてイビルノヴァで、」
「そんなので女神が倒れると?」
「じゃあ勇者降臨…」
「馬鹿なんですか!?殺されたいんですか!?勇者ですよ!?」
「う、ううっ……ルシファー!ロキがいじめる!」
「マスター、今回ばかりは私も彼に賛成です」
躊躇無く私に同意したルシファーさんの気持ちは手に取るように分かる。
「名前、私達はあなたを信頼しています。だからこそ傷ついて欲しく無いんですよ?私たち全員にとってあなたは無くてはならないマスターだ。だからこそ自分の力量をきちんと見極めなさい。まだ降臨系はあなたには早いです。無謀です。正直勝目が皆無です。ですから、もっと強くなって……その時に私たちの力が十分だと思ったら許可を出しましょう」
名前は、じっと私を見つめていた。説得にさりげなく本音を交ぜたから少しばかり気恥ずかしい。狡知神とはよく言ったものだ。――大切な存在の前では、頭が回らない。
少しばかりして、名前が私から目線を外して小さく俯いた。「……ロキが、そう言うなら」……傷つけてしまっただろうか。本来ならマスターに口出しするなどあってはならないだろうに、抱く感情の大きさ故か。彼女を危険なめに合わせたくないという勝手な従者の感情が優先されるなんて……「申し訳ありません」とっさに出た謝罪の言葉に、勢いよく名前の顔が上がる。「なんで謝るの?」「え、いや、怒っているのかと、」謝罪の意味を問われた事に対して戸惑っていると、微かに名前の頬が赤くなっている事に気付く。
「心配してくれてるの、嬉しかったよ?」
―――へへ、と。
気恥かしそうにはにかんだ笑みを浮かべた名前は恐ろしいほどに可愛かった。いや、もうその笑顔でダメージを与えられそうなぐらいには可愛かった。事実、私とルシファーさんは咄嗟に顔を逸らした。「……なーにやってんだか」リリスさん、うるさいです!
心配性もなにもかも、
(全部貴方のせいなんですよ、マスター)
(2013/07/30)
八万打企画より翼様リクエストの、パズドラ短編ロキ夢の後日談でした!
夢主のパーティコストとかスタミナの問題は気にしない方向で。あとルシファーさんが惚れてしまうのは以前泣く泣くカットした部分だったので、書けてとっても楽しかったです!ありがとうございました!
遅くなってしまって申し訳ありませんでした;;リクエストありがとうございました!
(※ご本人様以外のお持ち帰りはご遠慮ください)