1人しりとりでもしよう。
乱太郎、きり丸、しんべヱと別れたあたしは すぐさま用意された自室へと急いで戻った。
迷子にならずに元来た場所にたどり着けたことが、あたしの中じゃもの凄くすごいなと感じたあたしだったが……、
どうやらあたしは部屋を間違ってしまったのだろうか。
障子を開けると怖い顔した土井先生が出席簿を脇に挟み腕を組んで立っていた。
『、這狽ヲ……土井先生、イラシテタンデスネιい、イツカラココヘ?』
「あぁ名前が戻ってくる10分前から待っていた。名前、勝手に出て行ったら心配するだろう」
『…ごめんなさい。神様がもし迷ったら迷わずに自分がしたいようにしろって言ったものですから…』
「……………名前、お前ってやつは…」
そう言うと、土井先生は手を頭に置きやれやれと言うように呆れてため息をはいた。
『ごめんなさい、冗談です。暇だったんです切実に…こんな殺風景な部屋でなにもせずに、じっとしろって言っても暇すぎて逆に困るものですから』
「今度から気をつけるんだぞ」
頭に手をポンッと置いて、安心したような顔した土井先生。
『! 、できる限り気をつけます』
「それより、名前。さっきはどこへ行ってたんだ?」
『あー、食堂です食堂。行く途中でメガネをかけた子と紺のスカーフを巻いた子、ぽっちゃりとした子に会いました。お陰様で無事に食堂へ着くことができたのでさっきの子達に感謝します』
もうなんとお礼を言っていいのやら…
またお話したいなぁ。
「名前、その3人は私の組の生徒だ」
『えっ そうなんですか?』
「あぁ。」
『乱太郎、きり丸、しんべヱはとてもよい子ですね!迷子になったあたしを食堂まで連れて行ってくれたんです』
「アイツらがそんな事を…」
食堂まで連れて行ってくれたと言ったら土井先生は驚いていた。
『あの土井先生。あたしに何か用事があったんじゃないですか?』
「あ、あぁ。風呂の事なんだが…名前の部屋からくのいちの風呂まではだいぶ遠いから学園長先生が、今日から忍たまのほうの風呂を使ってくれとの事だ。」
……why!?
『…は、ははははは。なに言ってんですか土井先生。男風呂に入れなんて、あたしこれでも一応女の子ですよー?冗談やめてくださいよほんと。あたし冗談通じないタイプなので』
「名前、残念だがこれは冗談じゃなく事実だ。学園長の突然の思いつきだ」
………what!?
『土井先生。学園長の庵ってどっちでしたかね?今からシバきに行きたいんですが』
「まぁ落ち着け。まだ続きがある。
学園長は、絶対に男子生徒が来ないように時間をずらすようにすると、おっしゃっていた」
『わぁっそれなら大丈夫ですねー♪
……って違ぁぁぁあぁあぁう!!大丈夫じゃないよ大問題だよぉぉおぉ!!!』
「名前、学園長の突然の思いつきなんだ。我慢してくれ」
頼む!!と言って頭を下げた土井先生。
………まあ、そこまで言うなら我慢するしかないか。
あたし、そこまで鬼じゃないし。
寧ろ心優しい女の子だし←
『わかりました、我慢して入ります』
「すまないな名前」
『いえ。土井先生はちっとも悪くありません!悪いのは、突然の思いつきをした学園長なので』
「あまり学園長をせめちゃダメだからな」
『大丈夫ですって!(多分)、あっ土井先生お腹がすきました』
「よし、じゃあ私は食堂に行って食べ物を貰いに行ってくるとしよう。名前、大人しく待ってるんだぞ」
『はーい』
***
土井先生が、あたしの夜食をとりに部屋から出てった。
それにしても暇だ。暇すぎる。
あっ、そういえば友達が1人しりとりをしてたな。
紙に、りんご→ゴリラ→ラッパ→パンツ
とか書いて1人でやってたなぁ。
なんで1人しりとりしてたの?
と聞けば友達は、
えー、だって暇だったんだもん!
と言っていたのを覚えいる。
今なら友達が1人しりとりをやった気持ちがわかった気がする。
よし、暇だし書こう。
もうどうにでもなりやがれコノヤロー。
あたしはスクールバッグの中から筆箱を取り出し、campusノートを開いて颯爽と書き始めた。
時間はわからんが5分くらい(自分の中では)すると土井先生がおにぎりと沢庵とお茶をお盆に乗せて戻ってきた。
「名前、遅くなってすまない。」
『いえ大丈夫です!1人で黙々としりとりして時間も忘れてたし、全然気にしてませんよ』
「そうか。それより、食堂のおばちゃんに頼んでおにぎりを握ってもらったぞ」
『わぁい♪ありがとうございます!』
土井先生はおにぎり等が入ったお盆をあたしに渡し、前に座った。
『土井先生も1つ食べますか?』
「いや私は大丈夫だ。名前、私にくれなくてもいいんだぞ?」
『でも1人で食べるより、誰かと一緒に食べたほうが、もっと美味しいって言うじゃないですかっ!!』
そう言うと土井先生は「しょうがないな」と言って、食堂のおばちゃんが作ったおにぎりを1つ取った。
「ありがとな、名前」
土井先生は、あたしの頭の上に手を軽く乗せ言った。
頭に手を軽く乗せた時、五年前に亡くなったお父さんの姿が土井先生とかぶってしまった。
***
「名前。1つ言い忘れてたんだが…明日の朝礼で学園長が全校生徒の前で名前を紹介すると言っていた」
『這狽チ………冗談やめてください。全校生徒の前でだなんて。あたしを殺すつもりですね土井先生!!』
土井先生に人差し指をビシッと向けて言った。
言った瞬間、頭の意識がどこかへ飛んでいきそうな感覚がよぎった。
あぁ拳骨されたみたいだ、あたし。
『――土井先生酷い!!!』
「自業自得だ」
はぁ… と土井先生はため息をはいた。
……土井先生って、ため息吐くの好きですね。なんて思っても言わないでおこう。そう、言った瞬間あたしの明日はこないのと同じだ。
「私が朝呼びに来るから明日はちゃんと起きておくんだぞ。いいな?」
『え、ちょっと待ってください』
言い終わる前に自室から出て行っていたのだ。
『忍者って、ほんとにいるんだね』
あたしは勝手に呟いていた。
でも、忍者っていつからいなくなったんだろう。
――よし、今日のところはもう休もう。
明日から事務員として頑張ろう!!
心の中でそう言い残し、あたしはいつの間にか眠っていた。
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