赤と緑のお返し事情(さぼてん様へ)




※かっこいい緑と赤はいません




――――自分の部屋を開けた瞬間、奇妙な違和感に包まれた。

目線を感じる。何故かじわじわとした目線を、それも二人分。




「…………」




荷物をベッドの上に放り出し、抱えた箱(バレンタインのお返しでシロナさんから貰った)をテーブルの上にそっと置く。

そのまま部屋を慎重にぐるりと見渡した。……やっぱり誰も居ない。

一応廊下の方も振り返るけれども背後には誰も居ない。おかしいな、絶対に誰か居るはずだ。

もしかして変質者が部屋に潜んでいるのだろうか。テーブルの上の箱を見つめ、顔は動かさないまま精神を集中して気配を探る。

ゆっくりと振り向いた。人二人ぐらいならば潜められる大きさのクローゼット。――微かにことん、という音が耳に届く。

泥棒?変質者?黙ってボールからカイリューを出した。空気の読める相棒はクローゼットから不審な気配を読み取ったらしい。

目だけで意思を通じ合わせた私達は足音を忍ばせてクローゼットに近寄った。カイリューが口を開ける。





「……いくよ」




冷凍ビームがいつでも発射出来るのを確認して、―――思いっきりクローゼットを開け放った。

―――……の、だが。





「お、……お邪魔、してまーす」

「……は、はは……っ?」

「―――何してんの?」





―――まさか幼馴染二人が人の家のクローゼットで私の下着を共に頭に乗せ、肩を寄せ合っていようとは。





**






「……さあて、言い訳があるんなら聞くけど?」

「「すいませんでした」」

「カイリュー、この二人って破壊光線がいいみたいだね」

「「すいませんでしたァ!!」」

「………はあ」





椅子に座って、床に土下座するレッドとグリーンをじろりと睨む。まさか不法侵入に加えて下着まで漁られるなんて。

正直評価が地まで落ちた。グリーンなんかイケメン(笑)じゃない。レッドも最強(笑)じゃない!

私の腸が煮えくり返っているのが分かっているのだろう。恐る恐る、という風に顔を上げたレッドとグリーン。





「……だって、今日ホワイトデーじゃん」

「それが何?」

「………レッドと一緒に作ってきたんだ、お返し」





こそこそ、とグリーンから差し出されたのはそれなりの大きさの箱だった。一瞬だけ呆けて、静かにそれを受け取った。

ふんわりと香る優しい香り。開けていい、と問えば頷きが帰ってきたのでリボンを解いた。

現れたものを見て目を丸くさせてしまう。クッキー、タフィー、小さなカップケーキ……少し歪なものから綺麗なものまでよりどりみどり。

もしかして、二人でこんなにたくさん作ってくれたんだろうか。二人を見やると照れくさそうに目を逸らす。……マジか





「や、その、普段のお礼とかも込めて…三倍返しに盛ってみた」

「俺達すっげー頑張ったでしょ?」

「……予想以上」





凄いじゃん、と小さく呟くと表情が一転。二人の不安そうな顔は一瞬にして消え去った。

褒めて褒めてと言わんばかりに目を輝かせるレッド。顔を赤らめつつもつん、とそっぽを向いてしまうグリーン。

普段の私ならばここで大喜びしていただろう。うん、正直すっごい嬉しい。――でもね?





「これと、下着を漁ってた事に関しては別よね?」

「そ、それはその!なんていうか!その、お返しをサプライズで渡そうと思ったんだよなあレッド!?」

「そ、そうそう!そしたら名前がいきなり帰ってきたからとりあえず隠れようって!」

「で、クローゼットに入ったらその、…………手が勝手に」

「………男ですし」





目を逸らして窓の外を見つめ始める二人。―――ポケットから私の下着がはみ出てますよ?

そうかそうか、ならばお望み通りにして差し上げましょう。

ここまで来るともう笑いしか出て来ない。普段の数倍緩んだ口元を携えて、カイリューに示す。





「カイリュー、『はかいこうせん』」






Happy White Day … ?

(修繕費は全部負担してね?)


(2013/02/13)


おまけ


「お、窓の鍵空いてるぞレッド!さっさと入って置いちまおうぜ」

「待って。……これ男物じゃない?」

「おま、何で普通に名前のクローゼット開けてんだよ!――男物?」

「ほらこれ。明らかに名前のじゃないでしょ」

「………それ、俺の」

「………どういう事?」

「普通にピカチュウ構えながら言うなっての。こないだ寒い寒い言ってたから貸したんだよ」

「なんだ、それなら――………あ」

「どうした?間抜けな声出し――――……」




「ねえグリーン、今ポケットに何入れた?」

「お前こそ何入れたんだよ、ほら白状しろって」



「ただいまー」



「――ッ!?おい名前が帰ってきたぞ!?」

「ちょ、この状況見られたらヤバイっ!」

「隠れるぞ!ああもう、この際ここでいい!」

「……名前のクローゼットの中……」

「おい何照れてんだよ!さっさとしろ馬鹿!」



冒頭に続く...



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ホワイトデー企画で、さぼてん様に捧げさせて頂きます!
かっこいいレッドさんとグリーンさんが書けなくてごめんなさい;
おまけを書いてる時が一番楽しかったです(←コラ)

二企画に参加、ありがとうございました!/font>