そうだよ笑っちゃおうよ(ラブライブ一年/類那様へ)
「朝、焼きたての鮭と一緒に口に運ぶ白いごはん!」
「ちょっとお水を多くすると柔くてふんわり甘味が立ち上ってっ!」
「夜、優しい味のハンバーグと白いごはん!」
「お肉とごはんのハーモニーが織り成す旋律!」
おおー、かよちんが知らない子と喋ってるー!なんて能天気な声を上げる隣の凛をちらちらと見やりながら、は、と小さく息を吐いた。
「……な、なによアレ」
「わかんない!」
白米について語る時特有の、花陽のきらきら輝いた目と弾む声。それに負けないぐらい輝いた目と弾む声を発する女の子。(多分恐らく同級生で、教室で見たことがあるからクラスメイト。)教室の扉を開いた瞬間に耳に飛び込んできたのはそれで、思わず引いてしまった私は悪くないと思う。「でもかよちん楽しそう!」凛も!と駆け出して行きそうになった凛の首根っこを思わず掴んでいた。「真姫ちゃん何するのー!」「い、いや、ちょっと待って!待ってよ!」凛はあんなところに一人で突っ込むつもりなの?
「凛、花陽と喋ってる子、知ってる?」
「知らないにゃー」
「じゃあ、ちょっと様子を見ましょう」
「えええ!?どうして!?」
真姫ちゃんはーなーしーてー!と暴れる凛の口をとっさに抑えた。何するにゃ!と抗議の声を上げてきた凛を一旦は解放する。飛び込むつもりをとりあえずは抑えてくれたのだろうけど、恨めしそうに見上げてくるから思わず溜め息を吐いた。教室の中を再び覗き込む。
「凛、花陽は知らない子に自分から積極的に声を掛けられるタイプじゃないわ。そんな花陽が多分、声を掛けられたか声をかけたかで知らない子と喋ってるのよ?花陽とご飯について語り合える猛者なんてこの学校に早々いないわ。…ちょっと見守ってあげましょう」
「でも真姫ちゃん…」
「寂しい?」
「……かよちんが取られちゃう、かも」
好きなものについて語り合える花陽は確かに嬉しそう。けれど、そんな些細な事を気にする凛は絶対にバカだ。「…何言ってるの」凛が花陽の事を大好きなのは誰もが知っているけれど、花陽だって凛の事が大好きなのだって誰もが知っているのだ。「あああもう…花陽の成長を素直に喜んであげましょ?それに花陽の好きなものはご飯だけじゃないもの」アイドル活動だって花陽はとても嬉しそうに、楽しそうに(それでいて真摯に)取り組んでいる。今の笑顔だって輝いているけど、その時の笑顔だってとびっきりのもの。「それは凛が一番知ってるでしょう」「……うー」納得が行かないとでも言いたげな、少し寂しげな凛が唸る。
―――ああ、もう、しょうがないんだから。
「花陽ー、お待たせ」
「ちょっ真姫ちゃん…!?」
今度は慌てふためいて、私の制服の裾を引っ張る凛。何よ、さっきは自分から飛び込もうとしてたのに…まったく、本当にしょうがない。「真姫ちゃん!」「あ、西木野さんだ!」そんなこと、何も知らない花陽と女の子は私を見て嬉しそうに目を輝かせた。「ごめんね、苗字さんと!ごはんについて!熱く語り合っちゃって…!」拳を握り目を輝かせて、ねっ!と苗字…さんとやらを振り仰ぐ花陽。うん!ごはん!最高だよね!とこちらも目を輝かせる苗字さん。
「で、凛ちゃんはどうして真姫ちゃんに隠れてるの?」
「……っか、かよちん……」
――最初の勢いはどこへ行ったのだろう。
花陽の純粋無垢な瞳に言葉を詰まらせた凛の背中を押した。「ひゃ!?」「花陽、凛が構ってもらえなくて寂しがってる」「まままま真姫ちゃん!?」「へ?」私の言葉に慌てながらもきょとんとした顔の花陽に突っ込んでいった凛は、そのまま花陽に抱きとめられていた。「よ、よく分かんないけど、……おにぎり、あるよ?」「かよちん…!」「え、え、ええええっ!?」感極まったかのように凛が花陽を抱きしめた。まきちゃん〜!と苦しそうにする花陽に思わず苦笑する。
で。
「…あなたは?私のこと、なんで」
「苗字名前。さっき廊下でね、小泉さんが星空さんにごはんについて熱く語ってたから思わず話しかけちゃったの。白いご飯への愛を語り合えて幸せだった…!」
西木野さんはクラスメイトなんだから知ってて当然だよー!とからから笑う苗字さんに、思わず頬が熱くなった。人と関わるのは余り得意じゃないから気恥ずかしい。「で、西木野さんは!?」白いごはん、好き?と問いかけられて思わず花陽を振り仰いだ。
「……そうね、誰かさんのおかげで前よりたくさん食べてる…かも」
「わあ!西木野さんもごはん好きなんだ!」
「真姫ちゃんのたくさんはたくさんじゃないにゃ」
「凛だって食べる量は少ないでしょう」
「二人共少ないよう!わ、私なんか、私なんかっ」
「あああ小泉さん!しょうがないよそんなの!ごはんの魔法には抗えないんだよ!」
何よごはんの魔法って…と言う前にそうだよね、しょうがないよねと涙目の花陽が苗字さんに同意していたから何も言えなくなってしまった。そんな調子でしばらく談笑が続くと共に、凛の苗字さんへの警戒は解かれたらしい。その日は一緒に家路を辿り、その後しばしば苗字さんは花陽とごはんについて語ったり新しい試作の具を入れたおにぎりを試食するために凛と花陽のクラスに通うようになった。
――そして。
「真姫ちゃん、花陽ちゃんと凛ちゃんのところに行こう!新しいお米買ったんだ、美味しいよ!」
「は、はいはい…分かったから引っ張らないで。服が伸びるじゃない」
手のかかる友人が増えた私だけれど、なんというか…悪くないと思っているのです。
そうだよ笑っちゃおうよ
(2013/12/26)
...DEGOD69様
企画類那様に捧げさせて頂きます。これかよちんじゃない真姫ちゃんや……いやある意味凛ちゃんや…
と心の片隅で思いつつ、個人としては全力投球のかよちんとのお米語りです。
ただの好みなんですが、お米はお水多めで炊く方が好きです。
真っ白なご飯も好きですが五穀米とか玄米も好きです!!
まさかラブライブのリクエストを頂けるなんて…!ひたすらに感動でした。気持ち友情にしようと路線を決めるとかよちん大好きな凛ちゃんがちょっと唸るシーンが想像出来てしまったので、それをたしなめる存在…みたいなイメージで真姫ちゃん視点にしてみました。一年生可愛い(悶え)
お仕事も落ち着かれたようで…!頂いたコメントも嬉しい言葉が並んでいてもう…!4と聞いて飛び上がりました。私もがっつりとした初プレイは4が初めてだったので同じです!お祝いの言葉もありがとうございました!これからも精進していきたいと思います。
長々と失礼しました;いつも本当にありがとうございます。
お気に召しませんでしたら書き直しますので、是非申し付けてくださいませ。
(本人様のみお持ち帰りが可能です)