ゆめでみたきみ
――緑色の髪、きらきらと光に反射する瞳。
見知らぬ女の存在に、最初は姉さんの知り合いか何かか、と冷静に考えていたテリーも流石にそいつが自分の隣に座って、おはよう青い人間、と(少し、舌っ足らずなその口調で)言った時には流石に酷く動揺した。待て待て待て待て、これは夢だ!夢に違いない。「おはよう、ドランゴ」「…おはよう」控えめな声で眠たそうに、目を擦る緑色の女にどうして姉さんも疑問を抱かずドランゴ、って返したんだ!?
目を見張る自分にどうしたのテリー、と不思議そうな目線をやってくる姉さん。隣から、同じように不思議そうな目線が送られてくるのを感じる。まさか、この状況に異常を感じているのは自分だけなのか…?頭が普段以上に回る。昨日の夜まで、確かにドランゴはドランゴだった。玄関に立てかけてあるオノも、間違いなく普段と変わりない姿でそこにある。
変わってしまったのはドランゴの姿だけらしい。いやいやいや、何があった!?魔物が人間に姿を変えるなんて、そんなことあるのか!?「テリー、どうしたの?顔色が悪いけど…」スープの皿を片手に持って、心配そうに俺を覗き込んできた姉さんは普段と変わりない。俺の姿だって、一晩で変わってしまったわけではない。巨大な体を捨てて、人間そっくりの姿になってしまったドランゴは一体どういうことなのか。
「青いニンゲン、たべないのか」
「…いや」
「わたし、心配」
「……………」
目の色は、いつも覗き込んでくるものと変わらない。それで見た目が魔物から、人間になっただけで内心の動揺は恐ろしいものがあった。可愛らしく小首を傾げて、しんぱい、と呟くその体は細く折れそうで、見た目だけなら姉さんともいい勝負になれそうなぐらいに美しい。いや、姉さんの方が綺麗だろうが…人間であれば、ドランゴはこういう見た目なのか。そうか。……いやいやいや、夢なら早く覚めてくれ!悪い冗談だ!
これが本当にドランゴなのであれば、と頭の中を過ぎった嫌な予感に俺は思わず立ち上がった―――はずだった。首元に、絡みつく腕の感触を覚えるまでは、立ち上がるつもりだった。細い腕と、背中に触れる柔らかいものの存在を認知した瞬間にこれはまずい、と脳が警報を鳴らして俺の動きをぴたりと止めてしまったのだ。確かにそれは、いつも通りの光景だった。普段なら慣れきってしまっているから、抱きつかれたまま朝食を食べる。…魔物だったら、慣れているから問題は無いのだ。人間ともなると話が違う!
「おい、離れろ」
「ギルルン…なぜ?」
「姉さんの朝ごはんに集中出来ない」
「いつもは、何もいわない」
「…今日は別だ」
「………」
名残惜しそうに離れていく腕に、少しきつく言いすぎたかと少しばかり後悔する。いやでも本当、流石にまずい。何がまずいかって、こんなところを遊びに来た"あいつら"に見られたら明らかに誤解を生むだろうってところだ!――レックは前々からドランゴを応援しているだのと言っていたし、ハッサンは俺をからかうためのネタにするだろうし…良心的なのはチャモロぐらいだから困る。アモスのおっさんは…ああ、なんというか…許容してしまいそうだ。例えドランゴが今のこの姿でなく、前の姿でも。
「って、おい!」
「……だめ?」
「当たり前、だ!」
「………」
「…おい、離れてくれ」
今度は腰に回した腕を、ドランゴ(?)は離すつもりがないらしい。…もう色々、諦めてやろうか。そうだな、まあ…バトルレックスは元々嫌いじゃない。魔物全般にもそれは言えるかもしれないが、こいつに命を拾われたことが何度もあるのは確かなことだ。俺だけでなく姉さんも守っているし、俺が留守にする時はしっかりと家を守っているし…なんだかんだ、頼りにはしている。そういえばあの世界から帰ってきて十年と少し、こんなに懐いたのはドランゴだけだったか。……俺は別に、こいつがどんな姿であろうが頼りにしてるんだがな。…こんな細腕じゃ俺が守る側になるのか。まあでも最近俺より強いんじゃないか、なんて思わせてくれたしここは一つ俺の圧倒的な力を、
「…テリー、どうしたの?テリー」
「………姉さん?」
「あ、起きた。珍しいわね、どれだけ眠かったの」
いつもより早く起きたと思ったら、そのまま寝ちゃうんですものとミレーユが笑う。背中に慣れきってしまったたくましい感触を感じながら、それでもまさか、と思って隣をそっと覗き込んだ。「ドランゴも眠そうだったのよ。それであなたがクッションにもたれているのを見て、吸い込まれるみたいに隣に座ったの。そのまますぐ寝ちゃったわ」あなたたち、仲良くなったわねとからから笑う姉の声は控えめで、その声に隣のバトルレックスが目を覚ますことはしばらくないだろう。その変わらない姿に、俺はそっと胸を撫で下ろした。……人間の姿で普段のスキンシップは、年頃の娘としてどうかってレベルだし。夢で良かった。本当に良かった!ああでも、夢ならもう少し優しく…
「どうしたの、テリー。難しい顔して」
「なんでもない!」
ゆめでみたきみ
(2015/04/06)
企画よりゆず人参様に捧げさせて頂きます。ご参加ありがとうございました!
変換が無くなってしまいましたが、ドランゴはかわいいです!
ドラゴン好き一途好き何より強くてかっこよくて6キャラでは最強の一角、リメイクで弱体化するかと思いきや更に強化されたドランゴ…ドランゴかわいい…!テリー不憫!
でもテリーはなんだかんだ、ドランゴを可愛がっていると思います。ドランゴもそれを分かっていそうです。主従だと思っています。可愛すぎか。
ドランゴが人間になったら絶対に美人だと思って一人、想像しながらきゃっきゃうふふと書かせて頂きました!緑髪…ひいい美人のかおりしかしない…
ルピナスも褒めて頂けて本当に嬉しいです…!改めまして、リクエストありがとうございました!