どっちも美味しくいただきます(ハヤト/要様へ)
今日はホワイトデー。バレンタインに美味しい名前を貰ったおれは彼女に渡すプレゼントを隠して名前の家で待っていた。
バレンタインはあの後、おれの歯止めが効かなくなってクリームだけしか食べさせられなかったからと名前がケーキを練習したらしい。
それをホワイトデーに準備してくれるなんて、おれの彼女はどれだけ可愛いんだろう。まあ一番可愛いのはベッドの上なんだけど。
ふんふん、と鼻を鳴らしながらピジョンを模した木彫り細工をいじる。これは初めて名前に渡したプレゼントだったはずだ。
――――そういえば、帰ってくるのが遅いな
ケーキに乗せる果物が足りなくなったから買ってくると、近所のスーパーに名前が出かけてもう30分程になる。
果物一つ買うのに30分も必要ではないだろう。……何かあったのだろうか!?
やはり自分が行くべきだったと後悔する前に上着を手に取った。変な輩に絡まれているのでは?ならば早く助けに行かないと!
嫌な予感が頭を過ぎればそれ以外考えられなくなってしまう。ばん!と大きな音を響かせ玄関の扉を開いた
「…………な、っ」
名前の住んでいる部屋はこのアパートの二階。そこから見下ろせるのはアパート前の道路。
そこで、自分の見知らぬ男と楽しそうに話をする名前。
間の抜けた声が出た直後から声は出なくなって頭は真っ白になる。浮気?いや、名前に限ってそんな事があるはずない。
随分と楽しそうに会話を交わす名前に不安を抱く。……あの男は誰だ?
「あ、ハヤト!」
「っ!?……あ、お、おかえり」
「うわ、話してたらもうこんな時間になってる…!ごめんね、じゃあまた明日!」
――時間も忘れるほど会話が楽しかったのか、なんて即座に頭に浮かんだ自分の嫉妬心が醜く感じる。
手を振ってその男と別れる名前。名前に笑顔を返したその男は、微かに顔を上げておれを睨みつけているらしい。
直感的に察する。名前が狙われている、と。ならばするべきことは一つだ。
アパートの階段を駆け上ってきたらしく少し息を切らした名前が遅くなってごめん、と俺に謝る。反応なんてしてやらない。
「名前」
「え、どしたのハヤト?具合悪――――っ!?」
――――見せつけてやるよ、おれのものだって。
ぐい、と名前の頭に手を回して自分の元へと引き寄せる。
驚いたからか反射的に名前が反応するけれど、それすらも可愛い抵抗だ。
「ん、ふむ……っ!」
喘ぐ名前の顔は見せてなんてやりたくないから、男の視界に入らないようにするりと場所を移動する。
それでもおれと名前がキスをしているというのは分かるだろう。
横目でちらりと確認する。……目と口を開けて呆然としているのが分かった。
――――勝ったな
「……っ!は、ハヤト!何す」
「名前はおれの、だろう」
有無を言わせず名前の手を引いて玄関の扉を開いた。体に直接印を刻んでやりたい気分なのだ。
Happy White Day !……Day?
(ぜ、絶対見られてたよ!ハヤトの馬鹿!)
(見せつけてたんだよ)
(っ!?な、なんで!?)
(あの男が名前と話してるのが気に入らなかった)
(〜〜〜ッ!)
(も、もうハヤトにケーキあげない!)
(じゃあ名前でいいよ)
(何でそうなるのっ!?)
(そう言いながらまんざらでも無いんだろ?)
(2013/03/22)
盛大過ぎる遅刻になる前に消化完了…!
要様へ捧げさせて頂きます、企画参加本当にありがとうございました!
前が夢主の嫉妬でしたので、今回はハヤト君の嫉妬話にしてみました。
モブ(男)は夢主に恋心を抱いてたんですが粉砕されましたね(笑)どんまい!
ありがとうございました。