複雑過ぎる愛情表現(スペゴールド/アクア様へ)


※ぬるいですが一応R15ぐらいに指定
※ポケスペです
※学パロです
※キャラ崩壊警報 性格きちんと掴めてません



新しい学年。新しいクラス。新しい出会い。
そんなものに心躍らされて新しい教室の扉を開き、がやがやと賑わう新しい教室をぐるりと見渡した。席を確認し、新しいクラスメイト達の間を縫って自分の席に着席する。途端に眠気が襲ってきて机に突っ伏した。

窓際の一番後ろの席は吹いてくる風も爽やかで、これから凄く楽しい何かが始まる気がする。

――――そう、気がしただけだった


「なあなあ!そこの窓辺の寝癖ギャル、そうお前!ビリヤード部の部長名前だろ?」
「寝癖ギャ……ル?部長……?え、あ、はいそうですけど」


鞄から飛び出していたキューを見て言ったのだろう。隣の席に鞄を置いた声に顔を上げた。……って寝癖!?どこ!?どこだ!?必死で髪を触ると後頭部にひょこ、っとした感触。……後でスプレーつけよう。

最悪だ、よりにもよって新学期早々に寝癖……!それを他人(しかも男子)に指摘されるだなんて本当にタチが悪い。


「だいじょぶだって、寝癖も可愛いから」
「ひゃああ!?」
「………へえ」


いきなり目の前に顔を出されたらそりゃ誰だってびっくりする。ここで声の主の顔をまじまじと見る事になった。跳ねた前髪にゴーグル。私に寝癖とか言えないだろそのヘアスタイル!とまあそれはさておき。
整っているけれどもやんちゃそうな顔。――鞄から飛び出したキューにどきりと心臓が高鳴る。ギャルだのなんだのと意味が分からないが、これはもしや友達(もしくは新入部員)のフラグなのでは!?

……とまあ、ここまでは良かった。ここまでは。


「なあ、ビリヤードで勝負しよーぜ寝癖ギャル」
「その寝癖ギャルってのやめてくれませんか恥ずかしい」
「オレに勝ったら入部してやんよ」


ギャルやらなんやらの羞恥心が一瞬にして吹き飛んだ。―――入部って言った?言ったよね!何を隠そう(隠す事でもないのだが)、現在私が部長を務めるビリヤード部は廃部寸前なのである。メンバーが足りていない―――とまあ生徒会長グリーン先輩に先日警告されたばかり。
一人でも入部すれば廃部は免れる。この勝負、受けるしかない!っていうか勝てる気しかしない!


「……嘘じゃない?」
「マジマジ。本気の大真面目」
「よしやろう今!」
「そう来なきゃな!あ、俺が勝ったら寝癖ギャルお前オレの奴隷な?」
「おう!何でも来い!」
「………ラッキー!」


―――無知とは恐ろしいものである。

何せ部長という立場。新入部員を確実に得られると思っていた私は彼により散々に打ちのめされ、最終的には彼の奴隷の道を歩むことになってしまったのである。


**


「おい名前ー、焼きそばパン買ってこい」
「………分かりましたよゴールド様」
「お、段々分かって来たじゃねーか」


一ヶ月後。

楽しそうなニヤニヤ笑いのゴールドに使いパシリを頼まれて、渋々頷くしかない私の姿がそこにあった。たまには自分で買いにいけ!と反論出来たならばと思う。しかし言えないのである。完全に支配下にしかれているのである。


「………せめて別の条件だったら……!」
「なんか言ったか?」
「なにも!じゃあ行ってきます!」


半ばヤケで叫んでとりあえず廊下に飛び出した。焼きそばパンは人気だから売り切れも早い。購買に走りながら毎度の如く後悔する。どうしてこうなったんだろうか
結局ビリヤードでゴールドに惨敗した私は、まあ見事に宣言通り彼のドレイ…もといパシリとしての一ヶ月を過ごしている。
呼び方まで指定付きな上にゴールドは私からビリヤード部の部長の座まで奪って行きやがったのだ。結局のところ部活は救われたけれど私は救われず。現在二人きりの部活で毎日パシリ。
一番最初の予感は大外れだ。誰だこれから凄く楽しいことが待ってそうだとか言ったのは!とりあえず目指せ下克上、いつか必ず―――とまあ毎日のように後悔しているうちに購買が見えてきた。


「ってうわあ!焼きそばパン売り切れる!」


毎日のように殺到する生徒ばかりの中に思いっきり飛び込んだ。しまった出遅れてた…!今まで毎日欠かさず焼きそばパンを購入していたというのになんという失態。
というかゴールドの事だから買っていけなかったら何されるか分からない。最悪再び部活は廃部だ!人ごみを無理矢理掻き分けてカウンターに辿り着く。焼きそば焼きそば……あった!
目の前にある焼きそばパンを引っ掴むと隣から小さく呻き声が聞こえた。ごめんよ私は部活を守りたい


「これください!」
「はいよー、160円ね」


つり銭とパンを受け取り、ミッションコンプリート。良かった今日も無事で何よりだ
なんという達成感…!レジを振り返ると『焼きそばパン売り切れ』の張り紙。
これで最後だったんだろう。再び人ごみを掻き分けて廊下に出る。あー、空気が美味しい!今日もいい天気!


「………はあ」


虚しい。美味しい空気を吸い込むと虚しくなるのは何故だろう。ついでに青い空が憎らしい。私いつまでこんなパシリやればいいんだろうか。
というかこんなんじゃビリヤードも勉強も……恋愛事にも余裕なんてない。
まあ考えていてもしょうがないのでゴールドが私に飽きるのを待つしかないのだが。
教室に戻ろうと窓辺から離れる。――自販機の傍に見知った顔を見つけた。ついでに悪戯心が芽生える

足音を忍ばせてゆっくり背後に近づいて―――……


「やっほー!シルバー君、何買ってるの?」
「――っ!?お、驚かすなよ名前」
「ごめんごめん!」


背後から唐突に現れた私に驚いたのだろう。珍しいシルバー君の表情ゲットである。
ゴールドの友人シルバー君。クラスも同じなので接触が多く、最近は名前で呼び合うようになった友人の一人である。
クールな印象が強いから、こういう驚いた表情なんかはレアなイメージだ。
手に持っているのはブラックコーヒー。……それ以外は財布しか持っていないシルバー君に少し疑問を抱く。


「シルバー君、お昼もう食べたの?」
「いや?これだけだけど」
「これだけって……ちょ、コーヒーだけ!?」
「……?」
「何その不思議そうな顔!今日午後体育じゃん!ほらこれ!」


流石に体育前にコーヒーだけだなんてシャレにならない。躊躇無く手元にあった焼きそばパンをシルバー君に押し付ける。
もうこの際ゴールドなんて気にしてられない。食い盛りの高校生男子が昼食にコーヒーだけなんて私が許さん!


「おい待っ……それゴールドの焼きそばパンじゃないのか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「問題大アリだろ」
「シルバー君が倒れる方がよっぽど問題だよ!ブルーさんに心配かけていいの?」
「………有り難く頂いておく」
「よろしい。じゃあ私教室戻るねー!」


流石ブルーさんの名前は効果ばつぐんだ。素直にパンを受け取ったシルバー君に背を向けて教室へと歩き出す。さて、失った焼きそばパンの代わりに何をゴールドに差し出そう


**


「おい手ぶらじゃねーか」


自分の席に戻るとゴールドが不思議そうな顔で私の手元を見る。気まずいので目を合わせられない。……シルバー君にあげてしまったと言えばいいのだろうが、なんとなく口に出せなかった。
代わりに自分の鞄から渋々"ソレ"を取り出す。今日はお昼抜き。まあしょうがない。


「色々あったの!はいこれ代わりにどうぞ」
「名前の弁当じゃん」
「特に美味しいものは入ってないけど焼きそばパンよりは腹の足しになると思います以上」
「オメーのメシは?」
「私今日あんまりお腹空いてな……ってもう食べてる!?」
「もらっひゃもんは食わねえともぐ」
「食べながら喋らないでよまったく……」


何だかんだ、今日のお弁当は自信作だったというのに。自作のミニハンバーグと白飯を一緒にかっこむゴールドの隣、自分の席に座り込む。もう溜め息をつく気にもならない。お腹減ってる、なんて今更言わないけども。


「美味いじゃん」
「……そ、そりゃどーも」
「お前のかーちゃん良い腕持ってんのな」
「…………」


もう何も言えなくなる。否定するのをなんとなく躊躇って、結局言わずに終わってしまった。自分で作った弁当をゴールドにあげてしまうなんて何だか複雑な気分で、でもそれ以上に……

―――美味しい、と言って貰えたのがなんだが心から嬉しくて。


「……伝えとくよ、美味しかったって言ってたーって」
「おう頼む。あー、ついでに腹も膨れたし食後のデザートにコンビニでアイス買って来い」
「またか!」
「つべこべ言うなって。三分以内じゃねーと金払わねえからな」
「行ってきます!」


全速力で再び教室を飛び出してコンビニへ向かう。当然お腹が空いて力が出ない状態の私は間に合わなかったのだが。


**


「あ゛ー………きっつー……」


体育の授業が開始して数十分。試合形式でバレーボールを始めると共に頭を襲う痛み。ついでに視界がきちんと定まらない。健康的に食事を取るのは大事だと痛感する。
動きが鈍くなっているのが自分でも分かってしまう。こめかみを指でほぐすけれども気持ち悪いのが収まらない。


「大丈夫なの?やっぱ影で休んでた方が」
「あ、大丈夫!そんな休む程じゃないからさ」


傍に駆け寄ってきた学級委員、クリスに無理矢理笑顔を作って見せる。なんとなくここで休んでしまうのは嫌だった。
何故だろう。―――ゴールドに気負わせたくないから、なんてどうして思ってしまうんだろう。


「口は悪いし人使いは荒いし女癖は悪いし……何よりゴールドなのに」
「?名前ちゃん、何か言った?」
「な、なんでもないよ!さあほら気張っていこ、今こっちが負けてる――――し……?」
「名前ちゃんッ!?」


脳内にがつん、という衝撃が走って一瞬で意識を持っていかれそうになる。
ぐらり。視界が90度回転して体が床に叩きつけられる感覚。痛みはあまり感じない。
男子コートから飛んできたのだろう。バスケットボールがころころ、と転がっていくのを視界の隅に捉える事が出来た。
普段ならまったく平気、痛ってえなオラ一発殴らせろで済む話だ。しかし今この時だけは別。


「もう無理………」


誰かにふわりと持ち上げられる感覚。抵抗する気力なんて皆無だ。なんだこれ、まるで少女漫画のヒロインじゃないか――なんて考えながら意識を手放した。


**


「………うあ?」
「やっと起きたかこのバカ!」


ぱちり。目を明けると真っ先にゴールドの顔が飛び込んできた。
周囲を目だけで確認する。見覚えのあるその場所、どうやらここは保健室らしい。そして入学以来一度もお世話になった事の無かったベッドに寝かされているらしい事を把握。
周囲には目の前のゴールド以外誰も居ないらしい。先生の姿も見えない。窓からは夕日が覗いている。もう放課後かー…

……って待て。ゴールドと、放課後の保健室に、―――二人きり?


「ひゃあ!?あ、え!?ゴールド!?何で!?」
「オレが!どんだけ!心配したか!」
「ちょ、やめ、首掴まな―――うわぁ!?」
「バスケのボールが当たったぐらいで倒れて意識失うヤワなヤツだとか知らなかったっての!」
「ゆら、ゆら―――揺らさな、いで!?」


動揺する暇なんてなかった。ジャージの襟首を掴み上げられて首をがくがくと揺さぶられる。ただでさえ目が覚めたばかりだというのに!というか珍しく本気で怒ってないか
そして揺さぶられている合間に信じられない単語が聞こえてしまったからか意識は完全に覚醒してしまった。なんとか手を動かしてゴールドの腕を掴む。気がついてくれたのか、襟首から手を離してくれるゴールド。


「……心配、してくれてたの?」
「そりゃ………ボール俺のせいだし心配するだろ普通」


顔を逸らしてぼそりと漏らすゴールド。なるほど、犯人はゴールドだったのか。今気がついたのだけれども、彼の姿もジャージのまま。もしかして、ここに運んでくれて―――ずっと付き添っててくれたんだろうか


「ありがと」
「……気にすんな、オレこそごめん」
「うわ珍しいゴールドが謝った…!?」
「バカにしてんのか」
「してませんごめんなさい」


段々パシリ根性が染み付いてきた気がする。なんで私が頭下げて謝ってるんだろうか。それでもなんだか不思議と緊張は消えなくて、顔を上げられない。
無性に心配してくれてただとか、謝ってくれただとか、―――そんな事がたまらなく嬉しいなんて


「………シル公に焼きそばパン、くれてやったらしいな」
「何でそれ――」
「シルバーから聞いた。先に言えっての、このバカ」
「何でバカバカ連呼されてるの私」
「知るか」


知るか、じゃないでしょうが―――と言う間も無く、起き上がった私を押し倒してその上に被さる体。驚きで声も上げられない私の視界。天井の代わりにゴールドの顔。


「え、あのこれ何ですか」
「よくあるこった、気にすんな」
「よくある!?いや気にしますけども!」
「オレに心配させたおしおきな」
「何故!?」


反論なんて聞いて貰えないらしい。なんという俺様だろうこの男は!けれどもどんどん迫ってくるゴールドの顔に、抵抗しようとは思わなくて。別にパシリ根性奴隷根性、主人に逆らえないってわけではない。断じて!

―――ただ単に、ああ私は嫌じゃないんだなって気がついちゃっただけだ


「……抵抗しねーの?」
「それが嫌じゃないんですよ、ご主人様ならね」
「ハッ、―――後悔させてやるよ、そのセリフ」
「え?いやちょっとまってレベル高いのは勘弁し―――ひゃああ!?」


ちょっと調子に乗ってしまえばすぐに後悔するという事を私は学んでなかったらしい。吸いつかれた胸元。ジャージからちらりと覗くキスマーク。これはちょっとやばい。流石に抵抗しようとするけれども、唇をぺろりと舐めたゴールドに見惚れて再び手を止めてしまう。

―――ぞくり、と背中に走る感覚。怖い、けれどもやめて欲しくない


「優しくすっから」
「―――ッ、お、お好きにどうぞ!」
「へーえ?むしろ激しくされたい、と?」
「違うそういう意味じゃない!」


じゃあお望み通りに、と耳元をぺろりと舐められて変な声をあげてしまう。願わくば、ゴールドのスイッチが切れるまで先生が保健室に帰ってきませんように―――……



複雑過ぎる愛情表現

(手元に置いとくだけじゃ満足出来ない)
(いつからだろうな、そうなっちまったのは)
(バカはオレだよなー)

(まぁいいか!結果オーライだしな)

(よくない!え!?何今までの愛情表現だったの!?)
(お!まだ元気じゃん、なら――)
(流石にやめてくださいお願いします!というか先生は!?)
(今日出張だとよ)
(……なん、だと?)


(2013/02/17)

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -




何がしたかったの……え、スペゴールド君に対しての知識なんてにわかですよにわか…
だからこんなに長くなっちゃったんですよという言い訳です
学パロってなんだっけ

というわけで、アクア様より頂いたリクエスト『スペゴールドで学パロ』でした!

夢主のタイプが謎過ぎる。何故こうなった。そしてこのゴールド君キャラ崩壊ってレベルじゃない気がします。誰
要望通りに保健室にGOさせてみたんですけどここから先はご想像にお任せしますということで!

拙い文章ですが、いつも応援してくださってありがとうございます!
いつものお礼になってると嬉しいです(*´ω`*)

リクエストありがとうございました!


(※本人様以外お持ち帰り禁止)