僕らのprincessに花束を(海賊現パロ/夏川様へ)

私の恋人、キッドはお花屋さんを営んでいる。私が彼をチューリップに例え、それがきっかけで色々有り、私は花を鉢植えで育てる事に夢中になった。「馬鹿じゃねえの」と最初こそ私の趣味を軽蔑していたキッドだが、時折花の世話を任せていると段々花に心を開き始めた。ヘアースタイルから通じるものがあったのだろうか、チューリップと会話しているキッドを見た時は衝撃だった。その後キッドは本格的に花の勉強に入り、今や街の片隅で洒落た花屋を営んでいるのである。店先のお花は活き活きと水に濡れ輝き、キッドの頭上のチューリップさんもいつも通りに絶好調。エプロンにジョウロのキッドに最初こそ違和感しか感じなかった私だが、今では既にもう慣れきってしまった。店の売上げはまあ、ぼちぼちというところ。繁盛しすぎているわけではないが、お客さんに困っている事はない。女の人だけではなく男の人も立ち寄りやすい店なんだとか。最初こそ特に女の人は店主が男(しかもキッドみたいな強面だから当然だろう)で戸惑うのだが、店先に飾っている花だとか店内の花の配置や家具の配置は全て私が担当したため女の人向け。お店には女の人の方が馴染み易かったりする。つまり男女のお客さん両方に向いている(?)店である。ちなみに一番の常連さんはキッドの良き理解者で友人なキラー君。常にフルフェイスヘルメットみたいなものを被っていて、私はその素顔を見た事がない。


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「キ……店長、トラファルガー先生が来てるよ」
「追い返せ」
「お客さんになんてこと言うんだ」


店先に立っているときは私は一従業員、キッドは店長と言えどこんなセリフを聞けば流石に店員として黙っちゃいられない。手にしていたボードでキッドの頭上のチューリップを叩くがボードを離すと見事復活。何故だ。叩き潰したはずなのにこの生命力…!恐るべしチューリップの生命力におののいていると「何しやがる!」とキッドに怒られた。追い返せなんて言う方が悪いだろう!


「……おいユースタス屋、名前とイチャついてねェで仕事しろ」
「あァ?ったく……へいへいらっしゃーい、何の用だよ用が無いなら帰れ」
「仕事する気無いねキッド!」
「ったりめェだろーが!もう店閉める時間だっての!」
「ローさんは一番のお得意様の恋人でしょうが!」
「………チッ」
「舌打ちしない!」


ほらローさんの目がマジになってる怖い!多分病院からそのまま来たのであろうローさんの服は白衣で、その懐からきらりと銀色の刃物が光るのが見えた。あれ絶対メスだって!というかキッドも何でハサミ構えてるの?仕事しよう仕事!ここお花屋さん!


「で、ローさん今日はどうされたんですか?お花なんて珍しいですね」
「ぶっちゃけ似合わねェ」
「黙れ切り刻むぞユースタス屋」
「うちの花屋をスプラッタな事にしないでくださいお願いします」


あと珍しいって言っちゃってごめんなさい、つい本音が!


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「へえ、誕生日プレゼントにバラの花束と婚約指輪…」
「ベタだな」
「ベタですね」
「うるせェ」
「だがそれがいい!」
「おめェ、そんなモンに憧れてンのかよ」
「当たり前じゃない!はあ、羨ましいなあ……」


口では面倒だと言いつつもお得意様の一人の為にバラを厳選するキッドを手伝いながら、私はローさんの恋人であるお得意様の美女の事を思い出していた。
流れる髪が艷やかでスタイル抜群な彼女は私の憧れであり、ついでに街のヒロインである。もうモデルか何かをやっているんじゃないかというレベルの美貌。声も綺麗でキッドが花屋に来る度に頬を染めるのも分かるのである。だって私の方がキッドより赤くなっているのですし。男女関係無く赤面させられるスキルを有するその人は、近所の外科医のトラファルガー先生ことローさんの恋人で、私は心底ローさんが羨ましい。

まあ、今は関係無いのだけれど。しかし誕生日に薔薇の花束……ローさんによると今から高級ホテルのバーでお酒を飲んで、食事してドライブして海に行くんだそうな。そして海で薔薇の花束の中に潜ませた指輪を渡すだなんて!少女漫画か!だがそれがいい!ちなみにアイディアを出したのはローさんの助手のベポくんだとか。


「結婚式には呼んでくださいね?」
「……断る理由はねェな」
「むしろブーケ始め会場の飾り付けを担当したいです。させてください。キッドに」
「おれかよ!……ったく……」
「まんざらでも無さそうだな、ユースタス屋」


にやりと口端を持ち上げるローさんに「フラれればいい」と酷い言葉を返すキッド。今度は窘めなかった。むしろ乗っかって「指輪のサイズ間違えてればいい」と呟く。ニヤつくローさんは彼女さんにデレッデレで正直普段のクールさどこ状態。爆ぜろリア充!――…とぼやきつつも手は動き、真っ赤な薔薇の花束はメッセージカードも添えて完成した。


「――ほら出来たぞ、持ってけドロボー」
「代金は」
「フラれたら頂きます」
「…………いいのか」


キッドと顔を見合わせにやーっと笑う。二人のために選んだ薔薇はきっと夜の浜辺での告白でも闇夜に映えるだろう赤色だ。断られる事は有り得ないから、それは私達二人からのプレゼントとして贈る事にする。まあ0.0001%の確率で期間延長なんかもあるかもしれないけれど、その時は寂しい帰り道に店に寄ってもらってそれなりの代金を頂戴する事にしよう。



僕らのprincessに花束を!

(2013/04/28)

ファンでもありお友達でもある、夏川様へ捧げさせて頂きます…!
サイトリニューアル、本当におめでとうございます。
気がついたら手が勝手に動いてました。ローさんの恋人さんのイメージは、僭越ながら夏川様のイメージであり同時に夏川様が連載されてる海賊長編の夢主、リュウさんのイメージをほんのり想像して書かせて頂きました。許可を貰わずに書いてしまいまして、本当に申し訳ありません;;

やらかした臭が半端ない初海賊夢。ちょっと夜空の星になってきます。
あっでも星になる前に一言。
ローさんの恋人さんが大好きなお花屋さんの二人が書きたかっただけの産物です。
正直に言うと最初の冒頭の文章が書きたかっただけ。
ちなみにキッドと夢主の関係はご想像にお任せします。日常っぽい何か。

*2013/05/05 普段の癖で榴様って書いていたので、分かり易いように表記を夏川様へに変更させて頂きました。