絡み合う双蛇の呪縛


(・秋で暗めの救いがないやつ)
夢主は秋が好きすぎて愛憎に成っています。


愛と憎しみは紙一重、コインの裏と表の様だと人々は形容するが私は混ざるのではないかと推測している。その証拠がほら、この私だ。私は秋が好きだ。だけど、秋は別に私の事など好きではない、というか、そういう目で見ることは一生ないと思われる。何故ならば彼女は今は円堂と一之瀬の間に揺れている乙女なのだから、友人である(しかも同性の)私など眼中にあるわけないのだ。私は別に秋に私を見てくれと言っているわけではないのだ。(勿論見てくれるというのならば天に召されるくらいに幸せな気分に包まれて、幸福な日々が続くだろう)



私は秋が好きで憎い。最初は綺麗な感情だった。綺麗なガラス玉のような光に透かせばキラキラと光るような女の子が抱く、淡い恋心の色をしたそれにそっくりだった。太陽は燦々とそれを祝福していた。だけど、いつの日かそれは濁りはじめ汚い泥や墨を塗りたくったように太陽に透かしても向こう側が見えなくなるくらいにまで成ってしまったのだ。ああ、恐ろしいことだ、私は秋に恋心以外の物も抱いてしまったのだ。気が付けば私は秋を憎んでいた。



私はこの狭い金魚鉢にも似た世界の中からフィルター越しに秋を見ている。秋だけを見ている。だからこそ、秋の綺麗な部分も汚い部分も見えてくる。秋の好きな部分、秋の嫌いな部分。それらを詰め込んだのが今の私だ、どす黒く汚れていて、太陽なんかもう、見えない。まずは、秋の好きな円堂が嫌いに成った。秋の大好きな円堂など、消えてしまえと何度も呪詛を呟くようになり、夜毎に呪うように思うようになった。秋の心から消えてしまえと、何事も無かったかのようにと。



次に一之瀬が嫌いに成った。秋をちょっと知っているからと言っていい気に成るなよ、私は秋の事を一日中見ているから、お前よりも秋をずっとずっと知っているつもりだと嫉妬交じりに、一之瀬を睨みつけた。あんな男の何処に魅力があるというのか。最後に秋が嫌いに成った。優柔不断で、男(あと、私)を惑わす悪女。誰にしようかなんて、ずるいよ。そんなつもりは無かった?ならば、早く決めればいいじゃないの。円堂に一之瀬に私に、より取り見取りでいいじゃあないの。



私はいつからこんなに汚れたのだろう。最早、夜の暗がりの中ですらも生きられない。ならばと人工の光、街頭を灯しても虚しいだけだ。私は秋が嫌いだ、憎い。好きという気持ちを超越してしまったのだ。好きが憎いに成るなんて簡単なことだ、きっかけだって些細なことだ。段々、秋に近づく物が憎くなって最終的に秋が嫌に成ったというだけだ。単純明快だろう、私ですら把握している。秋が、好きで大嫌い。



今はどちらの気持ちが勝っているのかわからない、だけれども、私は今も秋を見ている(監視している?)。早く秋の事を忘れられればいいなぁ、秋の事など気にせずに、またお日さまの下で綺麗なガラス玉を透かしたいな、なんて暗がりで思っているのだ。「名前ちゃん、」また悩ましげな秋の声が聞こえる。優柔不断だなぁ、と憎しみと怒りを込めて(大好きと大嫌いの気持ちも一緒にね)「なぁに、秋、また悩んでいるの?悩みならばいつでも、何度でも聞いてあげるよ。決めるのは秋だけどね」なんていかにも味方です、なんて善人面しながら、聞いてあげるのだ。一番の悪者はこの私なのにね、味方だと信じて疑わない秋が大嫌いで大好きなのです。



憎しみと愛が混ざり合って、汚い色彩を生み出した時。憎悪が愛に勝らない時、私は彼女を愛おしげに見つめるのだ。もういっそ、嫌いだけの感情に成ってしまえればいいのになぁ、なんてずるい逃げ道は大きな岩で潰して。退路を失くして。(お願いだから、私を好きに成ってよ秋)


title Mr.RUSSO

あとがき
考えたのですが、愛憎に成りました。意外と愛と憎悪は一緒になるのかなとか、超越すると嫌いにすらなると思ったのです。好きの反対は嫌いではなく無関心だと思うのでこの結果にしました。秋ちゃんは嫌いじゃないです。女の子は皆好きなので…。ただ、愛憎が書きたかっただけです…、此度は参加有難うございました!



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永樹様からの頂き物です!サイト4周年、本当におめでとうございます。図々しくも遠慮せずに大好きな秋ちゃんをお願いしたのですが、もう本当に素敵で…愛憎って素晴らしいですね…!非常に満たされた気持ちと幸せな気持ちでいっぱいです!百合は好物なんですがなかなか自分で書く事ができなくて四苦八苦するので、ほんと、美味しいやら可愛いやら辛いやらで…ありがとうございます!大事に大事にさせて頂きます!これからも永樹様の大ファンです…!

(2014/02/19)