「なあ、みんな。聞いてくれ」
三郎の呼びかけに、あたし達は三郎に目を向けた。
『ちょっ急にどうしたん?そんな真剣な顔してから』
「そうだよ」
「――利吉さんって、どう思う?」
「「「「『…………………。』」」」」
はい、来たよ利吉さん!!
見て、三郎以外が見事に全員黙っちゃったよ。
そりゃあ黙る気持ちもわかる。
利吉さんとは、山田先生の息子さんで、偶に学園にやってくる先生である。
イケメンすぎて、女子生徒からの人気が凄いのだ。
それとキャーキャーと、黄色い声がヤバいんです…
「そりゃあ、あれだろ? なんというか…、かなり女子生徒に人気だよな」
「…そうだな」
「僕達も、利吉さんみたいに人気者だったらなぁ」
「もうなにも言うな雷蔵。考えただけですごく悲しくなる」
三郎の質問に、あたし以外のみんながそれぞれ答えた。
「凜は、利吉さんのことどう思ってんだ?」
「おほー、いいこと言うな三郎!」
「で、どうなんだ?」
ふざけんなよハチ。
どこが いいこと、だ。
やべぇ、ハチを今すぐ花畑が見える川にぶち込んでやりたい衝動が。
『どうって、言うか…男性の理想像てきな感じやない?』
「うわ、来たよ。 男性の理想像!!!」
「なんだ、凜も利吉さんに気があるって言うのか」
「もしそうだとすると悲しいよね…」
『いや、なんで!? なんでそうなったのかあたしは知りたい!!!…確かに利吉さん、ばさらカッコイイしイケメンやけどさー』
「なんだ、凜も面食いだったのか。
まぁ今に始まったことじゃないけど」
『その言い方せんじょて。なんか、あたしが面食いみたいな言い方しちょうやん、それ』
「―――よし、決めた」
「「「「『なにを?』」」」」
「俺、利吉さんみたいにモテモテになりたい!」
「「「「『………………。』」」」」
「ちょっ、なんなんだよ!」
ハチがいきなり利吉さんみたいになりたい、だなんて言い出した。
それを痛い目で見つめる、あたし達。
『……ハチ、諦めたがいいばい。利吉さんになろうだなんて、先ずはそのボサボサで汚ェ髪をなんとかしてから言ったがいいよ、うん』
「そうだぞハチ」
「諦めなよハチ」
「俺達は地道に努力したらいいんだよ。どこかのアイドルグループみたいに」
「とりあえず豆腐を食べるんだ」
それぞれがハチの肩にポンと手を置いた。
「……もうお前らなんか知るかバーカ!!」
あたし達の言葉を聞いたハチは、どこかに走って行った。
(男性の理想像)