冬の帰り道



「寒いネ」


前を歩く一静はマフラーに首を埋めながら言った。普段バレーをしている時は大人っぽくて遠く感じる彼だけど、こういった一面は可愛くて愛おしい。


「寒いねえ」


そう言いながら、早歩きで彼の横に並び彼の腕に絡みついた。


「ん、あったかい」

「ねえ、一静」

「んー?」

「好き」


私が突拍子もなくそんなことを言うと、彼は普段と変わらない表情でこちらを向いてそれからニヤッと笑い、俺は大好きなんですケド?なんて笑うから、胸がぎゅって苦しくなる。


「一静はほんとずるいなー」

「名前の方がずるいでしょ」


どこが、と言おうとするとぐいっと一静の胸中に引き寄せられる。


「聞こえる?」


耳元に聞こえてくるのは少し早い彼の鼓動。
名前のせい、って笑う彼はやっぱりずるくて、好きが溢れてしょうがない。


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「一静結婚しよう」

「卒業したらネ」




冬の帰り道