プリズムが煌めいた(ひみつのおちゃかい/ゆすら様へ)
(お借りしているので夢主名は固定)


偶然立ち寄った街で、偶然暇つぶしのついでに見つけた店に入り、偶然手に取ってしまっただけ。


「……偶然、そう偶然だ。偶然なんだから問題ない」


気取るのも恥ずかしくなってラッピングこそ断ったが、小さな紙袋に貼られたリボン付きのシールは店主が女だったために、シンプルながらも可愛らしいものになってしまっていた。腰の袋にそれを収め、宿屋に戻るために歩き出す。


「あいつ、喜ぶかな」


性格的に素直に喜ぶとは思えないけれども、きっと褒めたら照れるんだろう。それを想像していたら、いつの間にか頬が緩んでいたらいい。足取りもなんとなく軽くなってくる。あ、そういえばどうやってこれを渡そう?手渡し…は流石に誰に見られるとも分からないから気恥ずかしい。そうだな、……どうするかな。


**


「なあに、これ」


街での情報収集を終えて宿屋に戻ってきたあたしを迎えたのは、机の上の小さな紙袋だった。思わず疑問の声も漏れるというものだ。おかしいな、今日はクリスマスでもないしあたしの誕生日でもない。


「明らかにプレゼントよね…あたし宛てってことでいいのかな」


添えられたカードには"アスナへ"の文字。この部屋は明日の朝まであたしがキープしているわけだし…あたし宛て確定?何か取られたわけじゃなく、むしろ貰えるのなら頂いてしまいたい。宝箱ってわけじゃないし、ミミックの類ではないだろう。「寧ろこんな小さい紙袋に魔物詰めて送ってきたやつがいたら炎の海に沈めてやるわ」可愛らしい紙袋に詰めるなんて、悪意に満ちているにも程がある。


「アスナ、何物騒なこと言ってるの」
「あ、エイト。私の机にこんなものがあったのよ」


部屋の扉を開けたまま、あたしはぶつぶつ言っていたらしい。恥ずか…しくないことはないからそれを誤魔化すように机の上の紙袋をつまんで持ち上げてエイトに見せた。「へえ、何が入ってるの?」「まだ開けてないからわかんない」答えながら袋の口を閉じている紐に手をかけた。いいや、この際開けちゃえ。興味深そうなエイトの視線を感じながら、紐を解いて袋をひっくり返す。



「……え、っ」
「お、」


ころり、と。

手のひらに落ちてきたのはシンプルながらも綺麗な耳飾りだった。「へえ、綺麗だね」それなりに性能も良さそうな、きらきらと輝くその装飾品のモチーフは十字架。「……呪われてはいなさそうね」まがまがしさは当然感じない、お洒落な雑貨といったところ。

これ、本当誰からなんだろう。「これ、もしかしてエイトだったりするの?」「え、違うけど」「……ふーん」あたしの好みにかなりキているこれを、私にくれたのは本当に誰なんだか。「嘘でも僕がプレゼントした、って言っておけば良かったかな?」あらエイトさん笑顔が黒い。


「まあでも、アスナのことを少なからず知っている人間からのプレゼントだと思うよ」
「……そうかしら」
「一応みんなに聞いてみたら?」


もうすぐ夕飯だし食堂に集まってるんじゃないかな、というエイトの言葉に頷いておく。まあ…嬉しくないわけじゃない。これが仲間内の誰かからのプレゼントだというのなら、誰に貰ったって嬉しいのだ。(それを表情に出せるほど素直にはなれないけど)


**


「僕じゃないよ」
「俺は知らねえ」


リュカとアレルには首を振られた。夕飯はバイキング形式の食事らしい。好きな料理をちょこちょこと取っている時にすれ違ったロランとレック、それにアルスにも違うと言われた。「アスナ様、呪いのアイテムでも送りつけられたのですか?」部屋にあたし宛ての紙袋が置かれてたんだけど、とだけ言うとナインにはこんな反応をされるので思わず苦笑い。「そういうわけじゃないんだけど」心配そうなナインに知らないならいいの、とだけ返してテーブルに戻る。トレイの上に普段食べる量と同じぐらいを乗せて、席に着くとソロも同じタイミングで戻ってきて向かいに座った。


「あ、」
「うん?」
「……いや、なんでもない」


パスタをフォークに巻きつけて、食べるのに邪魔だからと髪を耳にかけたからだろうか。耳元に付けた耳飾りがしゃらん、と音を立てて揺れた。それを見たソロが目を少しだけ見開いた気がする。なんでもない、ようには見えないかな。


「アスナ、その耳飾り…」
「どこかの誰かさんからのプレゼントみたい」
「そうか」


ソロがスープのカップを持ち上げて口に運ぶ。…ソロじゃなかったのかな?てっきり、そうなのかなって思っちゃったんだけど。なんだか期待外れだなあ…じゃあこれ、もしかしてアレフから?いやいやアレフがこんな可愛いものを、




「どっかの誰かさんの思ったとおり、似合ってる」
「…へっ?」
「言っとくけど、偶然見つけて似合うだろって思っただけだ」


――何その自爆。何でもない風にパンちぎってるくせに、顔赤いじゃん。ああもう!


「………ありがと、大事にする」


絞り出した声は普段より随分小さいものだったけど、ソロはしっかり拾い上げたらしい。目を見開いてこっちを見て来ないでよ!確かに普段は素直じゃないかもしれないけど、これは本当に嬉しかったし大事にしたいと思ったし…ああああ笑うな!



プリズムが煌めいた



(2014/01/27)

企画よりゆすら様に捧げさせて頂きます。
素敵なお声かけ、本当にありがとうございました…!

大好きな「ひみつのおちゃかい」をまさかこんな形で書かせて頂けるなんて本当に光栄です!更新をいつだって心待ちにしている作品です。今回はおちゃかいヒーローズのなかでもゆすら様の書かれる4主が本当に大好きなのでソロ夢っぽくしてみました。
アスナちゃんのツンデレもといツンドラっぷりが上手く表現出来ている気がしない上に偽物臭が恐ろしいですが、こんなものでも二次創作…三次創作?になっているのなら嬉しいです。当然ソロの次に贔屓したのはエイトさんです。動かしやすい!

いつも本当にお世話になっております。ひみつのおちゃかい本編はこちら、ゆすら様経営のオクタヴィアの涙様へどうぞ。

ご参加本当にありがとうございました!今度はぜひ最弱系勇者をゆすら様風に…ゴニョゴニョ


(本人様のみお持ち帰りが可能です)