お約束のパターン(赤緑/シノ様へ)


「寒い!寒い!冷たい!炬燵!」


ばたばたと騒がしい音が玄関から聞こえてきたのでそちらに目を向けると、大きなビニール袋を両手に下げた名前が冷たい風を伴って帰ってきたようだった。吹き込んでくる冷たい風に思わず眉を潜める俺に対し、目の前の幼馴染は素知らぬ顔である。


「おかえり、名前」
「ほんっともう、レッドが行けば良かったと思うの!」


寒さに耐性あるんだから!と手荷物を放り出した名前がビニール袋をどさりとテーブルの上に置いた。ぽろりと袋の口から落ちたインスタントの粉スープの箱を咄嗟にキャッチ。コートを脱いではんてんの袖に腕を通した名前は寒い寒い!と連呼しながら炬燵に潜り込んできた。驚く程冷たい足に自分の足が触れ、反射的に足を動かすと酷く嫌そうな顔をする名前。


「うわ、グリーンひどい!」
「冷てえんだよ!」
「外に行ってたんだからしょうがないでしょ!レッド、袋の中の肉まん取って」
「グリーンには?」
「あげない」
「鬼か!」


こっちだって寒いのだ。そもそも炎タイプの手持ちが多い名前なのだから、寒さには耐性があるのだろうと思って買い物に行かせたんだぞ俺は。…まあ、嘘だけど。本当はじゃんけんで負けたから名前が買い物に行っただけなんだけれども。実際こんなに寒い寒いと連呼されたら女一人で買い物に行かせたという罪悪感が残ってしまう。そこまで言うほど寒くないけどなあ、なんてぬかす目の前の赤色に押し付ければ良かったなんて今更だろうか。


「うう…グリーン、早くあっためてよ…!」
「「あっためる?名前を?」」
「……何でハモったの?部屋だけど」


知っていたわけだが反応してしまった自分が恥ずかしい。レッドを睨むとレッドもこちらを睨んでいて、何よ気持ち悪い、と名前が呟いたのが聞こえた。「や、名前が…俺が山にいるあいだにグリーンにそんな事言うような…」ふしだらな女の子になるわけないよね、と言ったレッドには名前が投げつけたお菓子の箱が命中した。馬鹿なヤツである。黙ってりゃなんにも被害はないというのに。

ストーブを付けるために炬燵から抜け出すと、酷く冷たい冷気が全身を襲った。思わず寒い!と声に出していた。まあ…年越しのための食料を買い込んできてくれた名前のためにストーブを付けてやるのはやぶさかでない。スイッチを入れて適度な距離に持ってきてやるとありがとう、と名前が言うもんだから寒さも少しは和らいだ。感謝されるのは嫌いではない。ついでにヤカンも持ってきて、水を入れてストーブの上に置いておく。


「名前、何買ってきたの?」
「肉まんとスープとおでんと…適当に食べ物とお菓子」
「忘れたな」
「ポケモンフーズもちゃんと高級なの買っといた!」
「で、釣りは?」
「お釣りなんてないけど」
「…まあ、期待してなかったからいいよ」


ごそごそと袋の中身を漁り始めるレッドと、それを覗き込むピカチュウ。名前は小さく唸りながら、出来る限り身を炬燵に潜らせようと体をよじっていた。「あ、グリーン!テレビ付けてよ。年末のコンテストにユウキとハルカとヒカリが出るから」「はいはい」リモコンを操作して電源を入れると、丁度画面では始まったばかりのコンテストの様子が映し出されていた。これこれ!とはしゃぐ名前の手には既にポテトチップスが。「俺にもくれ」「えええ、うすしお味は私が…」ごねる様子は無視して袋に手を突っ込んで、そのまま掴み取るとあああ!と名前が声を上げた。ポテトチップスぐらいで騒がしいやつである。まあ慣れているのでどうということはない。


「グリーン、名前いじめるの良くないと思う」
「レッドもっと言ってやって!」
「なんでいじめた事になってんだ…ってお前もお前で独り占めすんなよ」
「これは俺とピカチュウの分だし」
「ピカチュウに人間用の菓子食わせようとすんな」


レッドの手からクッキーの袋を取り上げるとあああ…!と残念そうな声を出すレッドのレベルは絶対に名前と同じだと思う。そこ、ピカチュウも残念そうな顔すんな。って、なんで俺がこんなにこいつらの世話焼いてんの?この調子だと来年も同じような感じになりそうですげえ嫌だ…


お約束のパターン



(2014/02/25)

企画よりシノ様に捧げさせて頂きます。

年越しとのことで、仕上げた時期が既に年を越してしまっているんですが…今年はとても寒かったので実感を込めつつ書きました。というか、年末より二月一月の方が寒かった気がします。
最初は寒さを紛らわすためにお酒飲もうぜ!で酔っ払って酷いことになる感じで書いていたんですが、赤緑さん何歳なんだろう…と思って未成年でもジムリーダーになれるなあと思い、ぎりぎり成人手前のイメージでお酒を控えさせました。でもレッドさんとかお酒に弱そうなイメージがあります。甘酒で酔わせれば良かった…と今更ながら。
緑さんの世話焼きなイメージを全面に押し出してほのぼの…というか日常風味にしてみました。お気に召さなかったら申し訳ございません;;

仕上げるのが遅くなってしまって、大変申し訳ありませんでした;;よろしければ、是非貰ってやってくださいませ。

(本人様のみお持ち帰りが可能です)